ゲノム情報に基づいた個体発生と発がん・進展に関連する新規遺伝子の同定およびその機能的意義の解明と臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200720021A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報に基づいた個体発生と発がん・進展に関連する新規遺伝子の同定およびその機能的意義の解明と臨床応用に関する研究
課題番号
H19-3次がん-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中川原 章(千葉県がんセンター研究局)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 俊文(千葉県がんセンター研究局)
  • 竹永 啓三(千葉県がんセンター研究局)
  • 古関 明彦(理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究センター)
  • 上條 岳彦(千葉県がんセンター研究局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性がんの克服を目的として、個々のがんが由来する正常組織の発生生物学的特性に注目し、治療に対する反応性の違いに多大な影響を及ぼすと思われる個体発生過程において機能する重要な遺伝子を、ゲノム情報に基づいて網羅的に同定し、それらを分子標的とした治療法開発を目指す。
研究方法
同一組織から発生する小児がんと成人がんを対比させる方法論を導入し、神経系腫瘍と肝腫瘍を対象に、網羅的なcDNAマイクロアレイ解析とアレイCGH法によるゲノム異常の解析を行った。また、個体発生の過程で重要な機能を果たしている重要ながん抑制遺伝子p53ファミリーメンバーと共に、発がんに関与するポリコーム遺伝子や転移および低酸素状態に関連する新規重要遺伝子の機能を解析した。
結果と考察
神経芽腫と神経膠芽腫および肝芽腫と肝細胞がんの網羅的ゲノム異常、遺伝子発現プロファイル解析が終了し、発生系統と発がん関する類似と相違に関し比較解析を始めた。
 神経芽腫および他のがんの染色体1p36.2にマップされるがん抑制遺伝子としてKIF1Bβを同定し、haploinsufficient tumor suppressor geneであることを示した。また、11q23の候補遺伝子としてTSLC1、17q増加領域のがん遺伝子として新規 non-coding RNAを同定しncRANと命名した。
 神経芽腫におけるMYCNの新規ターゲットとして、発がん起序に重要なポリコーム複合体の構成分子Bmi1を見出した。
 基本転写因子であるTBP関連遺伝子産物の一つであるTRF2が、p53ファミリーメンバーであるTAp63の転写レベルにおける特異的な調節に重要な役割を担っていた。
 ミトコンドリアND6遺伝子中のミスセンス変異が細胞に高転移性を賦与することが判り、B82細胞由来の高転移性細胞B82Metで、ND6遺伝子中にナンセンス変異が存在することを見いだした。また、27症例のヒト転移性脳腫瘍のうち3例において4種類のミスセンス変異を見出した。
 新たながん抑制候補遺伝子である新規ポリコム群タンパクPcl2の解析から、Pcl2はヒストンコードを文脈として読み取るタンパクであること、また、ヒストン以外のメチル化タンパクを認識しうる可能性が示唆された。
結論
難治性がんの網羅的ゲノム解析情報により具体的な候補遺伝子が同定され、がん治療の分子標的となり得ると思われた。

公開日・更新日

公開日
2008-05-16
更新日
-