ナノ分子イメージングを活用した次世代創薬アプローチ

文献情報

文献番号
200712032A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノ分子イメージングを活用した次世代創薬アプローチ
課題番号
H19-ナノ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 望月直樹(国立循環器病センター研究所 循環器形部)
  • 若林繁夫(国立循環器病センター研究所 循環分子生理部)
  • 武田壮一(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
  • 平山令明(東海大学)
  • 増田道隆(国立循環器病センター研究所 循環器形部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんや循環器疾患の分子標的薬剤の開発に向けて、1)標的タンパクの分子構造解析に基づく薬剤探索(創薬スクリーニング)と、2)分子機能を蛍光イメージンングで評価する技術(薬効スクリーニング)を開発した。
研究方法
1)創薬スクリーニング:既に構造を決定したCalcineurin Homologus Protein (CHP2) の阻害剤の創製を目指す。CHP2はがん細胞に特異的に発現し、イオン交換輸送体(NHE)の活性化を通じて細胞内pHを上昇させてがん細胞の増殖機転を活性化する。次期創薬標的タンパクとして、ヘビ毒素中のRVV-X(Russell’s viper venom factor X activator)の構造を決定した。RVV-X は循環中で血液凝固第X因子(factorX)を活性化する。
2)薬効スクリーニング:新規GTP結合蛋白質Rit, Rinファミリーの機能を解析してあらたな分子標的治療薬の開発に繋げる研究を目指し、Ritが他の癌遺伝子Cdc42の水解促進に作用することを突き止めた。
結果と考察
1)創薬スクリーニング:CHP2蛋白質表面にある窪みから阻害剤結合部位を特定し、そこに結合する可能性の高い分子候補をプローブ化合物として選択した。プローブ化合物とCHP2結合部位のドッキング・シミュレーション等に基づいて大規模化合物ライブラリーから候補化合物を検索した。現在までに20種以上の化合物に対して生化学評価を行った。RVV-X はヒトADAMファミリータンパク様の重鎖(フックに相当)と二つのレクチン様の軽鎖(取っ手部)から構成され、factor X を補足するのに都合の良い分子形状を持つことを明らかにした。
2)薬効スクリーニング:RAドメインをもつ分子SNX27, AF6, PI3K, RalGEF, RGLなどとRitの結合を検討し、RGL3がRitの活性化を細胞内で検討するツールとして有用であることを解明した。Ritを細胞内で発現させるとRhoファミリー分子のCdc42のGAP活性が増加して、Cdc42が不活性化されることがわかった。
結論
本研究を通じて次世代創薬の基盤技術形成に貢献した。創薬スクリーニングではCHP2阻害剤の構造に基づく創薬手法の開発と次期標的として血液凝固因子の活性化に関する分子機構を解明した。薬効スクリーニングでは細胞内情報伝達に関する分子イメージング技術に成果を挙げた。

公開日・更新日

公開日
2008-03-11
更新日
-