トキシコゲノミクスのための遺伝子ネットワーク解析法の開発

文献情報

文献番号
200708011A
報告書区分
総括
研究課題名
トキシコゲノミクスのための遺伝子ネットワーク解析法の開発
課題番号
H17-トキシコ-若手-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
奥野 恭史(京都大学 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、化合物による生体系への影響を、薬物作用遺伝子群や毒性関連遺伝子群の遺伝子発現ネットワークの変動として解析する高精度な薬物安全評価アルゴリズムの開発と実用化を目的としている。すなわち、化合物を作用させた各種細胞のDNA マイクロアレイ実験による網羅的遺伝子発現データから、バイオインフォマティクス手法によって薬物毒性特有の遺伝子発現ネットワークを構築し、薬物毒性を反映する遺伝子ネットワークのパターンとして薬物安全性を評価するトキシコゲノミクス計算法の確立を目指す。
最終年度となる平成19年度には、先の2年間で開発検討行ってきたネットワーク解析手法の有効性の評価とそれによる毒性メカニズムの解明を目指す。
研究方法
1)チアゾリジン系薬物作用遺伝子ネットワークの構築
2)薬物作用遺伝子ネットワーク解析手法による毒性評価
3)毒性特異的遺伝子ネットワーククラスターの実験検証
結果と考察
項目番号は、上記方法記載の項目に対応している。
1)トログリタゾンとピオグリタゾンのマイクロアレイデータにおいて、各濃度の時系列について発現量が3倍以上変動した遺伝子1,428個において遺伝子ネットワークの構築を行い、薬物及び薬物濃度間における遺伝子ネットワークの変動を解析した。
2)トログリタゾン毒性濃度においては、高いエッジ数を持つノードが増大し、ランダムネットワーク性が増大することが確認された。
3)トログリタゾンによる肝毒性特異的な遺伝子ネットワーククラスターとして選定された遺伝子群が、本検証実験系においても協調的に細胞増殖を抑制していることが示唆された。
結論
ヒト肝癌由来細胞株であるHepG2細胞を用いて、肝毒性を有するインスリン抵抗性改善薬トログリタゾンおよび、同じチアゾリジン系抗糖尿病薬物であるが肝毒性が少ないとされるピオグリタゾンのそれぞれの薬効ならびに肝毒性を評価するために、マイクロアレイデータから遺伝子ネットワークの構築を行った。その結果、トログリタゾンの薬物細胞毒性に特異的な遺伝子ネットワーククラスターを見いだし、WST-1検証実験を行うことにより、毒性関連遺伝子群の同定に成功した。今回開発した遺伝子ネットワーク解析法は、GEM-TRENDシステムとして次のURLよりWeb公開も行っている。http://cgs.pharm.kyoto-u.ac.jp/services/network/

公開日・更新日

公開日
2008-06-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200708011B
報告書区分
総合
研究課題名
トキシコゲノミクスのための遺伝子ネットワーク解析法の開発
課題番号
H17-トキシコ-若手-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
奥野 恭史(京都大学 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、薬物標的分子や毒性原因遺伝子などの単一遺伝子(タンパク質) を対象にした従来の解析手法から逸脱し、化合物による生体系への影響を薬物作用遺伝子群や毒性関連遺伝子群の遺伝子発現ネットワーク(分子ネットワーク) の変動として解析する高精度な薬物安全評価アルゴリズムの開発と実用化を目的としている。すなわち、化合物を作用させた各種細胞のDNA マイクロアレイ実験による網羅的遺伝子発現データから、バイオインフォマティクス手法によって薬物毒性特有の遺伝子発現ネットワークを構築し、薬物毒性を反映する遺伝子ネットワークのパターンとして薬物安全性を評価するトキシコゲノミクス計算法の確立を目指す。
研究方法
1)基準細胞と基準薬物の選択
2)肝毒性評価系の構築およびマイクロアレイ実験データの収集
3)チアゾリジン系薬物作用遺伝子ネットワークの構築
4)薬物作用遺伝子ネットワーク解析手法による毒性評価
5)毒性特異的遺伝子ネットワーククラスターの実験検証
結果と考察
項目番号は、上記方法記載の項目に対応している。
1)基準細胞と基準薬物の選択するためにGLIDAデータベースを開発した。(http://gdds.pharm.kyoto-u.ac.jp/services/glida)
2)WST-1細胞増殖測定し、PPARγに対するトログリタゾンとピオグリタゾンのEC50から、HepG2細胞に対するトログリタゾンの毒性用量としては100 µM、薬効(非毒性)用量としては3 µMと決定し、マイクロアレイ解析を行った。
3)トログリタゾンとピオグリタゾンのマイクロアレイデータにおいて、各濃度の時系列について発現量が3倍以上変動した遺伝子1,428個において遺伝子ネットワークの構築を行い、薬物及び薬物濃度間における遺伝子ネットワークの変動を解析した。
4)トログリタゾン毒性濃度においては、高いエッジ数を持つノードが増大し、ランダムネットワーク性が増大することが確認された。
5)トログリタゾンによる肝毒性特異的な遺伝子ネットワーククラスターとして選定された遺伝子群が、本検証実験系においても協調的に細胞増殖を抑制していることが示唆された。
結論
上述の通り、糖尿病治療薬トログリタゾン、ピオグリタゾンの肝毒性評価系を用いて、トキシコゲノミクスのための遺伝子発現ネットワーク解析法を開発することに成功した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200708011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、糖尿病治療薬トログリタゾン、ピオグリタゾンの肝毒性評価系を用いて、トキシコゲノミクスのための遺伝子発現ネットワーク解析法を開発することに成功した。薬物の毒性評価に遺伝子発現ネットワーク解析法を適用した例は、世界で初めてであり、学術的に高い成果を得た。
臨床的観点からの成果
本研究では、肝臓における薬物毒性発現の分子メカニズムを明らかにするため、肝毒性を有する薬物として劇症肝炎などの肝障害を引き起こしたため臨床での使用が中止されたトログリタゾンを用い、また、肝毒性のネガティブコントロールとして、トログリタゾンと同じくPPAR-gammaのリガンドであり、チアゾリジン骨格を有するインスリン抵抗性改善薬であるが、肝毒性が少ないとされているピオグリタゾンを用いた。このように実際の医薬品での肝毒性予測を問題にしたテーマであり、臨床への有用な知見を提供するものを思われる。
ガイドライン等の開発
ガイドラインの開発では無いが、本研究において開発したトキシコゲノミクスのための遺伝子発現ネットワーク解析法が一般の研究者に広く用いられるように、GEM-TRENDシステムとして次のURLよりWeb公開も行っている。http://cgs.pharm.kyoto-u.ac.jp/services/network/
その他行政的観点からの成果
研究代表者は、H19年度より独立行政法人 医薬基盤研究所 トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)の特別研究員として当該プロジェクトに参画している。従って、本研究において開発された方法論、ノウハウは、TGP2に随時反映していく。
その他のインパクト
該当事項無し。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
1件
Pharma VISION NEWS No.9(February 2007)
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
23件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okuno, Y., Tamon, A., Yabuuchi, H., and et al.
GLIDA: GPCR-Ligand Database for Chemical Genomics Drug Discovery - Database and Tools Update.
Nucleic Acids Research , 36 , 907-912  (2008)
原著論文2
Osada, S., Naganawa, A., Misonou, M., and et al.
Altered gene expression of transcriptional regulatory factors in tumor marker-positive cells during chemically induced hepatocarcinogenesis.
Toxicology Letters , 167 , 106-113  (2006)
原著論文3
Okuno, Y., Yang, J., Taneishi, K., and et al.
GLIDA: GPCR-Ligand database for Chemical Genomic Drug Discovery
Nucleic Acids Research , 34 , 673-677  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-