認知症に対する非薬物療法の有効性に関する研究

文献情報

文献番号
200718034A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症に対する非薬物療法の有効性に関する研究
課題番号
H18-長寿-一般-024
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
服部 英幸(国立長寿医療センター 機能回復診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦久幸( 国立長寿医療センター 外来診療部 )
  • 長屋政博(国立長寿医療センター 機能回復診療部)
  • 小長谷陽子(認知症介護研究・研修大府センター )
  • 水野裕( 一宮市立市民病院今伊勢分院 )
  • 吉山顕次(国立長寿医療センター 機能回復診療部 )
  • 谷向 知(愛媛大学大学院医学系研究科・脳とこころの医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症の非薬物的アプローチは評価が困難であるため効果が疑問視されることが多く効果の客観的数値化、無作為比較試験など厳密にデザインされた研究によるエビデンスの検証はほとんどなされていない。本研究においては非薬物療法の有効性のエビデンスを検証する。
研究方法
可能な限り無作為割付比較試験(RCT)を採用するが、困難な場合でも対照群をとった前向き研究でおこなう。検証するアウトカムとして認知機能の改善、患者本人のADLおよびQOL、家族の介護負担度を評価する。また脳機能の変化の有無を検証する目的で脳血流シンチ、脳磁図などをもちいた放射線学的研究をおこない客観的な効果判定を行なう。その結果からどの病型の認知症にどの方法が有効かを明らかにする。
結果と考察
小長谷は個人回想法の有効性を対照群との比較で検討した.バウムテストで改善傾向が認められた.三浦は軽症アルツハイマー型認知症高齢者を対象に、RCTを用いて受動的音楽療法を行い効果を検討した。現在、症例登録中である。長屋はレクレーション療法群の対象者として、特別養護老人ホーム入所者を介入群と対照群として評価を行った。大腿四頭筋と腸腰筋の筋力が有意に向上していた。認知機能、日常生活活動、心理学的評価に関して、有意な改善がみられなかった。吉山は非薬物療法の効果の判定として、脳磁図計を用いて、Mismatch field(MMF)を測定することを検討した。報告段階で非薬物療法の効果判定を行うことは出来なかった。水野は学習介入と手作業の介入とを同様の条件で行い比較するRCTをおこなった。両群とも異なる分野における改善傾向が見られ、9ヶ月以上の長期においては、MMSEやADLを反映するMOSESは悪化を認めるが、ADAS-cogでは、改善を認めた。谷向の担当する集団回想法では語彙数の増加、楽しい気分の増強、生活場面では協調性・自発言語・他者への関心の増加を有意に認めた。服部はアルツハイマー病症例に絵画療法を週1回、12週間施行し、対照群として計算トレーニングとの無作為割付比較試験において認知症に対する有効性を検証することを目的とした。現段階ではMMSE、HDS-Rで評価した認知機能に改善傾向が見られた。
結論
2年目が終了した段階でまだ症例集積が不十分であるが、班員の報告を見る限り今回検討された非薬物療法は、すべて認知症例の認知機能あるいは感情・意欲の障害に対してある程度の効果が期待できると思われる。

公開日・更新日

公開日
2008-07-29
更新日
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