高齢者の腰痛症に係る効果的な診断・治療・リハビリテーション等の確立

文献情報

文献番号
200718046A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の腰痛症に係る効果的な診断・治療・リハビリテーション等の確立
課題番号
H18-長寿-一般-038
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
戸山 芳昭(慶應義塾大学医学部整形外科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 耕三(東京大学医学部整形外科学)
  • 菊地 臣一(福島県立医大整形外科学)
  • 四宮 謙一(東京医科歯科大学整形外科学)
  • 千葉 一裕(慶應義塾大学医学部整形外科学)
  • 持田 讓治(東海大学医学部整形外科学)
  • 武政 龍一(高知大学医学部整形外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
22,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人口動態や社会環境の変化にともない高齢化社会に突入した我が国において、高齢者の腰痛症は大きな問題となっており、病態の把握、診断基準とガイドラインの作製、疫学データの蓄積、低侵襲の治療法開発が急務である。エビデンスに基づいた医療の視点から、高齢者の腰痛の原因となるさまざまな病態に対する臨床研究基盤の確立をこころみた。
研究方法
1) 原発性骨粗鬆症患者腰椎の定量的CTデータを用いて、立位荷重と前屈位荷重のシミュレーションによる骨強度予測をおこなった。2) 馬尾障害診断サポートツールの質問項目を単変量解析によって選択し、Logistic 解析をおこない各因子の重み付けを検定した。3) 健常成人の総腓骨神経を電気刺激し、105 channel超伝導量子干渉素子磁束計を用いて神経誘発磁界を測定した。4) ラット卵巣摘出(OVX)モデルを作成し、組織所見および尾椎由来の髄核・線維輪のⅡ型コラーゲンmRNA発現量を解析した。5) 自家骨髄間葉系細胞との共存培養にて活性化したヒト椎間板髄核細胞を免疫不全マウスへ移植し、その生物学的安全性について検討した。6) Biportal法によるリン酸カルシウムセメント椎体形成術についての臨床評価をおこなった。
結果と考察
1) 立位荷重・前屈位荷重における予測強度は、単軸圧縮における予測強度と高い相関を示しており、日常生活動作における骨強度評価を反映していた。2) 感度92.7%、特異度84.7%、ROC曲線下面積0.928で、腰部脊柱管狭窄症の識別力は高かった。3) 仰臥位型磁束計によって、腰椎部における磁界伝搬を非侵襲的に検出できた。4) OVX群では、経時的に髄核・線維輪細胞数の減少と終板の変性像がみられ、Ⅱ型コラーゲンmRNA発現量が有意に減少していた。5) 活性化したヒト髄核細胞は染色体異常、腫瘍化とも認められず、工程管理における安全性検査項目の基準値を満たしていた。6) 椎体形成術、1椎体あたりの平均手術時間は88分、平均出血量は21mlで、合併症は皆無であった。
結論
今後、さらにエビデンスのある臨床データと病態解明につながる基礎的知見を蓄積し、疫学的アプローチによる予防効果に加えて、再生医療、新規の低侵襲治療、社会復帰に向けた効果的なリハビリテーションプログラムを確立することで、患者および社会にとって有効な還元効果を目指す。

公開日・更新日

公開日
2008-07-30
更新日
-