難治性小児がんの臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見に基づく診断治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200720025A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児がんの臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見に基づく診断治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-3次がん-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
清河 信敬(国立成育医療センター研究所 発生・分化研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本純一郎(国立成育医療センター研究所)
  • 林泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 小川誠司(東京大学大学院 医学系研究科 )
  • 大平美紀(千葉県がんセンター 生化学研究部 )
  • 中川温子(国立成育医療センター 臨床検査部 )
  • 森鉄也(国立成育医療センター 特殊診療部 )
  • 大喜多肇(国立成育医療センター研究所 発生・分化研究部 )
  • 横澤敏也(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 血液・腫瘍研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がんは小児期の死因の上位を占めるが、適切な治療を行えば完全治癒も期待されるため、発症時の正確な診断、症例ごとの治療反応性予測、QOLを考慮した体系的治療層別化が重要である。そこで本研究では、難治性小児がんを対象に包括的・体系的生体分子情報解析(オミックス)を行って、臨床的特性に関する分子情報を網羅的に明らかにし、その知見を新規診断・治療法開発に応用することを目的とする。
研究方法
小児がんの臨床検体、細胞株(疾患特異的キメラ遺伝子を任意発現させたものを含む)を対象とした。高密度SNPアレイ等による網羅的ゲノム構造解析、DNAチップを用いた網羅的遺伝子発現解析、定量PCR を用いたキメラ遺伝子発現解析、RT-PCR/直接シークエンシングによる遺伝子変異の同定、フローサイトメトリーやイムノブロットによる蛋白発現解析、LC-MSによる発現糖鎖解析を行なった。
結果と考察
神経芽腫等についてゲノムコピー数異常・アレル不均衡のゲノムワイドなマッピングを行い、そのゲノム構造異常の特性を明らかにし、疾患関連標的遺伝子の候補を同定した。肝芽腫等の網羅的遺伝子発現解析を実施して、特徴的な遺伝子発現プロファイルを明らかにした。小児急性骨髄性白血病の体系的キメラ遺伝子発現、治療経過中のWT1遺伝子の発現と予後との関係について解析した。悪性リンパ腫、白血病の蛋白・糖鎖発現解析から疾患あるいは亜群に特有の発現パターンが示唆された。以上の解析をさらに進めることで、診断や治療層別化に有用な分子発現様式の同定や微小残存病変解析への応用が期待される。
間葉系前駆細胞にEwing肉腫特異的なEWS-ETSキメラ遺伝子を発現させて同肉腫の形質の部分的獲得を示し、さらにその発症機構について解析を進めている。上記研究推進を支える上で重要である小児がんの中央診断、検体保存の基盤整備を進めた。今後新規知見を積極的に新規診断法として導入して行く。
結論
臨床検体を中心とした小児がんの包括的・体系的生体分子情報解析を実施するとともに、小児がんのトランスレーショナルリサーチ推進を支えるための基盤研究として中央診断と検体保存システムの整備を行った。今後さらに検討を進め、各分子解析結果の意義ならびに臨床的、生物学的特性との関係について明らかにし、診断や治療における標的因子探索へ応用していくことで、難治性小児がんの治療成績向上に貢献することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-