アレイCGH法による流死産の原因解明と不育症に対する治療戦略の確立

文献情報

文献番号
200719028A
報告書区分
総括
研究課題名
アレイCGH法による流死産の原因解明と不育症に対する治療戦略の確立
課題番号
H19-子ども-若手-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
井原 規公(国立成育医療センター 周産期診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 伸晃(国立成育医療センター 周産期診療部)
  • 左合 治彦(国立成育医療センター 周産期診療部)
  • 井本 逸勢(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 丸山 哲夫(慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全妊娠の約15%は自然流産に至り、流産自体は決して稀な疾患ではないが、流産に至った患者夫婦が受ける精神的・肉体的打撃はきわめて深刻である。また流死産を繰り返す不育症患者に対する診療においては、その病態が明らかでないために不必要な検査あるいは治療が患者夫婦に強いられるケースも多い。本研究では、流死産に至った原因を遺伝学的ならびに病理学的側面から詳細に検討し、流死産に至る胎児側の要因を解明すると同時に、母体側要因に対して行われる不育症治療を検証し、不育症診療体系を整備し新たに提唱することを目的とする。

研究方法
流死産の遺伝学的原因の詳細な検討のために、東京医科歯科大学難治疾患研究所(分担研究者:井本逸勢ら)で開発されたGenome Disorder Arrayを用いたアレイCGH法による解析法を導入した。
また、不育症診療を将来確立していくために、本年度は現状の把握と、遺伝学的治療手段として注目される着床前診断法に関して検討した。
結果と考察
①アレイCGH法を施行した自然流産17症例中、16例は同時に染色体検査を行ったが、倍数体を除いてすべての症例でアレイCGH法によっても診断は可能であった。自然排出例に関してもアレイCGH法による検索は可能であり、微細な染色体異常も1例に認められた。アレイCGH法は染色体検査の技術的問題を補完すると同時に、全染色体を網羅的に高解像度で検索することが可能である。
②過去3年間の不育症専門外来における診療状況を解析したが、子宮内腔異常、抗PE抗体、NK活性、APTT短縮、甲状腺機能異常などと不育症との関連が示唆された。また流産となった場合は、ほとんどの症例で絨毛染色体異常が観察された。そのため不育診療を確立して行くためには流産の遺伝学的原因の精査が必要不可欠である。
③着床前診断法に対するアンケート調査を医療スタッフに行ったが、見解はスタッフの性別、年齢、専門などにより大きく異なっており、意見を統一するのは容易ではないと予想された。今後着床前診断の適応となる不育症患者カップルが増えて行くことも予想され、早急に着床前診断に関する諸問題を検討していく必要性がある。
結論
本研究のような先駆的な診断技術を用いた、流死産の遺伝学的要因の徹底的な原因検索や大規模な臨床研究による治療効果の判定により、今後不育症患者に対する診療体系が確立されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
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