がん特異的増殖機能を有するウイルス製剤と高感度GFP蛍光検出装置を用いた体外超早期がん診断および体内微小リンパ節転移診断システムに関する研究

文献情報

文献番号
200712009A
報告書区分
総括
研究課題名
がん特異的増殖機能を有するウイルス製剤と高感度GFP蛍光検出装置を用いた体外超早期がん診断および体内微小リンパ節転移診断システムに関する研究
課題番号
H17-ナノ-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 俊義(岡山大学医学部・歯学部附属病院遺伝子・細胞治療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 紀章(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腫瘍制御学講座)
  • 浦田 泰生(オンコリスバイオファーマ)
  • 永井 勝幸(オンコリスバイオファーマ)
  • 河村 仁(オンコリスバイオファーマ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,982,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年増加を続けるがん患者の生存率や治療成績の向上には、早期発見、適格な悪性度の予知、適切な治療方針の決定が重要な因子となる。特に、微小リンパ節転移の検出は患者のQOLを重視した必要最小限の低侵襲外科手術の確立に役立つ。本研究では、テロメラーゼ活性依存性にがん細胞で選択的に増殖し、蛍光遺伝子GFPを発現する改変アデノウイルス製剤 TelomeScanを標識薬剤とし、高感度GFP蛍光検出装置を用いた微小がん組織診断用の外科手術ナビゲーション・システムを開発する。
研究方法
前年度までにTelomeScanを用いた微小がん組織の体内診断の可能性を検証し、またプローブ型高感度GFP蛍光検出装置の第1号試作機の操作性やGFP蛍光強度と検出感度との相関などを検討してきた。本年度は、プローブにレンズとLEDのみを内蔵し、イメージファイバーでつないだ本体にカラーCCDカメラを設置した第2号試作機を作成した。サイズは直径51mm、全長174mmの円錐形の先端を持つ円筒となり、格段の軽量化に成功した。さらに、ファイバーを軽量化して柔軟性を持たせ、撮像面積も約4倍(径6.6mm)に広げながらも34万画素の高解像度を維持した第3号試作機を作成した。
結果と考察
マウスを用いた実験では操作性とスキャン範囲は格段に向上しており、高感度に転移リンパ節を描出することが可能であった。第3号試作機を用いて大動物での実験を考えたが、担がん大動物を実験的に準備することは困難であるため、まずTelomeScanと同様の蛍光を発する蛍光ビーズを調達した。イヌの自然発症がんの治療の際に蛍光ビーズを腫瘍部に注入したところ、所属リンパ節での蛍光発現をプローブ型高感度GFP蛍光検出装置で観察することが可能であった。また、切除標本でより鮮明にリンパ節を感知することができ、さらに切除部位にリンパ節の遺残がないことも確認できた。すなわち、検出機器の感度と操作性を確かめることで臨床での有用性について検証することができたと考える。
結論
TelomeScanはリンパ節内の微小転移巣でがん細胞に感染・増殖して選択的にGFP蛍光を発するため、マウスモデルにおいては一定期間の後に転移リンパ節を可視化することが可能であった。プローブ型高感度GFP蛍光検出装置の第3号試作機によって、マウスモデルおよび大動物モデルにおいて、TelomeScanと同様の緑色蛍光を操作性よく、かつ高感度に検出・観察することが可能であった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200712009B
報告書区分
総合
研究課題名
がん特異的増殖機能を有するウイルス製剤と高感度GFP蛍光検出装置を用いた体外超早期がん診断および体内微小リンパ節転移診断システムに関する研究
課題番号
H17-ナノ-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 俊義(岡山大学医学部・歯学部附属病院遺伝子・細胞治療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 紀章(岡山大学大学院医歯学総合研究科 腫瘍制御学講座)
  • 浦田 泰生(オンコリスバイオファーマ)
  • 永井 勝幸(オンコリスバイオファーマ)
  • 河村 仁(オンコリスバイオファーマ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年増加を続けるがん患者の生存率や治療成績の向上には、早期発見、適格な悪性度の予知、適切な治療方針の決定が重要な因子となる。特に、微小リンパ節転移の検出は患者のQOLを重視した必要最小限の低侵襲外科手術の確立に役立つ。本研究では、テロメラーゼ活性依存性にがん細胞で選択的に増殖し、蛍光遺伝子GFPを発現する改変アデノウイルス製剤TelomeScanを標識薬剤とし、高感度GFP蛍光検出装置を用いた微小がん組織診断用の外科手術ナビゲーション・システムを開発する。
研究方法
初年度には、TelomeScanウイルス製剤の作成と基本的な機能解析を行い、フィージビリティー・スタディーとして本研究の可能性を検討した。次年度は、さらにTelomeScanの機能を詳細に検討するとともに、プローブ型高感度GFP蛍光検出装置の試作とその機能の検討を行った。最終年度には、試作機を用いて大動物での実験を考えたが、担がん大動物を実験的に準備することは困難であった。そこで、TelomeScanと同様の蛍光を発する蛍光ビーズを用いて担がんイヌの手術の際に患部に注入し、試作機にて所属リンパ節の蛍光を確認しながら切除を行うセンチネル・ナビゲーション手術を試みた。
結果と考察
TelomeScanを原発腫瘍内に局所投与すると、リンパ流を経由して所属リンパ節へ到達し、リンパ節内の微小転移巣でがん細胞に感染・増殖して選択的にGFP蛍光を発するため、マウスモデルにおいては一定期間の後に転移リンパ節を可視化することが可能であった。プローブ型高感度GFP蛍光検出装置の試作についても、第1号機から第3号機へと改良が進むにつれ、サイズ・重量の軽減やイメージファイバーの柔軟性の実現によって操作性が格段に向上した。また、撮像面積の拡大にも成功し、脱着式プローブ外套を設けることで清潔操作にも対応可能となった。実際に、マウスモデルおよび大動物モデルにおいて、TelomeScanと同様の緑色蛍光を発する蛍光ビーズが集積したリンパ節を操作性よく、かつ高感度に検出することが可能であり、第3号試作機は医療機器としての完成度は高いと言える。
結論
テロメラーゼ活性依存性にがん細胞で選択的に増殖して蛍光遺伝子GFPを発現する改変アデノウイルス製剤TelomeScanは、標識薬剤として微小リンパ節転移検出外科手術ナビゲーション・システムに応用可能であり、高感度にその蛍光を検出するプローブ型検出器を開発することができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200712009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
TelomeScanを原発腫瘍内に局所投与すると、リンパ流を経由して所属リンパ節へ到達し、リンパ節内の微小転移巣でがん細胞に感染・増殖して選択的にGFP蛍光を発するため、マウスモデルにおいては一定期間の後に転移リンパ節を可視化することが可能であった。すなわち、ウイルス製剤を標識薬剤としてがん細胞を選択的に可視化するという試みは現実的であり、その成果はNature Medicineに掲載され大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
TelomeScanの原発巣内投与による所属リンパ節内の転移結節の可視化が可能であった事実は、本技術の原理の証明(proof of concept)であり、かつブローブ型高感度GFP蛍光検出装置の作成に成功したことから、本技術はより臨床応用に近づいたと言える。外科手術における低侵襲化、機能温存は近年注目されており、本研究成果の臨床応用は術後の患者の生活の質(QOL、quality of life)の改善につながると期待される。
ガイドライン等の開発
本研究は臨床応用のための前臨床研究であり、ガイドライン等の作成にはまだ反映されていない。しかし、将来的には低侵襲手術による患者QOLの向上に役立つと期待され、ガイドライン等の開発にも貢献できると考える。
その他行政的観点からの成果
転移リンパ節を術中にリアルタイムに同定する方法は、現在のところまだ確立された技術は存在しない。縮小手術による低侵襲化を目指す場合に転移リンパ節の有無は重要な指標となり、本技術により転移リンパ節そのものを検出することができれば、外科手術の際のリンパ節廓清範囲決定の有効な指標となると思われる。本研究成果の臨床応用は社会的にも極めて重要であり、将来の国民の保健医療の向上に貢献すると期待される。
その他のインパクト
蛍光遺伝子を発現するウイルス製剤に関しては、国内および国際特許申請を行っている。また、ウイルスで微小リンパ節転移を可視化する技術に関する論文発表は、新聞、ニュースなどのマスメディアで「光るがん」として紹介され、社会的にも大きなインパクトを与えた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
50件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Taki, M., Kagawa, S., Nishizaki, M., et al.
Enhanced oncolysis by a tropism-modified telomerase-specific replication selective adenoviral agent OBP-405 ("Telomelysin-RGD").
Oncogene , 24 , 3130-3140  (2005)
原著論文2
Tokunaga, N., Murakami, T., Endo, Y., et al.
Human monocyte-derived dendritic cells pulsed with wild-type p53 protein efficiently induce cytotoxic T-lymphocytes against p53-overexpressing human cancer cells.
Clinical Cancer Research , 11 , 1312-1318  (2005)
原著論文3
Teraishi, F., Kagawa, S., Watanabe, T.,
ZD1839 (Gefitinib, 'Iressa'), an epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitor, enhances the anti-cancer effects o TRAIL in human esophageal squamous cell carcinoma.
FEBS Letters , 579 , 4069-4075  (2005)
原著論文4
Watanabe, T., Hioki, M., Fujiwara, T., et al.
Histone deacetylase inhibitor FR901228 enhances the antitumor effect of telomerase-specific replication-selective adenoviral agent OBP-301 in human lung cancer cells.
Experimental Cell Research , 312 , 256-265  (2006)
原著論文5
Fujiwara, T., Tanaka, N., Kanazawa, S.,
Multicenter phase I study of repeated intratumoral delivery of adenoviral p53 (ADVEXIN) in patients with advanced non-small cell lung cancer.
Journal of Clinical Oncology , 24 , 1689-1699  (2006)
原著論文6
Fujiwara, T., Kagawa, S., Kishimoto, H., et al.
Enhanced antitumor efficacy of telomerase-selective oncolytic adenoviral agent (OBP-401) with docetaxel: Preclinical evaluation of chemovirotherapy.
International Journal of Cancer , 119 , 432-440  (2006)
原著論文7
Kishimoto, H., Kojima, T., Watanabe, Y., et al.
In vivo imaging of lymph node metastasis with telomerase-specific replication-selective adenovirus.
Nature Medicine , 12 , 1213-1219  (2006)
原著論文8
Endo, Y., Sakai, R., Ouchi, M., et al.
Virus-mediated oncolysis induces danger signal and stimulates cytotoxic-T-lymphocyte activity via proteasome activator upregulation.
Oncogene  (2007)
原著論文9
Hashimoto, Y., Watanabe, Y., Shirakiya, Y., et al.
Establishment of Biological and Pharmacokinetic Assays of Telomerase-Specific Replication-Selective Adenovirus (TRAD).
Cancer Science , 99 , 385-390  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-