正常眼圧緑内障に対する早期発見のスクリーニングシステム構築と最適化された診療指針の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200725001A
報告書区分
総括
研究課題名
正常眼圧緑内障に対する早期発見のスクリーニングシステム構築と最適化された診療指針の確立に関する研究
課題番号
H17-感覚器-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
谷原 秀信(熊本大学大学院 医学薬学研究部・視機能病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 哲也(岐阜大学大学院 医学研究科)
  • 杉山 和久(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 吉冨 健志(秋田大学大学院 医学研究科)
  • 富田 剛司(東邦大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
15,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究計画の目的は、正常眼圧緑内障に対する早期発見のスクリーニングシステムを構築し、最適化された診療指針の確立することにある。
研究方法
本研究計画最終年度においては我々が構築した非接触眼圧計、無散瞳立体カメラ、HRT IIを用いたスクリーニング手法の有効性を検証した。正常眼圧緑内障のリスクアセスメントに必須の視神経乳頭解析の新しい手法となる視神経乳頭の画像解析法の改良を目指した。既存および新規の緑内障治療薬の神経保護効果や血流改善効果についての検証を進めた。
結果と考察
熊本市と秋田市の臨床調査によって、我々が構築した非接触眼圧計、無散瞳立体カメラ、HRT IIを用いたスクリーニング手法が、正常眼圧緑内障を簡便・高効率に早期発見できることを証明した。無散瞳、非接触、非医師による正常眼圧緑内障の簡便で効率的なスクリーニング手法に加えて、新しい簡便な視野検査によって、感度を落とすことなく、特異度を向上させることが可能になることを証明した。選択的ROCK阻害薬は、ヒトにおいてもシャープな眼圧下降効果を有することに加えて、血流改善効果や神経保護効果も動物実験で認めた。さらに、同薬剤は、代表的な緑内障手術である濾過手術に対しても、濾過胞維持についてポジティブに作用することが解明された。
結論
日本人疫学調査によって明らかにされた正常眼圧緑内障の問題は、日本全国に共通する重要なものである。我々の臨床調査は、無散瞳・非接触・非医師のスクリーニング手法が正常眼圧緑内障の検出にきわめて有効であることを示すとともに、眼圧だけに依存した緑内障健診・人間ドックが不十分であることを明確に証明した。今後、行政的に緑内障健診の普及と啓発活動が重要な課題となる。また既存の薬物療法や手術療法の治療効果、および新しい緑内障治療薬の開発も順調に臨床応用されており、このように単なる臨床・基礎研究の狭い枠組みに止まらず、本研究計画で得られた成果は、眼科診療全般の標準化へと還元されつつある。

公開日・更新日

公開日
2008-03-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200725001B
報告書区分
総合
研究課題名
正常眼圧緑内障に対する早期発見のスクリーニングシステム構築と最適化された診療指針の確立に関する研究
課題番号
H17-感覚器-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
谷原 秀信(熊本大学大学院 医学薬学研究部・視機能病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 山本哲也(岐阜大学大学院 医学研究科)
  • 杉山和久(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 吉冨健志(秋田大学大学院 医学研究科)
  • 富田剛司(東邦大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究計画の目的は、正常眼圧緑内障に対する早期発見のスクリーニングシステムを構築し、最適化された診療指針の確立することにある。
研究方法
人間ドックにおいて非接触型眼圧計による眼圧測定、ステレオ眼底カメラによる立体眼底撮影、視神経乳頭画像解析装置であるHRT IIを用いて、無散瞳、非接触、非医師による検診業務を石川県、熊本県、秋田県にも展開した。正常眼圧緑内障のリスクアセスメントに必須の視神経乳頭解析の新しい手法となる視神経乳頭の画像解析法の改良を目指した。既存および新規の緑内障治療薬の神経保護効果や血流改善効果についての検証を進めた。
結果と考察
第一に、国際的議論とも合致できる日本における緑内障の視神経乳頭判定ガイドラインを作成して、緑内障診療ガイドラインの改訂版(第二版)に記載した。第二に。無散瞳、非接触、非医師による検診業務を展開して、その臨床的有用性を確認することができた。第三に、画像解析法の改良としては、視神経乳頭に対するHRT画像から日本人正常眼における視神経乳頭パラメータの平均、正常値を求めて、日本人の緑内障検出精度を向上させた。第四に、プロスタグランジン製剤の長期的な眼圧下降作用及び血流改善による神経保護効果を解明した。さらに、選択的ROCK阻害薬や一部のbeta遮断薬の潜在的な神経保護効果が、眼圧下降効果に加えて示唆された。
結論
正常眼圧緑内障は、日本全国に共通して高い有病率を示しており、重要な社会的問題であると認識すべきである。我々の臨床調査は、無散瞳・非接触・非医師という簡便なスクリーニング手法でも、視神経乳頭を検査することで、十分に高い感受性をもって正常眼圧緑内障を検出できることを示す。したがって、眼圧だけに依存した従来の緑内障健診・人間ドックが不十分であり、少なくとも視神経乳頭の画像診断・形状解析が必須であることを明確に証明した。今後、行政的に緑内障健診の普及と啓発活動が重要な課題となろう。

公開日・更新日

公開日
2008-03-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200725001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
簡便かつ高効率に(正常眼圧緑内障を含む)緑内障を検出するための非散瞳、非接触、非医師による検診スタディ(小松スタディ)を、石川県小松市において完遂した。二次検診の結果、5.1%が緑内障で、その中で4.3%が正常眼圧緑内障と診断された。この結果は多治見市における疫学調査の緑内障有病率とほぼ同程度であった。正常眼圧緑内障の薬物治療につながる基礎研究としては、選択的ROCK阻害薬や一部のbeta遮断薬、プロスタグランジン関連薬などの潜在的な神経保護効果が、眼圧下降効果に加えて示唆された。
臨床的観点からの成果
画像解析法を改良し、視神経乳頭に対するHRT画像から日本人正常眼における視神経乳頭パラメータの平均、正常値を求めて、視神経乳頭パラメータと性別、年齢、乳頭サイズが有意に関連していることを示した。さらに、新規開発中の立体眼底カメラの画像解析用に作成した視神経乳頭陥凹を三次元的に評価する新手法はHRTにより測定した陥凹と高い相関が認められ、日本人の正常眼圧緑内障に対する診断水準を改善することが出来た。
ガイドライン等の開発
国際的議論とも合致できる日本における緑内障の視神経乳頭判定ガイドラインを作成して、緑内障診療ガイドラインの改訂版(第二版)に記載した。これによって、緑内障、特に眼圧範囲が正常であるために眼底検査で同定すべき正常眼圧緑内障を正確かつ客観的に標準化された診断が可能になった。
その他行政的観点からの成果
我々の研究データからは、新規に開発された眼底画像解析法や機能検査を組み合わせることで、さらに高精度なスクリーニングを一次健診として活用できることが明確に示されており、今後の健診業務の中に、客観的な眼底(視神経)検査項目を含めることが、緑内障発見にとって、きわめて大きな意味を持つことがあきらかとなった。また、正常眼圧緑内障の高い有病率は日本全国共通の現象であることが実証され、重要な社会的問題であることがわかった。
その他のインパクト
正常眼圧緑内障への知識を啓蒙するために、全国各地で市民公開講座を開催し、市民からの緑内障に関する質問や疑問に回答をおこなった。また、この市民公開講座については、地元の新聞や雑誌にもとりあげられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
66件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
40件
学会発表(国際学会等)
34件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tanihara H, Inatani M, Honjo M et al.
. Intraocular pressure-lowering effects and safety of topical administration of a selective ROCK inhibitor, SNJ-1656, in normal volunteers.
Arch Ophthalmol  (2008)
原著論文2
Inatani M, Iwao K, Inoue T et al.
Long-term relationship between intraocular pressure and visual field loss in primary open-angle glaucoma.
J Glaucoma  (2008)
原著論文3
Inatani M, Iwao K, Kawaji T et al.
Intraocular pressure elevation after injection of triamcinolone acetonide: A multicenter retrospective case-control study.
Am J Ophthalmol  (2008)
原著論文4
Hirata A, Inatani M, Inomata Y et al.
a Rho-associated protein kinase inhibitor, attenuates neuronal cell death after transient retinal ischemia.
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol  (2008)
原著論文5
Honjo M, Tanihara H, Kameda T et al.
Potential role of Rho-associated protein kinase inhibitor Y-27632 in glaucoma filtration surgery.
Invest Ophthalmol Vis Sci  (2007)
原著論文6
Kawaji T, Inomata Y, Sagara N et al.
Pitavastatin: protection against neuronal retinal damage induced by ischemia-reperfusion injury in rats.
Cur Eye Res  (2007)
原著論文7
Iwao K, Inatani M, Kawaji T et al.
Frequency and risk factors for intraocular pressure elevation after posterior sub-Tenon’s capsule triamcinolone acetonide injection.
J Glaucoma  (2007)
原著論文8
Tokushige H, Inatani M, Nemoto S et al.
Effects of topical administration of Y-39983, a selective Rho-associated protein kinase inhibitor, on ocular tissues in rabbits and monkeys.
Invest Ophthalmol Vis Sci  (2007)
原著論文9
Awai M, Koga T, Inomata Y et al.
NMDA-induced Retinal injury is mediated by an endoplasmic reticulum stress- related protein, CHOP/ GADD153.
J Neurochem  (2006)
原著論文10
Koga T, Koga T, Awai M et al.
Rho-associated protein kinase inhibitor, Y-27632, induces alterations in adhesion, contraction and motility in cultured human trabecular meshwork cell.
Exp Eye Res  (2006)
原著論文11
Yamamoto T, Iwase A, Araie M et al.
The Tajimi Study Group, Japan Glaucoma Society: The Tajimi Study Report 2. Prevalence of primary angle closure and secondary glaucoma in a Japanese population.
Ophthalmology  (2005)
原著論文12
Asano E, Mochizuki K, Sawada A et al.
Decreased nasal-temporal asymmetry of the second-order kernel response of multifocal electroretinograms in eyes with normal-tension glaucoma.
Jpn J Ophthalmol  (2007)
原著論文13
Hasegawa K, Ishida K, Sawada A et al.
Diurnal variation of intraocular pressure in suspected normal-tension glaucoma.
Jpn J Ophthalmol  (2006)
原著論文14
Suemori S, Shimazawa M, Kawase K et al.
Metallothionein, an endogenous antioxidant, protects against retinal neuron damage in mice.
Invest Ophthalmol Vis Sci  (2006)
原著論文15
Karim MZ, Sawada A, Kawakami H et al.
A new calcium channel antagonist, lomerizine, alleviates secondary retinal ganglion cell death after optic nerve injury in the rat.
Curr Eye Res  (2006)
原著論文16
Miyake T, Sawada A, Yamamoto T et al.
The incidence of disc hemorrhage in open-angle glaucoma before and after trabeculectomy.
J Glaucoma  (2006)
原著論文17
Kawaguchi I, Higashide T, Ohkubo S et al.
In vivo imaging and quantitative evaluation of the rat retinal nerve fiber layer using scanning laser ophthalmology.
Invest Ophthalmol Vis Sci  (2006)
原著論文18
Higashide T, Kawaguchi I, Ohkubo S et al.
In vivo imaging and counting of rat retinal ganglion cells using a scanning laser ophthalmoscope.
Invest Ophthalmol Vis Sci  (2006)
原著論文19
Ohkubo S, Takeda H, Higashide T et al.
A pilot study to detect glaucoma with confocal scanning laser ophthalmoscopy compared to nonmydriatic stereoscopic photography in a community health screening.
J Glaucoma  (2007)
原著論文20
Kawano J, Tomidokoro A, Mayama C et al.
Correlation between hemifield visual field damage and corresponding parapapillary atrophy in normal-tension glaucoma.
Am J Ophthalmol  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-