悪性脳腫瘍の標準的治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200721005A
報告書区分
総括
研究課題名
悪性脳腫瘍の標準的治療法の確立に関する研究
課題番号
H17-がん臨床-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
渋井 壮一郎(国立がんセンター中央病院第二領域外来部脳神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 嘉山 孝正(山形大学 脳神経外科)
  • 隈部 俊宏(東北大学 脳神経外科)
  • 倉津 純一(熊本大学 脳神経外科)
  • 澤村 豊(北海道大学 神経外科)
  • 高橋 潤(京都大学 脳神経外科)
  • 田中 克之  (聖マリアンナ医科大学 脳神経外科)
  • 藤堂 具紀(東京大学 脳神経外科)
  • 永根 基雄(杏林大学 脳神経外科)
  • 西川 亮(埼玉医科大学 脳神経外科)
  • 藤巻 高光(埼玉医科大学 脳神経外科)
  • 別府 高明(岩手医科大学 脳神経外科)
  • 南田 善弘(札幌医科大学 脳神経外科)
  • 村垣 善浩(東京女子医科大学 脳神経外科)
  • 矢崎 貴仁(慶応義塾大学脳神経外科)
  • 角 美奈子(国立がんセンター中央病院 放射線治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
悪性神経膠腫に対し、新しい観点からの有効な治療法を開発し,標準的治療として確立することを目的とし、「星細胞腫grade3・4に対する化学放射線治療としてのACNU単独療法とProcarbazine+ ACNU併用療法とのランダム化比較試験(Phase II/III試験)」を実施する。
研究方法
星細胞腫grade3・ 4で、20歳から69歳の患者を対象とし、手術による組織診断確定後、14日以内に登録・割付けを行う。A群は、放射線開始時および36日目にACNU 80mg/m2を静脈内投与し、60Gyの局所照射を行い、さらに8週ごとに同量のACNUを再発まで、最大12コース投与する。B群は、放射線治療開始と同時および36日目から10日間procarbazine 80mg/m2の経口投与を行い、8日目および43日目にACNU80mg/m2を静脈内投与する。照射後も同様に10日間のprocarbazineの投与の8日目にACNU静脈内注射を行い、これを8週ごとに最大12コース実施する。
結果と考察
本試験は、平成14年度に組織されたJCOG脳腫瘍グループ19施設の協力のもとに実施された。国内でもTemozolomide(TMZ)の使用が認可された事を受けて、第II相段階が終了した時点(A群55例、B群56例)で本試験への登録を停止したが、これまでの国内の脳腫瘍関係のいかなる臨床試験より多くの登録症例数となった。現在経過観察期間中ではあるが、111例中、膠芽腫81例のみについての生存期間中央値がA群16.2ヵ月、B群18.7ヵ月であり、本来、別個の試験であり比較はできないが、EORTC/ NCICの放射線+TMZ群の14.6ヵ月に比べ良好であった。一方、無増悪生存期間中央値については、A群6.0ヵ月、B群6.3ヵ月であり、放射線+TMZ群の6.9ヵ月に比べ若干劣っている傾向を示した。
結論
JCOG脳腫瘍グループが組織され、国内での悪性脳腫瘍に対する臨床試験の基盤が出来上がり、大規模な多施設共同試験を計画することが可能になった。本臨床試験の結果、悪性神経膠腫に対し、ACNU併用の化学放射線治療は有効であるが、有害事象も高頻度で認められることから、国内での標準治療も放射線+TMZが適切と判断された。今後は、TMZを主体とし、さらに有効な治療法の開発が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200721005B
報告書区分
総合
研究課題名
悪性脳腫瘍の標準的治療法の確立に関する研究
課題番号
H17-がん臨床-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
渋井 壮一郎(国立がんセンター中央病院第二領域外来部脳神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 嘉山 孝正(山形大学 脳神経外科)
  • 隈部 俊宏(東北大学 脳神経外科)
  • 倉津 純一(熊本大学 脳神経外科)
  • 澤村 豊(北海道大学 神経外科)
  • 高橋 潤(京都大学 脳神経外科)
  • 田中 克之  (聖マリアンナ医科大学 脳神経外科)
  • 藤堂 具紀(東京大学 脳神経外科)
  • 永根 基雄(杏林大学 脳神経外科)
  • 西川 亮(埼玉医科大学 脳神経外科)
  • 藤巻 高光(埼玉医科大学 脳神経外科)
  • 別府 高明(岩手医科大学 脳神経外科)
  • 南田 善弘(札幌医科大学 脳神経外科)
  • 村垣 善浩(東京女子医科大学 脳神経外科)
  • 矢崎 貴仁(慶応義塾大学脳神経外科)
  • 角 美奈子(国立がんセンター中央病院 放射線治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在なお予後不良である悪性神経膠腫に対し、新しい観点からの有効な治療法を開発し,標準的治療として確立することを目的とし、「星細胞腫grade3・4に対する化学放射線治療としてのACNU単独療法とProcarbazine+ ACNU併用療法とのランダム化比較試験(Phase II/III試験)JCOG 0305」を実施する。
研究方法
手術により組織診断が確定した星細胞腫grade3 またはgrade 4で、年齢は20歳から69歳の患者を対象とし、術後14日以内に登録し、治療法の割り付けを行う。A群としては、放射線開始時および36日目にACNU 80mg/m2を静脈内投与し、60Gyの局所照射を行い、さらに8週ごとに同量のACNUを再発まで、最大12コース投与する。B群としては、放射線治療開始と同時および36日目から10日間procarbazine 80mg/m2の経口投与を行い、8日目および43日目にACNU80mg/m2を静脈内投与する。照射後の維持療法時も同様に10日間のprocarbazineの投与の8日目にACNU静脈内注射を行い、これを8週ごとに最大12コース実施する。
結果と考察
平成16年4月よりJCOG脳腫瘍グループ19施設の協力のもとに登録が開始された。国内でもTemozolomideの使用が認可された事を受けて、平成18年9月第II相段階が終了した時点(A群55例、B群56例)で本試験への登録を停止したが、これまでの国内の脳腫瘍関係のいかなる臨床試験より多くの登録症例数となった。現在経過観察期間中ではあるが、111例中、膠芽腫81例のみについての生存期間中央値がA群16.2ヵ月、B群18.7ヵ月であり、EORTC/ NCICのRT+TMZ群の14.6ヵ月に比べ良好であった。一方、無増悪生存期間中央値については、A群6.0ヵ月、B群6.3ヵ月であり、RT+TMZ群の6.9ヵ月に比べ若干劣っている傾向を示した。
結論
JCOG脳腫瘍グループが組織され、国内での悪性脳腫瘍に対する臨床試験の基盤が出来上がり、大規模な多施設共同試験を計画することが可能になった。本臨床試験の結果、悪性神経膠腫に対し、ACNU併用の化学放射線治療は有効であるが、有害事象も高頻度で認められることから、国内での標準治療も放射線+TMZが適切と判断された。今後は、TMZを主体とし、さらに有効な治療法の開発が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200721005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内における標準治療が確立されていない悪性神経膠腫に対し、ACNUを主体とした化学放射線治療の効果および有害事象が多施設共同試験により評価された。ProcarbazineによるMGMT抑制に起因するACNUの腫瘍抑制効果についてはさらに検討を要するが、併用により若干の生存期間の延長が見られる一方、有害事象が高頻度に見られ、注意を要することが確認された。
臨床的観点からの成果
従来国内で広く用いられてきたACNUを主体とした化学放射線治療は、欧米で標準治療となっているTemozolomideと同様な治療効果を示したが、血液毒性等の有害事象が頻発し、特にProcarbazineとの併用ではその傾向が強かった。今後、国内においても悪性神経膠腫の治療薬としてはTemozolomideを第一選択とするのが望ましいと考えられた。
ガイドライン等の開発
日本癌治療学会において、脳腫瘍治療に関するガイドラインの作成が行われ、日本脳神経外科学会学術委員会脳腫瘍全国統計委員会でも「脳腫瘍取扱い規約」の改訂が進められている。本研究の成果は、これらガイドライン作成に十分寄与するものと考えられる。
その他行政的観点からの成果
JCOG脳腫瘍グループが組織され、悪性脳腫瘍に対する大規模な多施設共同臨床試験が国内でも可能になった。今後、この組織を活用することにより、発生頻度の低い各種脳腫瘍に対する臨床試験の実施が可能となった。
その他のインパクト
2006年8月10日発行のMedical Tribune Vol.39, No.32に「JCOG脳腫瘍グループ 悪性グリオーマに対する標準治療確立へ」という見出しで、また同じく2008年2月7日発行のVol.41, N.6で「星細胞腫grade 3・4に対するACNU単独、ACNU+PCZ併用 欧米のTMZ使用に比べJCOG0305の全生存期間は良好」という見出しで,本研究の成果が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
34件
原著論文(英文等)
35件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shibui S
A randomized controlled trial on malignant brain tumors. The activities of Japan Clinical Oncology Group (JCOG)-Brain Tumor Study Group (BTSG)
Neurol med chirur , 44 (4) , 220-221  (2004)
原著論文2
渋井壮一郎
星細胞腫grade3/4に対するACNU vs ACNU+PCZによる第II/III相試験(JCOG 0305臨床試験
Neuro-Oncology , 15 (2) , 50-53  (2005)
原著論文3
渋井壮一郎
悪性脳腫瘍に対する最近の治療1.悪性グリオーマ
脳神経 , 57 (12) , 1027-1033  (2005)
原著論文4
渋井壮一郎
悪性グリオーマに対する化学療法 ー大規模臨床試験とテーラーメイド治療ー
Jpn J Neurosurg  , 15 (1) , 3-9  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-