がん診断・治療両用高分子ミセルターゲティングシステム

文献情報

文献番号
200712020A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診断・治療両用高分子ミセルターゲティングシステム
課題番号
H18-ナノ-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
横山 昌幸(財団法人神奈川科学技術アカデミー 高分子ナノメディカルプロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷 芳枝(星薬科大学 医薬品化学研究所)
  • 濱口 哲弥(国立がんセンター中央病院 総合病棟部)
  • 川上 茂(京都大学大学院 薬学研究科)
  • 川口 隆憲(福島県立医科大学 看護学部)
  • 堀 勝義(東北大学 加齢医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
48,994,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高感度MRI画像診断と非水溶性抗がん剤ターゲティングを同一原理かつ同時に施行できる高分子ミセルキャリヤーシステムを構築し、3年間の本申請研究終了時には、成果の前臨床試験開始を目指す。研究項目は以下の3つである。
1,高分子ミセルによる非水溶性抗がん剤の固形がんターゲティングシステム確立
2,分子標的薬と分化誘導剤封入高分子ミセルによる新規化学療法創成
3,微小がんを検出する高分子ミセルMRI造影剤の開発


研究方法
この目的に合致した高分子を自ら合成し、そこから作製した高分子ミセルへ各種薬物を封入したものを用いる。工学・薬学・医学の領域を連携させながら以下の項目の実験を推進する。
(1)高分子合成
(2)薬物の高分子ミセルへの封入及び物性評価
(3)抗がん剤(カンプトテシン)の生体内動態・抗がん活性評価
(4)レチノイン酸の生体内動態・抗がん活性評価(京都大学)
(5)高分子ミセルMRI画像剤(神奈川科学技術アカデミー及び星薬科大学)
(6)がん組織での病理解析、がん組織での分布
(7)がん組織への移行・浸透速度解析

結果と考察
得られた主な結果は以下の通りである。
・ポリエチレングリコールーポリアスパラギン酸エステルのブロックコポリマーを各種合成し、抗がん活性物質カンプトテシン、分化誘導剤レチノイン酸、4-HPR(レチノイン酸誘導体)の各薬剤を封入した高分子ミセルを作製した。マウスがん移植モデルにおいて固形がんへのターゲティングおよび抗がん活性の顕著な向上を得た。
・高分子ミセルMRI造影剤を作製し、投与24時間後に投与量の約20%が血中に存在する高い血中循環性を示し、マウス固形がんに高濃度で集積したMRI像を得た。
・ウインドゥチャンバー法解析によって、ラット移植がんモデルで高分子ミセルが正常組織よりもがん組織への高い濃度で集積することを定量的に証明した。同法によって、がん組織と正常組織の境界に存在する変性領域での特に高いミセル集積現象を発見した。
結論
薬物やMRI造影剤成分を封入した高分子ミセルの作製及びその固形がんへのターゲティングが滞りなく進展し、診断と治療が同時に可能なキャリヤーシステムの基本的設計が成された。また、がん組織の変性領域へのターゲティングという新しい方法が提起され、この点はMRI、体内分布解析、抗がん活性評価の多様な方法を組み合わせての解明が20年度に成される予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-