文献情報
文献番号
200721006A
報告書区分
総括
研究課題名
高悪性度軟部腫瘍に対する標準的治療法の確立に関する研究
課題番号
H17-がん臨床-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 幸英(九州大学大学院医学研究院整形外科)
研究分担者(所属機関)
- 荒木 信人(大阪府立成人病センター整形外科)
- 中馬 広一(国立がんセンター中央病院骨・軟部組織科)
- 比留間 徹(神奈川県立がんセンター骨軟部腫瘍外科)
- 尾崎 敏文(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科整形外科)
- 高橋 満(静岡県立静岡がんセンター整形外科)
- 守田 哲郎(新潟県立がんセンター新潟病院整形外科)
- 松田 秀一(九州大学病院整形外科)
- 吉田 行弘(日本大学医学部整形外科)
- 土屋 弘行(金沢大学大学院医学系研究科機能再建学(整形外科))
- 内田 淳正(三重大学医学部整形外科)
- 矢部 啓夫(慶応義塾大学医学部整形外科)
- 横山 良平(九州がんセンター整形外科(骨軟科))
- 戸口田 淳也(京都大学再生医科学研究所組織再生応用分野)
- 阿部 哲士(帝京大学医学部整形外科)
- 羽鳥 正仁(東北大学大学院医学系研究科整形外科)
- 吉川 秀樹(大阪大学大学院医学系研究科整形外科)
- 和田 卓郎(札幌医科大学医学部整形外科)
- 井須 和男(北海道がんセンター整形外科)
- 舘崎 愼一郎(千葉県がんセンター整形外科)
- 松本 誠一(癌研究会有明病院整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
四肢に発生する高悪性度軟部腫瘍は、円形細胞肉腫と非円形細胞肉腫に大別され、後者が大多数を占める。円形細胞肉腫に対する化学療法の有効性は証明されているが、非円形細胞肉腫に対しては世界的にも未だ標準治療が確立されていない。本研究は、四肢に発生する高悪性度軟部腫瘍の大部分を占める非円形細胞肉腫に対する標準治療を確立することを主目的とする。また、化学療法が無効の難治例に対する治療戦略の構築のため、悪性骨軟部腫瘍に有効な新しい分子標的治療の可能性についても検討した。
研究方法
現時点でもっとも有効かつ実施可能と考えられるADM+IFO併用術前術後化学療法の有効性と安全性を第2相試験により評価する。対象は、四肢原発の手術可能な高悪性度非円形細胞軟部肉腫(AJCC病期分類Stage III)である。プライマリエンドポイントは2年無増悪生存割合、症例集積期間は4年間、予定登録症例数は75例である。また、既存の抗癌剤に多剤耐性を示す肉腫細胞株を樹立し、その薬剤耐性の機序について解析した。近年他の癌種における有効性が報告されている分子標的治療薬の、多剤耐性肉腫細胞株に対する抗腫瘍効果についても検討した。
結果と考察
高悪性度軟部腫瘍のADM+IFO化学療法の第2相試験では、主要26施設による全国規模の研究組織が整い、IRB審査を経て症例登録開始した。登録症例数は平成20年3月現在で65例となり、予定登録症例数の到達も視野に入ってきた。本研究により本疾患に対する標準治療を確立することは世界的にも極めて意義深いと考えられる。骨肉腫やEwing肉腫の多剤耐性細胞株を樹立し、その耐性機序について解析を行ったところ、薬剤排泄ポンプの発現が亢進していることが判明した。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤などの新しい分子標的治療薬の中にも、親株には非常に有効であるにもかかわらず、多剤耐性株には交差耐性を示すものがあり、薬剤排泄ポンプの基質となっていることが明らかとなった。また、薬剤排泄ポンプ阻害剤の併用により、薬剤感受性を高めることが可能であった。
結論
四肢に発生する高悪性度非円形細胞軟部肉腫を対象に、現時点でもっとも有効性が期待され実施可能と考えられるADM+IFO併用による術前術後化学療法の有効性と安全性を検討する第2相試験を行なった。今後も症例の集積を進め、結果解析を行なう予定である。本研究によって、ADM+IFO療法の有効性が認められれば、高悪性度非円形細胞軟部肉腫に対する標準的治療法の確立が期待される。
公開日・更新日
公開日
2008-06-12
更新日
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