文献情報
文献番号
200716006A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト化CD26抗体の難治性免疫疾患(クローン病、GVHDなど)への治療法開発
課題番号
H17-トランス-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
森本 幾夫(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター免疫病態分野)
研究分担者(所属機関)
- 日比 紀文(慶應義塾大学 医学部 内科)
- 東條 有伸(東京大学医科学研究所 血液腫瘍内科)
- 加藤 伸朗(ワイズセラピューティックス株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
63,625,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は炎症性腸疾患のクローン病及び同種幹細胞移植時に発生する重症graft versus host disease(GVHD)などの難治性免疫疾患の新しい治療法としてヒト化CD26抗体療法を確立し、その実用化を目指すものである。
研究方法
ヒト化CD26抗体(YS110)のGLP準拠でのカニクイザルを用いた5週間反復投与毒性試験、YS110のGLP準拠でのヒト及びカニクイザル組織交差反応を行う。さらにGVHDモデルでのin vivo有効性の機序、ヒトGVHD及びクローン病の炎症組織でのCD26リンパ球の動態解析を行う。YS110のGMPレベルでの作製及び安定化試験を行う。またCD26抗体の固相化によるヒトリンパ球からのサイトカイン産生をELISAにて測定する。
結果と考察
平成19年度はGLP準拠でのYS110複数回投与毒性試験を行い特記すべき副作用も認められず安全性を確認した。さらにYS110のGLP準拠のヒト及びカニクイザルの組織の組織交差反応でヒトの方が染色強度は強いもののほぼ同等に染色され前臨床試験にカニクイザルを用いた妥当性が示された。異種GVHDでYS110投与群はその有効性を示したが肝臓組織からのリンパ球をFACSで解析したところコントロール群ではCD26強陽性T細胞が著明に増加していたがYS110投与群ではこのサブセットは消失していた。さらに異種GVHDの皮膚組織で細胞障害性T細胞マーカーであるTIA-1陽性T細胞はコントロール群で著明に増加していたがYS110投与群ではほとんど存在していなかった。GVHD患者、クローン病患者の胃、腸管粘膜生検においてもCD26陽性T細胞が多数滲潤しておりCD26陽性T細胞がエフェクターとして働いている可能性が強く示唆された。GMPグレードでのYS110の作製もすでに終了し、安定性試験でも-20℃、18ヶ月安定であることを確認した。英国での臨床試験でTGN1412抗体投与で健常人にサイトカインストームが生じたがTGN1412抗体は固相化でIL-2、TNF-αなどのサイトカイン産生を生じるが、固相化CD26抗体ではサイトカイン産生を全く生じなかった。
結論
GLP準拠でYS110カニクイザルでの安全性を確認でき、GMPグレードのYS110も作製を完了し、現在難治性免疫病をターゲットにしたプロトコールを作製中で、できるだけ早期に臨床試験を施行したい。
公開日・更新日
公開日
2008-04-09
更新日
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