長寿科学の推進に係るグランドデザインに関する研究

文献情報

文献番号
200718050A
報告書区分
総括
研究課題名
長寿科学の推進に係るグランドデザインに関する研究
課題番号
H18-長寿-一般-042
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 敏彦(日本医科大学 医療管理学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 平尾智広(香川大学医学部 医療政策・公衆衛生)
  • 長谷川友紀(東邦大学医学部 社会医学講座医療政策・経営科学分野)
  • 佐藤敏彦(北里大学 公衆衛生)
  • 松本邦愛(東邦大学医学部 社会医学講座公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,274,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 日本は超高齢社会に向けて、医療のあり方はこれまでの単に諸外国を模倣するだけでは足りず、未来社会のあり方、保健医療福祉・社会保障システムのあり方、それを支える既存の長寿科学・老年学・老年医学のあり方も改めてグランドデザインから問い直し、世界に先駆けて構築していく必要がある。
 本年度は、持続可能で超高齢社会に適した保健医療システムのあり方のグランドデザインを描くことと、第3年度の準備として、超高齢社会のあり方に影響を与える科学技術研究の動向についても予備的な検討を行うことを目的とした。
研究方法
下記の分野に分けて研究班を形成し、専門家による検討と、患者調査や医療施設調査等の公的統計による定量的分析を行った。
1.医療分野
1)進化過誤概念の精密化
2)医療システム・支払い方式
3)ITの可能性
4)医療の技術革新
5) 老年医学概念整理
6) 医療需要予測(患者・医療費 
7) 医療地域格差と高齢化
2.非医療分野
老いをどうとらえる
2) 倫理分析
3)まちづくり
結果と考察
 これまでの医療は、急性期医療モデルを中心として考えられてきたが、超高齢社会では、常に複数の疾患や生涯を抱えて生活しそして必ず最後は避けられない死を迎えていく高齢者が医療の対象の中心となるため、そのモデルは変容をする必要がある。地域で多職種の協同でケアに当たり、患者や家族が行う医療や生活、終末期に関する意思決定をチームで支えていく必要がある、しかしそのためのノウハウや制度的蓄積は十分ではなく、今後喫緊の課題となる。
 社会保障制度の行きつまりも重要な課題である。世代間の負担の格差は今後広まり、社会自体の経済格差が広がる中で根本的な制度改革が必要である。医療需要は、絶対値としては、今後15年間はふえ、その後定常状態になると考えられる。
 一方で、iPS細胞の研究など、新しい科学技術の出現で、超高齢社会の諸問題は解決されたり大きく変容を遂げる可能性もあることが示唆された。
結論
 研究の過程で確認された事実は、高齢者医療は「社会や医療と多面的に関わっており、いわば社会と医療のパラダイムシフト」を必要とすること、また、高齢者の病態が「多数の疾患を抱え、その自然死にとり必要とされるケアが異なり継続が必須」であることそしてその「最終結果は常に死」ということである。
来年度は、このような特徴をもつ高齢者医療の意義について、一方で疫学的定量的分析を、一方で社会的倫理的分析を踏まえて検討する必要が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2008-08-08
更新日
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