認知症高齢者の自動車運転に対する社会支援のあり方に関する検討

文献情報

文献番号
200718076A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症高齢者の自動車運転に対する社会支援のあり方に関する検討
課題番号
H19-長寿-一般-025
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 由美子(国立長寿医療センター 研究所 長寿政策・在宅医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 学(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 上村 直人(高知大学医学部附属病院 神経科精神科)
  • 新井 明日奈(国立長寿医療センター 研究所 長寿政策・在宅医療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成19年改正道路交通法により、75歳以上の高齢者に対して認知機能検査が導入されることとなった一方で、認知症高齢者における運転中止に伴う本人及び家族介護者の困難に対する社会支援のあり方については、未だ十分に検討されていない。そこで、本研究では、認知症高齢者の運転中止が必至となった場合、その中止を円滑に進め、地域での自立した生活が継続されるための社会支援のあり方を提示することを目的として、社会医学的及び老年精神医学的、両観点からの分析及び評価を実施した。
研究方法
社会医学的観点から、認知症高齢者の運転中止に際しての課題を明らかにするため、一般生活者に対する意識調査を実施した。また、老年精神医学的観点から、認知症の原因疾患特異的な運転中止方法の確立に資するため、アルツハイマー病(AD)患者の運転能力に対する、患者本人及びその家族の認識、及び、認知症患者の運転行動を、前頭側頭葉変性症(FTLD)とAD、あるいはFTLDの下位分類である前頭側頭型認知症(FTD)と意味認知症(SD)について比較検討した。
結果と考察
1)わが国の一般生活者は、高齢者及び認知症高齢者の自動車運転に関して、性別、年齢層、運転状況により、異なる認識を有していた。2)一般生活者は、運転継続や中止等の判断について、医師や医療機関に対して高い信頼を寄せていた。3)一般生活者の居住地域あるいは年齢層によって、公共交通機関の整備状況や利便性に対する意識には大きな差異が認められた。4)AD患者本人とその家族間において、患者の運転能力や交通事故の有無に関する認識には乖離が認められた。5)認知症患者の運転行動は、FTLDとAD間、FTDとSD間において、顕著に異なっていた。
結論
認知症高齢者の円滑な運転中止を実現するためには、認知症の原因疾患別に、運転危険性の早期発見及び評価方法を確立することにより、適切な中止時期を決定することが重要である。また、運転中止に際しての関係者間の運転に関する認識の乖離を小さくし、合意形成を促していくことが奏功すると考えられる。さらに、認知症高齢者及び家族介護者の社会生活を支援していくためには、関係機関の連携・協働が必要不可欠である。ついては、一般生活者が高い信頼を寄せている医師や医療機関を端緒とすることにより、警察、免許センター、自治体を含む関係機関が連携・協働できる支援体制の構築が可能となるものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2008-12-14
更新日
-