頭頚部がんの頸部リンパ節転移に対する標準的手術法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200721001A
報告書区分
総括
研究課題名
頭頚部がんの頸部リンパ節転移に対する標準的手術法の確立に関する研究
課題番号
H17-がん臨床-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
斉川 雅久(国立がんセンター東病院外来部)
研究分担者(所属機関)
  • 岸本 誠司(東京医科歯科大学頭頚部外科)
  • 丹生 健一(神戸大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頚部外科)
  • 中島 格(久留米大学医学部耳鼻咽喉科・頭頚部外科)
  • 西嶌 渡(埼玉県立がんセンター頭頚部外科)
  • 川端 一嘉(癌研究会有明病院頭頚科)
  • 長谷川 泰久(愛知県がんセンター中央病院頭頚部外科)
  • 藤井 隆(大阪府立成人病センター耳鼻咽喉科)
  • 冨田 吉信(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター頭頚科)
  • 浅井 昌大(国立がんセンター中央病院外来部頭頚科)
  • 松浦 一登(宮城県立がんセンター耳鼻咽喉科)
  • 朝蔭 孝宏(東京大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頚部外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
頭頚部がんの頚部リンパ節転移に対する最も一般的な治療法は機能温存に主眼をおく頚部郭清術(機能温存術)である。その複雑な開発経緯から機能温存術には多くの術式が存在し、各術式の適応やリンパ節切除範囲、切除する非リンパ組織の種類などには大きな混乱が見られる。本研究の目的は、機能温存術に関するこれらの混乱を統一し施設差を解消することである。
研究方法
1)頚部郭清術の手術術式の均一化(ある施設の頚部郭清術を他施設の医師が直接見学調査することにより、頚部リンパ節切除範囲、切除する非リンパ組織の種類など術式細部に関して均一化を図る)、2)頚部郭清術に関する原発部位別、進展度別ガイドラインの作成および修正、3)頚部郭清術の術後後遺症に関する調査、4)頚部郭清術の術後補助療法に関する検討、以上により頚部郭清術の標準化を目指す。
結果と考察
1)術式均一化に関する前向き研究の追跡調査を継続した。対照群と第2段階症例群との間で2年頚部制御率の比較を行ったが、現時点では有意差は認められなかった。施設差の存在が確実な調査票項目および施設差の存在が疑われる調査票項目について協力施設間で意見調整を行い、頚部郭清術手順指針(案)改訂版を作成した。今後手順指針(案)をさらに充実させ、最終的には公表することにより、術式均一化をわが国全体に広げていきたいと考えている。2)下咽頭がん、喉頭がん、および舌がんの頚部郭清術に関する文献調査結果をまとめ、さらに中咽頭がんに関する文献調査を開始した。昨年度提示した頚部リンパ節転移の画像診断基準案の検証を行い、修正案を作成した。現時点ではCT検査が標準的検査法と考えられた。3)術式均一化に関する前向き研究に連動して術後機能評価を行い、術式細部と術後機能の関係を調査する新たな多施設共同研究を実施に移した。4)術後化学放射線同時併用療法に関する臨床第1・2相試験を継続し、第1相試験を完了した。引き続き第2相試験を行い、その安全性および効果を確認した。5)頚部郭清術講習会を開催し、若手耳鼻咽喉科医を中心とする175名の参加を得た。講演、質疑応答、およびビデオ「凍結保存遺体による標準的頚部郭清術」の供覧・DVD配布を通して本研究班の研究成果を詳しく伝え、参加者にはとても好評であった。
結論
術式均一化に関する前向き研究の調査票解析結果に基づき、頚部郭清術手順指針(案)改訂版を作成した。頚部郭清術講習会を開催し、好評を得た。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200721001B
報告書区分
総合
研究課題名
頭頚部がんの頸部リンパ節転移に対する標準的手術法の確立に関する研究
課題番号
H17-がん臨床-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
斉川 雅久(国立がんセンター東病院外来部)
研究分担者(所属機関)
  • 岸本 誠司(東京医科歯科大学頭頚部外科)
  • 丹生 健一(神戸大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頚部外科)
  • 中島 格(久留米大学医学部耳鼻咽喉科・頭頚部外科)
  • 西嶌 渡(埼玉県立がんセンター頭頚部外科)
  • 川端 一嘉(癌研究会有明病院頭頚科)
  • 長谷川 泰久(愛知県がんセンター中央病院頭頚部外科)
  • 藤井 隆(大阪府立成人病センター耳鼻咽喉科)
  • 冨田 吉信(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター頭頚科)
  • 浅井 昌大(国立がんセンター中央病院外来部頭頚科)
  • 松浦 一登(宮城県立がんセンター耳鼻咽喉科)
  • 朝蔭 孝宏(東京大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頚部外科)
  • 西條 茂(宮城県立がんセンター耳鼻咽喉科)
  • 吉積 隆(群馬県立がんセンター頭頚科)
  • 大山 和一郎(国立がんセンター中央病院外来部頭頚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
頭頚部がんの頚部リンパ節転移に対する最も一般的な治療法は機能温存に主眼をおく頚部郭清術(機能温存術)である。その複雑な開発経緯から機能温存術には多くの術式が存在し、各術式の適応やリンパ節切除範囲、切除する非リンパ組織の種類などには大きな混乱が見られる。本研究の目的は、機能温存術に関するこれらの混乱を統一し施設差を解消することである。
研究方法
1)手術術式の均一化(ある施設の頚部郭清術を他施設の医師が直接見学調査することにより、頚部リンパ節切除範囲、切除する非リンパ組織の種類など術式細部に関して均一化を図る)、2)原発部位別、進展度別ガイドラインの作成および修正、3)術後後遺症に関する調査、4)術後補助療法に関する検討、以上により頚部郭清術の標準化を目指す。
結果と考察
1)術式均一化に関する前向き研究を継続し、症例登録を完了した。調査票解析により、研究第1段階から第2段階への移行に伴い施設差の程度が低下した項目が11項目認められ、本研究が施設差解消に貢献したことが明らかになった。施設差の存在が確実な項目(13項目)および施設差の存在が疑われる項目(7項目)について協力施設間で意見調整を行い、頚部郭清術手順指針(案)を作成した。今後手順指針(案)をさらに充実させ、最終的には公表することにより、術式均一化をわが国全体に広げていきたいと考えている。2)舌がんに関する治療ガイドライン案を修正した。術前進展度診断の標準化を目指して、頚部リンパ節転移画像診断に関する診断基準案(CT検査用および超音波検査用)を作成した。3)術後後遺症の長期的経過観察を行う前向き研究を完了し、郭清範囲の縮小および非リンパ組織の温存が術後機能に寄与することを確認した。さらに、術式均一化に関する前向き研究に連動して術後機能評価を行う新たな多施設共同研究を実施した。4)術後補助療法としての化学放射線同時併用療法に関する臨床第1・2相試験を実施し、その安全性および効果を確認した。5)頚部郭清術講習会を開催し、若手耳鼻咽喉科医を中心とする175名の参加を得た。講演、質疑応答、およびビデオ「凍結保存遺体による標準的頚部郭清術」の供覧・DVD配布を通して本研究班の研究成果を詳しく伝え、参加者にはとても好評であった。
結論
術式均一化に関する前向き研究の症例登録を完了した。施設差が認められる術式細部について協力施設間で意見調整を行い、頚部郭清術手順指針(案)を作成した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200721001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
頸部郭清術の術式均一化に関する前向き研究を実施し、協力施設間における術式細部の均一化にある程度成功した。外科手術の術式細部を多施設間で均一化するという試みはあまり前例のないものであるが、手術療法の将来を考える上で、貴重な方法論を提示できたのではないかと思う。わが国では頸部郭清術後の後遺症に関する大規模な研究が行われていなかったが、術後後遺症の長期的経過観察を行う前向き研究およびその関連研究により、術式と術後後遺症の関連を示すデータを提示することができた。
臨床的観点からの成果
術式均一化に関する前向き研究で得られた調査票を解析し、施設差の認められた術式細部について協力施設間で意見調整を行い、頸部郭清術手順指針(案)を作成した。平成21年度にこれに改訂を加え、手順指針(案)第3稿Bとした。本手順指針(案)は、頸部郭清術を実施する上で重要となる術式細部の一つ一つについて、標準的と考えられる処理方法を詳述したもので、多くの医師に役立つものと考える。本研究班で新たな頸部郭清術後機能評価法を作成し、これを用いた複数のスタディにより、正確な術後機能評価が可能であることを確認した。
ガイドライン等の開発
平成14-16年度に作成した「舌がん、下咽頭がん、声門上がん、および中咽頭がんの頸部リンパ節転移に対する治療ガイドライン」案に検討を加え、エビデンスの追加を行った。その結果、本研究班案はガイドラインに組み込める形として十分にまとまったと思われた。平成21年3月に日本頭頸部癌学会から出版された「頭頸部癌診療ガイドライン2009年版」については平成23年に改訂版発行が計画されているが、その改訂作業に本研究班が関わることになり、ガイドライン改訂版に本研究班案の反映されることが確実になった。
その他行政的観点からの成果
頸部郭清術手順指針(案)を作成したが、改訂を繰り返し内容を充実させることにより、頸部郭清術の術式均一化をわが国全体に普及させる効果があるものと考えている。平成19年度に手順指針(案)に沿った標準的頸部郭清術をわかりやすく解説するビデオを作成し、平成20年度にその英語版を作成して、国内外に広く配布した。さらに、頸部郭清術講習会を平成19年度から毎年1回開催し、日本全国からの参加者に本研究の成果を詳しく伝えた。これらの活動を継続することにより、術式均一化をさらに広めていきたいと考えている。
その他のインパクト
平成19年12月1日、平成20年12月6日、平成21年12月12日の3回、専門分野研究者研修会「頸部郭清術講習会」を開催し、日本全国から若手耳鼻咽喉科医を中心とする多数の参加を得た(第1回 175名、第2回 165名、第3回 156名)。講演、質疑応答、頸部郭清術手順指針(案)配布、および標準的頸部郭清術ビデオ(DVD)配布を通して本研究班の研究成果を詳しく伝え、参加者にはとても好評であった。第3回講習会では講習会全体をビデオ収録し、これをDVDにまとめ、復習用教材として後日希望者に配布した。

発表件数

原著論文(和文)
39件
うち、論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記されたもの 8件
原著論文(英文等)
20件
うち、論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記されたもの 7件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
69件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
頸部リンパ節転移に対する治療ガイドライン(原発部位別、進展度別)について多方面より検討を進めているが、未だ案の段階である。
その他成果(普及・啓発活動)
3件
専門分野研究者研修会「頸部郭清術講習会」を3回開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
丹生健一,井上博之,斉川雅久,他
術後機能と後遺症からみた頸部郭清術-頸部郭清術の後遺症に関する実態調査より-
頭頸部癌 , 31 (3) , 391-395  (2005)
原著論文2
長谷川泰久,斉川雅久,岸本誠司,他
頸部郭清術の分類と名称に関する試案
頭頸部癌 , 31 (1) , 71-78  (2005)
原著論文3
朝蔭孝宏,岸本誠司,斉川雅久,他
舌癌に対する頸部郭清術の適応と郭清範囲の標準化に関する研究
頭頸部癌 , 31 (4) , 536-540  (2005)
原著論文4
斉川雅久,岸本誠司,中島格,他
頸部郭清術の手術術式の均一化に関する研究
頭頸部癌 , 32 (1) , 72-80  (2006)
原著論文5
Inoue H, Nibu K, Saikawa M, et al.
Quality of life after neck dissection
Arch Otolaryngol Head Neck Surg , 132 (6) , 662-666  (2006)
原著論文6
松浦一登,西條茂,浅田行紀,他
口腔・中下咽頭扁平上皮癌pN(+)症例に対する術後治療の有用性について
頭頸部癌 , 32 (1) , 61-67  (2006)
原著論文7
別府武,佐々木徹,川端一嘉,他
下咽頭扁平上皮癌頸部リンパ節転移に対する超音波断層診断の有用性と限界および頸部郭清術に及ぼす影響について
日耳鼻 , 108 (8) , 794-800  (2005)
原著論文8
Goto M, Hasegawa Y, Terada A, et al.
Prognostic significance of late cervical metastasis and distant failure in patients with stage I and II oral tongue cancers
Oral Oncol , 41 (1) , 62-69  (2005)
原著論文9
鈴木秀典,小川徹也,長谷川泰久,他
頭頸部扁平上皮癌におけるFDG-PET、FDG-PET/CTの診断能
日耳鼻 , 110 (9) , 629-634  (2007)
原著論文10
Saikawa M, Kishimoto S
Standardizing the extent of resection in nonradical neck dissections: the final report of the Japan Neck Dissection Study Group prospective study
Int J Clin Oncol , 15 (1) , 13-22  (2010)
原著論文11
Hasegawa Y, Saikawa M
Update on the classification and nomenclature system for neck dissection: revisions proposed by the Japan Neck Dissection Study Group
Int J Clin Oncol , 15 (1) , 5-12  (2010)
原著論文12
Nibu K, Kawabata K, Saikawa M, et al.
Quality of life after neck dissection: a multicenter longitudinal study by the Japanese Clinical Study Group on Standardization of Treatment for Lymph Node Metastasis of Head and Neck Cancer
Int J Clin Oncol , 15 (1) , 33-38  (2010)
原著論文13
Kamiyama R, Saikawa M, Kishimoto S
Significance of retropharyngeal lymph node dissection in hypopharyngeal cancer
Jpn J Clin Oncol , 39 (10) , 632-637  (2009)
原著論文14
松浦一登, 浅田行紀, 西條茂, 他
喉頭温存・下咽頭喉頭部分切除術における切除範囲と再建法について
頭頸部外科 , 19 (2) , 111-118  (2009)
原著論文15
Ogawa T, Matsuura K, Saijo S, et al.
Survival of a free jejunal graft after the resection of its nutrient vessels
Auris Nasus Larynx , 37 (1) , 125-128  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-