文献情報
文献番号
200712016A
報告書区分
総括
研究課題名
核酸をコアとするナノ微粒子による薬物・免疫治療システムの開発
課題番号
H17-ナノ-若手-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
西川 元也(京都大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、DNAをコアとしたナノ粒子を新たに設計・構築し、これに抗癌剤とCpGモチーフとを組み込むことで、化学療法及び免疫療法を同時に実現可能な治療システムの開発を試みた。
研究方法
3種類のODNを混合することでY-ODNを調製した。Y-ODNを順次結合し、デンドリマー様DNA(G3)を構築した。Y-ODN(CpG)を構成するODNを部分的あるいは完全にホスホロチオエート型に置換したY-ODNを調製した。CpG ODNをもとにコレステロール修飾体を合成した。ODNの見かけのサイズは光散乱光度法により、Y型形成及び血清中での安定性はポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した。マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7にODNを添加し、上清中サイトカイン濃度を測定した。DNAとドキソルビシン(DXR)とを混合することでDNA-DXR結合体を調製した。RAW264.7とマウス結腸癌細胞colon26/LucにDXRまたはDNA、DNA-DXRを添加後の癌細胞数を測定した。colon26/Luc担癌肝転移モデルマウスにDNAあるいはDXR、DNA-DXR結合体を静脈内投与後のIL-12濃度を測定した。
結果と考察
Y-ODN結合により約23nmのG3の形成が確認され、RAW264.7への添加により産生されるTNF濃度はY-ODNよりも有意に高いことが示された。CpG ODNの両末端から3個あるいは全てのリン酸結合をPS型とすることで、Y-ODNの血清中での安定性ならびにTNF産生量が増大した。CpGモチーフを含まないODNをPS型に置換した場合にはこうした効果は認められなかった。ODNへのコレステロールの導入により自己会合体の形成が確認され、CpG ODNのサイトカイン産生能が著しく増大した。CpG DNAの添加により、癌細胞増殖は若干抑制されたが、non-CpG DNA添加では抑制されなかった。DXR添加により癌細胞の増殖は顕著に抑制され、CpG DNAの併用によりその抑制効果は増大した。肝転移モデルマウスに対し、CpG DNAあるいはnon-CpG DNAを静脈内投与したところ、CpG DNA投与の場合に限り投与量依存的に血中IL-12濃度の上昇が観察された。
結論
CpGモチーフを含むDNAを用いることでTNFやIL-12などのTh1サイトカインを誘導可能であり、ODNのY型化、さらにはデンドリマー様構造体の構築により免疫活性化能の増大が得られた。また、DXRをDNAに結合することで高い抗腫瘍効果を得た。
公開日・更新日
公開日
2008-04-11
更新日
-