シュガーチップを用いた検査・診断技術の開発

文献情報

文献番号
200712004A
報告書区分
総括
研究課題名
シュガーチップを用いた検査・診断技術の開発
課題番号
H17-ナノ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
隅田 泰生(国立大学法人鹿児島大学 大学院理工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥野 寿臣(兵庫医科大学 )
  • 片桐 秀樹(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 石田 秀治(岐阜大学 応用生物学部)
  • 加藤 啓子(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科)
  • 奥 直人(静岡県立大学 薬学部)
  • 有馬 直道(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小川 智央(株式会社 モリテックス)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
42,488,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
構造明確な糖鎖を固定化したバイオデバイス「シュガーチップ」および糖鎖固定化金ナノ粒子「SGNP」を用いて迅速な検査・診断や病原因子の解明を行う先端医療技術の開発を行う。
研究方法
総数約70種のシュガーチップ、また13種の糖鎖固定化金ナノ粒子(SGNP)を利用し、糖鎖−蛋白質相互作用の解析とレクチン等の迅速な同定・精製を行う。
結果と考察
ヘパリン部分二糖構造を有するオリゴ糖4種、コンドロイチン硫酸基本二糖構造を有するオリゴ糖4種の合成を達成し、さらにシュガーチップ化とSGNP化を行った。一連のシアル酸含有オリゴ糖やその誘導体を化学合成法、または酵素法によって種々合成し、同様にシュガーチップとSGNPを調製した。8種の糖鎖を固定化したアレイタイプシュガーチップによって、約20種類のインフルエンザ株の糖鎖への相対結合活性を調べ、総数394個のデータを得た。それらをユークリッド距離情報としてデータベース化し、さらにウイルス株の識別を行うためのインフォマティクス開発を開始した。精度80%で、インフルエンザウイルス株の予測ができることがわかった。ヘルペスウイルスのアクセプターとなるヘパリンを固定化したSGNPを用いて、ウイルスの捕捉・濃縮を試みた。約1000倍の濃縮が可能であり、捕捉したウイルスは感染性を保っていることが分かった。東北大学医学部倫理委員会の承認のもと、糖尿病患者をその合併症である網膜症・腎症・神経障害や動脈硬化による虚血性疾患の病期に応じて分類し、その血清をアレイ型のシュガーチップを用いて、病状の進行状況による結合パターンの違いを網羅的に調べた。また、これら網羅的解析から、有望と思われる数種の糖鎖を選択し、糖尿病モデルマウスのβ細胞、またはその培養細胞(MIN6)に存在して、これらの糖鎖に強く結合する蛋白質の解析を開始した。てんかんモデルマウスで発現が変動するST3Gal IV遺伝子のエンドプロダクトに結合する蛋白質の同定を、シアル酸含有オリゴ糖鎖を固定化したSGNPと質量分析を用いて行った。複数の蛋白質が候補として見かった。光ファイバーを用いた簡易型多検体SPR同時測定装置を8チャンネル化することに成功した。
結論
研究はほぼ予定通りに進行し、特にウイルスについては期待以上の成果が出た。今後、HCVやHIV等喫緊の厚生労働行政課題の解決に向けて技術を発展させる予定。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200712004B
報告書区分
総合
研究課題名
シュガーチップを用いた検査・診断技術の開発
課題番号
H17-ナノ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
隅田 泰生(国立大学法人鹿児島大学 大学院理工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥野 寿臣(兵庫医科大学)
  • 片桐 秀樹(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 石田 秀治(岐阜大学 応用生物科学部)
  • 加藤 啓子(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科)
  • 奥 直人(静岡県立大学 薬学部)
  • 有馬 直道(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小川 智央(株式会社 モリテックス)
  • 堂浦 克美(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 山田 雅雄(株式会社 モリテックス)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖鎖とその作用相手との結合相互作用を解析するために開発したバイオナノデバイス「シュガーチップ」および糖鎖固定化金ナノ粒子「SGNP」を用いて迅速な検査・診断や病原因子の解明を行う先端医療技術の開発を行う。
研究方法
「ハード開発班」として、隅田、石田、小川、山田、「医療への応用班」として片桐(糖尿病)、奥野および有馬(ウイルス)、奧(癌)、堂浦および加藤(神経コンフォメーション病等脳疾患)が担当した。

結果と考察
隅田:GAG部分糖鎖構造を合成し、さらにリガンド複合体を調製した。アレイ型のシュガーチップを用いて、糖鎖への相対結合性に基づくウイルス識別法の開発を行った。SPR/MS連続分析法を開発し、未知蛋白質の選択的分離同定を可能とした。
石田:シアロ糖鎖の効率的な合成法を確立して系統的な合成を進め、シアリルα2-4/8シアル酸、α-GalNAc配糖体、GM2類縁体等を合成した。
山田・小川:測定光学系が簡単でセンシング部が小さく微量サンプルの測定も可能である光ファイバーを用いた局在プラズモン共鳴(LPR)測定装置の試作機を開発した。
堂浦:ヘパリン部分構造とプリオン蛋白質が強い親和性で結合すること、ヘパリンとの相互作用部位がプリオン蛋白質側のN末端ドメインであることを明らかとした。
片桐:糖尿病性合併症の患者血清を用いてシュガーチップによる糖鎖結合蛋白の網羅的な解析を行った。
加藤:てんかん発症に連動して著しい発現の亢進を示す内在性レクチンの存在を明らかにした。
奥野:アレイ型シュガーチップを用いて、21株のインフルエンザウイルス株の結合特性を調べてデータベース化し、ウイルス株識別のためのインフォマティクス解析を行った。SGNPを用いてヘルペスウイルスを従来法の約1000倍の超高感度で検出できた。
奧:担がんマウスを作製し、その血清からアルブミンを除去し、シュガーチップによる探索を試みたが、特定マーカーの発見には至らなかった。
有馬:AATL細胞であるS1TFをマウスに免疫し、糖鎖を認識する抗体2クローンを得、細胞結合性と糖鎖の結合性を検討した。
結論
医工学連携である本プロジェクトは、年2回の班会議などを通じて班員が有機的に連携出来た結果、当初予想していた以上の成果がでた。さらに研究を進めて、我国の厚生労働行政における喫緊の課題解決に貢献したいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200712004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
糖鎖固定化金ナノ粒子(SGNP)を用いたウイルスの選択的濃縮が可能であることを見いだし、戸外やベッドサイドなど機器が使用できないサンプル収集場所で行うon-site分析が可能であることを示唆する基礎的データを得た。モデル動物から実際の患者サンプルまでを用い、糖尿病やその合併症の新たな診断、および治療法の開発に向けた検討を発展させることができた。
臨床的観点からの成果
インフルエンザウイルス株の糖鎖結合活性をデータベース化し、さらにウイルス株識別のためのインフォマティクス解析を行い、的中率80%でインフルエンザウイルス株の予測ができた。また、ヘパリン固定化金ナノ粒子を用いてヘルペスウイルスを濃縮し、従来のPCR法の1000倍もの高感度でウイルスを検出する方法を見いだした。これらは、ウイスル性疾患の臨床検査・診断に新しい道を開いたものである
ガイドライン等の開発
無し
その他行政的観点からの成果
無し
その他のインパクト
肥満・糖尿病については、体内の備わった過栄養時の肥満を防ぐ機構を発見し、その機構の慢性的な活性化が、肥満時における高血圧の発症に関与することを見出し、Science誌に発表した(Vol. 312, 1656-1659, 2006)。この機序は、メタボリックシンドロームの病態の理解および新しい治療法開発のターゲットになりうるものである。シュガーチップやSGNPについては、ベンチャー会社によって製品化が達成され、日刊工業新聞等のマスコミに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
23件
原著論文(英文等)
82件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
154件
学会発表(国際学会等)
55件
その他成果(特許の出願)
3件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
S. Nakamura-Tsuruta, Y. Suda, et al.
One-Step Purification of Lectins from Banana Pulp Using Sugar-immobilized Gold Nano-Particles (SGNPs)
Journal of Biochemistry  (2008)
原著論文2
Ishikawa K, Doh-ura K, et al.
Styrylbenzoazole derivatives for imaging of prion plaques and treatment of transmissible spongiform encephalopathies
J. Neurochem. , 99 , 198-205  (2006)
原著論文3
Sasaki K, Doh-ura K, et al.
Clusterin expression in follicular dendritic cells associated with prion protein accumulation
J. Pathol. , 209 (4) , 484-491  (2006)
原著論文4
Kawatake S, Doh-ura K, et al.
Surface plasmon resonance analysis for the screening of anti-prion compounds
Biol. Pharm. Bull. , 29 (5) , 927-932  (2006)
原著論文5
Sasaki K, Doh-ura K, et al.
Fatal familial insomnia with an unusual prion protein deposition pattern: an autopsy report with an experimental transmission study
Neuropathol. Appl. Neurobiol. , 31 (1) , 80-87  (2005)
原著論文6
Imamura, A., Suda, Y., Ishida, H., et al.
Design and synthesis of versatile ganglioside probes for carbohydrate microarrays
Glycoconjugate J. , 25 , 269-278  (2008)
原著論文7
A. Ozaki, N. Arima, et al.
Cyclosporin A inhibits HTLV-1 Tax expression and shows anti-tumor effects in combination with VP-16
Journal of Medical Virology , 79 , 1906-1913  (2007)
原著論文8
M. Akimoto, N. Arima, et al.
Anti-HTLV-1 Tax antibody and Tax-specific cytotoxic T lymhocyte are associated with a reduction in HTLV-1 proviral load in asymptomatic carriers
Journal of Medical Virology , 79 , 977-986  (2007)

公開日・更新日

公開日
2017-06-20
更新日
-