小胞体ストレスによるインスリン分泌障害と糖尿病治療法開発

文献情報

文献番号
200707040A
報告書区分
総括
研究課題名
小胞体ストレスによるインスリン分泌障害と糖尿病治療法開発
課題番号
H19-ゲノム-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岡 芳知(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 片桐 秀樹(東北大学大学院医学系研究科)
  • 谷澤 幸生(山口大学大学院医学系研究科)
  • 浅野 知一郎(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
36,890,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現代の飽食と運動不足はインスリン分泌を強要する。この環境下で膵β細胞の小胞体ストレスが過大となると細胞はアポトーシスに陥る。2型糖尿病でのβ細胞数減少が世界で広く認識されるようになり、膵β細胞のアポトーシスを惹起する小胞体ストレスに焦点をあてることが、最近の糖尿病増加を解く鍵と考える。
研究方法
1)膵β細胞の小胞体ストレス応答機構の解明から創薬ターゲットを見出す
2)肥満糖尿病モデルマウスを用いて臓器間代謝情報ネットワーク機構を見出す
3)ウオルフラム症候群モデルであるWFS1欠損マウスを用いた治療法開発
4)易糖尿病発症者簡易抽出システムの確立のための候補遺伝子とそのSNP同定
結果と考察
慢性小胞体ストレス下での4EBP1の膵β細胞保護作用を発見
eukaryotic initiation factor 4E (eIF4E)-binding protein (4E-BPs)のアイソフォームである4E-BP1の発現が、小胞体ストレスで増加する転写因子ATF4の制御下にあり、膵β細胞をアポトーシスから保護している。
臓器間代謝情報ネットワーク:自律神経系による全身のエネルギー代謝恒常性維持機構を解明
肝臓へのPPARγ2発現にて、基礎代謝の増加、末梢インスリン抵抗性の改善、耐糖能の改善を認め、この効果は自律神経系を介するものであり、膵β細胞の小胞体ストレスを減少させる手法となる。
WFS1欠損マウスの膵β細胞アポトーシスを防ぐ:発現誘導される分子Adm
小胞体ストレスがさらに負荷されるwfs1欠損agoutiマウスでは、インスリン抵抗性改善薬の投与によりβ細胞のアポトーシスが回避され、糖尿病発症はほぼ完全に抑制された。
易糖尿病発症者簡易抽出システムの確立への糖尿病関連遺伝子SNPの検出
遺伝因子が濃厚な35歳以下発症2型糖尿病患者でゲノムワイドのSNP解析を実施し、有力なSNPが数10個見出された。
結論
翻訳抑制因子4EBP1が、慢性小胞体ストレス下で膵β細胞を保護することを世界で初めて見出した。この発見は、従来の薬剤にはない全く新しい糖尿病治療薬の開発につながることが期待できる。また、神経系による臓器間ネットワークにより、各臓器の代謝が調節されていることを発見したが、この機構を利用して膵β細胞を増加させる、きわめて斬新な治療法開発が視野に入ってきた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-