高齢者医療とQOL改善に対するグレリンの臨床応用とその基盤的研究

文献情報

文献番号
200718053A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者医療とQOL改善に対するグレリンの臨床応用とその基盤的研究
課題番号
H19-長寿-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
寒川 賢治(国立循環器病センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 一和(京都大学医学研究科)
  • 千原 和夫(神戸大学大学院医学研究科)
  • 芝崎 保(日本医科大学大学院医学研究科)
  • 村上 昇(宮崎大学農学部)
  • 中里 雅光(宮崎大学医学部)
  • 土岐 祐一郎(大阪大学大学院医学研究科)
  • 赤水 尚史(京都大学医学研究科)
  • 児島 将康(久留米大学分子生命科学研究所)
  • 永谷 憲歳(国立循環器病センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成長ホルモン(GH)の分泌低下はソマトポーズと呼ばれ、骨格筋や骨量の低下、内臓脂肪型肥満を来たし生活の質(QOL)を低下させる。主任研究者が発見したグレリンは、GH分泌促進作用に加え、摂食・エネルギー代謝調節、循環調節にも作用する。本研究は、これまでのグレリン研究を基盤として、高齢者医療とQOL改善に対するグレリンの臨床応用を目指し、基礎と臨床の両面から研究を展開する。
研究方法
19年度は以下の研究を実施した。
1)心筋梗塞におけるグレリンの治療的意義
2)中枢神経細胞増殖へのグレリンの作用
3)糖尿病性神経障害へのグレリンの治療的意義
4)加齢に伴う体脂肪蓄積機序におけるグレリンの生理的役割
5)加齢に伴うソマトポーズおよび食欲低下に対するグレリンの有用性
6)高齢ラットへのグレリン受容体作動薬の摂食および筋に及ぼす作用
7)遺伝子改変動物を用いたグレリンの生理学的意義の検討
8)変形性股関節症の人工股関節置換術の周術期回復におけるグレリンの有効性
9)胃切除術後患者へのグレリンの臨床効果
10)体重減少を伴う慢性閉塞性肺疾患患者へのグレリンの臨床効果
結果と考察
グレリンの心筋梗塞モデルラットへの投与は、急性期の心臓交感神経過剰興奮や急性期死亡率と慢性期の左室リモデリングを抑制し、糖尿病性神経障害モデルマウスへの投与は、末梢神経伝導速度の改善を示すことから、グレリンはこれらの疾患に対して新規治療法となる可能性がある。グレリンはラット視床下部培養神経細胞増殖を促進し、慢性投与により記憶の保持に働くことから、神経再生への応用の可能性も示唆された。ラットの加齢に伴う体脂肪蓄積には、グレリン非依存性の褐色脂肪細胞の機能低下と下垂体GHの合成低下が関与することが判明し、高齢マウスへのグレリン単回投与により摂食量が増加し、慢性投与では除脂肪体重率が増加した。高齢ラットへのグレリン受容体作動薬の慢性投与は、筋萎縮抑制を示した。グレリン欠損マウスは摂食、形態、糖・脂質代謝に異常を示さず、自律神経系の異常を認めた。体重減少を伴う慢性閉塞性肺疾患、変形性股関節症の人工股関節置換術後、胃切除後の患者を対象として、グレリンの臨床効果を評価するための二重盲検無作為化比較試験を開始し、安全性、有効性の検証を進めた。
結論
グレリンの疾患モデル動物における基礎的な研究成果に加え、臨床応用においてもグレリン治療の適応疾患拡大に向けた重要な成果を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2008-08-08
更新日
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