科学的根拠に基づく胎児治療法の臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200717014A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的根拠に基づく胎児治療法の臨床応用に関する研究
課題番号
H19-臨床試験-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
左合 治彦(国立成育医療センター周産期診療部胎児診療科)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 智明(国立循環器病センター周産期科)
  • 伊藤 裕司(国立成育医療センター周産期診療部新生児科)
  • 岡 明(東京大学大学院医学系研究科小児医学講座)
  • 村越 毅(聖隷浜松病院総合周産期母子医療センター)
  • 中田 雅彦(山口大学医学部附属病院周産母子センター)
  • 室月 淳(東北大学医学部附属病院産婦人科)
  • 高橋 雄一郎(国立病院機構長良医療センター産科)
  • 北野 良博(埼玉県立こども医療センター小児外科)
  • 前野 泰樹(久留米大学小児科総合周産期母子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床試験推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
56,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胎児治療法として期待され実施されている3つの胎児疾患 [双胎間輸血症候群(TTTS)、胎児胸水、胎児頻脈性不整脈:後2者は医療機器、薬剤が適応外使用] に対する治療法の有効性・安全性を評価して、3つの胎児治療法を臨床的に確立することを目的とする。
研究方法
1)TTTSに対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(レーザー手術)は、予後調査と頭部MRI検査による神経学的後遺症の研究を行った。予後に関する調査研究プロトコールを作成して、レーザー手術を受けて分娩に至ったTTTS 181例の横断的調査研究を実施した。2)胎児胸水に対する胸腔―羊水腔シャント術は、臨床的な使用確認試験の実施計画を申請し、多施設共同臨床試験のプロトコールを作成した。3)胎児頻脈性不整脈に対する薬剤投与は、3年間の治療実態をアンケート調査し、また関連する文献を調査した。
結果と考察
1) TTTS:日本におけるレーザー手術施行例181例の精度の高い治療成績が明らかとなった。少なくとも1児生存割合(生後28日)90.1%と児の生存率は高く、生存児の9割は正常な神経発達で神経後遺症がなく、レーザー手術の有効性が確認された。日本のレーザー手術の治療成績は欧州の成績に優るとも劣らぬものであり、レーザー手術がTTTSの第一選択治療法として実行可能であることが示された。2)胎児胸水:重症胎児胸水に対するバスケットカテーテルを用いたシャント術の有効性と安全性を確認する試験設定での研究実施の準備が整った。「臨床的な使用確認試験」であり、バスケットカテーテルの薬事法承認ならびに胸腔―羊水腔シャント術が標準的治療として認定されるための貴重な情報となる。胸腔―羊水腔シャント術の介入試験であり、世界でも初めてである。3)胎児頻脈性不整脈:全国調査から、胎児頻脈性不整脈に対する胎児治療の現状把握がなされた。単剤・多剤併用治療の選択、治療中止の基準は各施設で異なっており、統一した治療プロトコールの作成が必要である。
結論
TTTSに対するレーザー手術は、有効性が確認され、日本においても標準的治療として実行可能であることが示された。重症胎児胸水に対する胸腔-羊水腔シャント術は、多施設共同の臨床確認試験実施の準備が整い、症例登録を開始する。胎児頻脈性不整脈に対する薬剤投与は、日本の胎児治療の現状を把握した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-