高齢者の生活機能低下に対する作業療法の効果に関する研究

文献情報

文献番号
200718056A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の生活機能低下に対する作業療法の効果に関する研究
課題番号
H19-長寿-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
能登 真一(新潟医療福祉大学医療技術学部)
研究分担者(所属機関)
  • 上村 隆元(杏林大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の最終目的はこれまで十分なエビデンスとして示しきれていない作業療法の効果、とくに高齢者の生活機能低下への介入効果を明らかにすることとである。そこで、3年計画の初年度としては、ICFを用いた高齢者の生活機能低下の実態を調べること、さらに介護保険利用者に作業療法が何を提供しているのかという点に着目して介護保険下における作業療法の実態を調べることを目的に調査を実施した。また、高齢者の生活機能の低下と健康関連QOLとの関連を明らかにすることも目的とした。
研究方法
本研究では、全国の7県にある介護保険の施設に調査票を配布し、そこで作業療法を受けている要介護高齢者を対象に調査を実施した。
結果と考察
調査票は全部で672件回収し、回収率は74.7%であった。全対象者の平均年齢は80.2±9.3才で、男女比は男性244名・女性428名であった。
 ICFの評価では各領域の障害や困難さの程度を0から4の5段階に分類し、因子ごとの相対的な位置関係をItem indexとして示した。まず「心身機能」については、「計算機能(1.67)」、「筋力の機能(1.53)」などの機能障害が確認された。「活動と参加」に関しては、ほとんどの項目で実行状況よりも能力の困難さが低くなった。困難度が高かった項目は、「技能の習得(2.89)」、「しゃがむこと(2.94)」、「走ること(3.80)」などであった。「環境因子」では、「保健の専門職(2.85)」や「その態度(2.59)」が促進因子として大きく関与している実態が明らかとなった。また、多くの項目で阻害因子よりも促進因子として評価される項目が認められた。
 ADLでは、FIMの平均が83.3±33.0となり、要介護度が重くなるにしたがってFIMの値は低下した。また健康関連QOLについては、HUI3により健康効用値を求めたが、global scoreの平均が0.16±0.30となった。作業療法の実態調査では、「心身機能」で、筋力強化訓練や関節可動域訓練を多く実施しており、「活動と参加」では起居動作訓練や歩行訓練、ADL訓練外出訓練を、「環境因子」では家族指導や職員介助方法の指導を多く実施している実態が明らかとなった。
結論
介護保険で作業療法サービスを利用する要介護高齢者672名に対するICFによる生活機能の評価から,「活動と参加」では実行状況に比べて潜在的な能力が残されていること,「環境因子」では保健の専門職などが促進因子として強く関わっているという実態が明らかとなった.

公開日・更新日

公開日
2008-11-14
更新日
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