乳幼児の発育・発達段階に応じた食育プログラムの開発と評価に関する研究

文献情報

文献番号
200719004A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児の発育・発達段階に応じた食育プログラムの開発と評価に関する研究
課題番号
H17-子ども-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 治子(東京家政学院大学)
研究分担者(所属機関)
  • 安梅 勅江(筑波大学)
  • 榊原 洋一(お茶の水女子大学)
  • 師岡 章(白梅学園短期大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、食を通じた子どもの健全育成にむけて、乳幼児とその保護者の食育プログラムを開発すると共に、その評価方法を解明することである。
研究方法
今年度は、平成17年度のベースライン診断の結果、また、保護者や保育専門職の食育に対するニーズを踏まえ、神奈川県川崎市及び相模原市の4保育所(モデル園)の0-6歳児の計472名の乳幼児を対象に食育プログラムを二年間かけて開発・実施し、その成果と課題を分析した。
結果と考察
まず、食育プログラムを開発するための組織は、全職員が共通理解をもって計画をボトムアップ的に作成する可能性を有する組織を編成することが重要であることが明らかになった。また、食育プログラムの編成にあたっては、経験学習の促しにつながるゴール・フリーモデル、あるいは状況分析モデルを採用すること、また、計画と実践の連動させるため、開発モデルの統一性を維持することが重要である。具体的な内容としては、①食に直結する内容だけにとどまらず、園生活全体を視野に入れ、子どもの主体性を重視したカリキュラムを計画・実施すること、②保育計画との連動性を持ち、食をテーマとした総合的な活動を盛り込むこと、③保育所を拠点とし、食物の生産・流通業者、飲食店等のフードシステムとの連携に着目した地域ベースでの食育ネットワークづくりの視点も重要である。また、子育て支援の観点からは、在園児の保護者に対して食育の内容の公開・情報発信だけにとどまらず、保護者から子どもの食へニーズを引き出し、養育力の向上につなげること、また、「食」を窓口に未就園の地域の子育て家庭への支援を展開することで保育所での食育の評価改善につながることが実証された。
本プログラム実施時における保育所職員の食育に対する認識は、開始時と比較して、食育実践の実績と工夫の双方にわたって期待感が高まっていた。特に、自覚的に食育に取り組んだモデル園職員の認識が、対照園と比較して高まりを見せていることも明らかになった。
保育所における食育の長期的な評価として、「児童票(食育に関する記録)」を開発し、食育目標の達成度をみると、モデル園では、概ね食育のねらいは達成できていた。ただ、園別に見ると、モデル園の間にも達成率に差が見られ、子どもの評価に対する判断基準が、園あるいは保育者によって異なっていることもわかった。今後は、主観性を大切にしながら、そのバラつきを無くすため、園あるいは保育者の視点を間主観性のレベルまで引き上げることが課題となることが明らかになった。
結論
本研究により、保育所を拠点とした食育プログラムの立案・展開方法のあり方を提案することができた。

公開日・更新日

公開日
2008-10-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200719004B
報告書区分
総合
研究課題名
乳幼児の発育・発達段階に応じた食育プログラムの開発と評価に関する研究
課題番号
H17-子ども-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 治子(東京家政学院大学)
研究分担者(所属機関)
  • 安梅 勅江(筑波大学)
  • 榊原 洋一(お茶の水女子大学)
  • 師岡 章(白梅学園短期大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、食を通じた子どもの健全育成にむけて、乳幼児とその保護者の食育プログラムを開発すると共に、乳幼児の食育のねらいの達成度、発育・発達、家庭での食生活、保護者への育児不安の軽減への効果とその評価方法を解明することである。
研究方法
1年次のベースライン診断の結果を踏まえ、神奈川県川崎市及び相模原市の4保育所(モデル園)の0-6歳児の計472名の乳幼児を対象に食育プログラムを約二年間かけて開発・実施し、その成果と課題を分析した。
結果と考察
保育所における食育の長期的な評価として「児童票(食育に関する記録)」を開発し、食育目標の達成度をみると、モデル園では概ね食育のねらいは達成できていたが、子どもの評価に対する判断基準が園あるいは保育者によって異なっていた。今後は主観性を大切にしながら、そのバラつきを無くすため、園あるいは保育者の視点を間主観性のレベルまで引き上げることが課題となることが明らかになった。
本食育プログラムの効果として、①子どもの「食」への積極な意欲・態度が高まった。②子どもの朝食の摂食頻度が高まり、外食頻度は多くならなかった。③保護者は子どもの食に関する知識が高まっていた。④注意欠陥多動行動との関連では、モデル園の保育者・保護者評定、双方において、「じっとしていられない、落ち着きがない、または多動である」「かんしゃくを起こしやすい」の2項目について経年的に顕著に低下した。⑤育児環境との関連では、育児についての相談相手がいる母親の割合、ゆったりとした気分で子どもと過ごせる時間がある母親の割合が低下しなかった。⑥発達との関連でみてみると、言語発達の表現領域での発達リスクが少なくなっている結果であった。これらの変化をもたらした食育プログラムの主要因については本研究では明らかにできないものの、以上の食育プログラムの総合的な効果が明らかになった。
結論
こうした限界があるものの、3年間の本研究班の成果として、家庭での食を通した子育ち環境の整備状況を確認する母子保健・福祉的視野から「家庭での食育実践評価票」を開発できた。保育所での食育の計画から評価までの連携度や取り組み、未就園の子育て家庭への支援を含めた評価ツール「保育所の食育実践総合評価票」を提案した。また、これにより市町村の保健・福祉行政担当者が家庭及び保育所での食育の現状と、展開する事業効果を公衆栄養学的に評価することを可能にした。

公開日・更新日

公開日
2008-10-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200719004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.保護者と保育専門職によるグループインタビュー法という質的な調査方法の活用により、食育ニーズを把握する方法を提示した。
2.3年間の介入研究から、乳幼児の家庭及び保育所での食育と、乳幼児の多動性や衝動性を含めたこころと身体の発育・発達面・食物摂取面、保護者のQOLや育児不安との関連性を明らかにした。
3.国内研究においても研究の少ない乳幼児を対象とし、長期的な生活場面でコントロール群を設定した食育の評価法を提案した。
臨床的観点からの成果
平成18年3月に「食育推進基本計画」に示された市町村食育推進計画における保育所を拠点とした「食育推進計画」の立案方法を示した。自治体での目標設定のための方法や、保育所における食育の実施状況のベースライン診断や、介入の評価方法を提示した。
ガイドライン等の開発
平成19年12月に「保育所における食育の計画づくりガイド」として、厚生労働省雇用均等児童家庭局保育課から全国通知された。
平成19年12月「保育所保育指針の改定に関する検討会(最終報告)」において、食育の内容と体制づくりなど、保育所保育指針及び解説書作成の基礎資料として活用された。
その他行政的観点からの成果
「保育所における食育の計画づくりに関する全国調査」の調査項目を選定し、平成18年11月に、厚生労働省雇用均等児童家庭局保育課で全国調査を実施し、その結果は平成19年5月に全国に通知された。平成18年3月の「健やか親子21の中間評価」で新たに導入された「食育」と「子どもの心の発達と育児不安の軽減」との関連について食育の効果を、地域ベースでの準実験デザインによって検証した。
その他のインパクト
平成17年6月「食育基本法」の成立に伴い厚生労働省健康局、医薬食品局、雇用均等・児童家庭局から通知された「健康づくりのための食育の推進について」の中で推進することが期待された保育所等での保育計画と連動した食育の計画、子育て家庭への支援の具体的なプログラムを提示し、本研究成果は「平成18年19年食育白書」に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
44件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
7件
その他成果(普及・啓発活動)
20件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-