創傷皮膚科学の樹立による褥瘡の病態解明と診療体系に関する研究

文献情報

文献番号
200718063A
報告書区分
総括
研究課題名
創傷皮膚科学の樹立による褥瘡の病態解明と診療体系に関する研究
課題番号
H19-長寿-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
磯貝 善蔵(国立長寿医療センター 先端医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 治(群馬大学医学部)
  • 古田 勝経(国立長寿医療センター 薬剤部)
  • 米田 雅彦(愛知県立看護大学)
  • 渡辺 研(国立長寿医療センター・運動器疾患研究部)
  • 森 將晏(岡山県立大学・保健福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
褥瘡は外力による虚血性皮膚潰瘍と定義されるが、その悪化要因や治癒阻害要因は多様で複雑である。適切な医療、介護のためには褥瘡の多様な病態を客観的に明らかにする学問体系が必要である。本研究では褥瘡の詳細な臨床的所見を皮膚科学に基づいて新たに定義する記載潰瘍学とともに創表面蛋白解析をおこない、相互の関連性を検討することによって、褥瘡の病態の多様性を客観的に解明する創傷皮膚科学という新しい学問分野を樹立することを目的とした。
研究方法
下記のように各分担研究者が研究課題に対して適宜主任研究者と協議して研究を推進した。
石川を中心にした記載潰瘍学の樹立では褥瘡臨床のデータベースを皮膚科専門医が検討し、記載皮膚科学に基づいた記載潰瘍学の作成を試みた。
古田を中心とした褥瘡創面の水分量評価と外用治療の影響では軟膏基剤に注目した治療を創表面の記載潰瘍学的評価、水分量の測定、創面の蛋白解析と関連させて評価した。
創面からの蛋白採取法、解析技術の開発では渡辺を中心に褥瘡の診療体系確立に向けた創表面からの蛋白質の採取、解析方法を検討した。
褥瘡創面からの創傷治癒関連分子の検出とその意義では米田を中心に(a)肉芽組織の産生を促進する成長因子とその制御分子群(b)肉芽組織の水分をコントロールする分子群(c)上皮化の足場となる分子群に注目して、創表面蛋白からの分子断片を免疫ブロット法などで解析した。
病理学的検討による記載潰瘍学と創表面蛋白解析の関連性では森を中心に創表面から検出可能な創傷治癒関連蛋白に関しての免疫組織学的解析と臨床所見と病理組織との相関を検討した。
結果と考察
記載皮膚科学に基づいた記載潰瘍学を樹立し、褥瘡の臨床的所見の客観的な記述を可能にした。さらに外用療法の軟膏基剤の変更で臨床的な所見が変化することを見出した。創表面の分子断片を標的とした病態解析を患者さんに低侵襲、かつ安全に行う方法を確立した。また創傷治癒関連分子を創表面から検出し、質的、量的な差異を見出した。病理学的検討により創傷治癒関連分子と記載潰瘍学の所見の差異を裏付けた。褥瘡の多様性を解析し、病態に応じた医療と介護を提供するための学問的基盤が確立した。
結論
褥瘡の病態を皮膚科的なアプローチである記載潰瘍学と生化学的なアプローチである創表面蛋白解析を用いて全く新しい視点で解析した。さらに病理学的研究により両者の関連性を検討した。

公開日・更新日

公開日
2008-11-14
更新日
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