がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担最小化に関する研究

文献情報

文献番号
200720048A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担最小化に関する研究
課題番号
H19-3次がん-一般-033
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
濃沼 信夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 直幸(神奈川県立がんセンター臨床研究所)
  • 下妻 晃二郎(立命館大学理工学部)
  • 廣中 秀一(静岡県立静岡がんセンター)
  • 菱川 良夫(兵庫県立粒子線医療センター)
  • 金子 昌弘(国立がんセンター中央病院)
  • 水島  洋(東京医科歯科大学)
  • 澤田 俊夫(群馬県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策基本法に掲げられた患者の意向の尊重、患者中心の医療を実現する上で、経済的な悩みに適切に対応することが欠かせない。本研究は、がん患者の経済的負担の実態を正確に把握し、医療経済の手法を用いて患者の立場から負担を最小化する方策を検討する。実態調査から経済的負担を最小化するための臨床現場で可能な対策、現行制度の運用上の工夫、望まれる制度改革について提言を行う。
研究方法
第1に、がん患者の経済的負担および負担感の実態を多面的に把握する。第2に、経済面の患者説明を支援するツールとして、医療費が表示されるナビゲーションシステムを開発し実用化を図る。
結果と考察
全国のがん医療施設を受診したがん患者を対象に、医療費の自己負担額、経済的負担感、QOL等について調査し、6,969名から回答を得た。年間の自己負担額は平均101.1万円で、入院が52.5万円、外来が18.1万円である。がん罹患による仕事や家計への影響は少なくなく、支払いは貯蓄の取り崩しで賄われることが多い。経済的負担感をVASで調査すると、「非常に重い」(12.5%)から、「全くない」まで、分散が大きい。がん患者の家計消費状況の分布は、世帯年収、貯蓄額、世帯借入金とも一般国民と大差はない。経済的負担感を構成する要因について階層的重回帰分析を行うと、窓口での外来費用や交通費によって負担感の増すことがわかる。QOL(EQ-5D)との関連をみると、不安、ふさぎ込み、家族に迷惑をかけていると思う場合などで負担感が増すことが判明した。
実態調査から、患者に対する経済面の説明が不十分な状況にあることが明らかになったが、患者説明を支援するツールとして、パソコン画面に医療費、自己負担額が表示される、医師向けのナビゲーションシステムを開発した。
結論
高額な抗がん剤や医療機器の登場、長い臨床経過などで、がん患者の経済的負担は少なくない。患者の経済的負担感は10段階のVASで4.7とほぼ中程度にあり、患者のQOL(EQ5D)と経済的負担感の関係では、普段の活動、痛み・不快感、不安・ふさぎ込みなどの項目と有意な関係(Spearmanの相関)が見られた。経済的理由によって治療を変更する患者の割合は1%以下と推計された。
今年度は大腸がんについて、標準的な治療における医療費の検索システムの開発を行った。本ナビゲーションシステムは簡便で、多忙な医師が患者にがん治療の経済面について説明を行う上で有用と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-05-26
更新日
-