文献情報
文献番号
200707019A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子治療を目指した新規バキュロウイルスベクターの開発
課題番号
H17-遺伝子-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 善治(大阪大学微生物病研究所分子ウイルス分野)
研究分担者(所属機関)
- 森石 恆司(大阪大学微生物病研究所分子ウイルス分野 )
- 武田 直和(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
31,739,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
遺伝子治療の成否を握るのは、安全に効率よく標的細胞へ遺伝子を導入でき、しかも大きな組み込み容量を持った遺伝子導入ベクターの開発である。本研究はバキュロウイルスの特性を高度に利用して、持続感染症やがんに対する遺伝子治療用のベクターの開発を目的とする。
研究方法
1) バキュロウイルスベクターを用いて、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した細胞特異的にインターフェロン(IFN)を誘導させてウイルスの排除を試みた。2) E型肝炎ウイルス様粒子(HEV-LP)を改変して目的蛋白質を粒子の表面あるいは内部に発現させてキメラ粒子の作製が試みられてきたが、生産性の低下が大きな問題となっている。そこで、外来蛋白質の挿入部位と容量を効率よく設計できるように、遺伝子型IIIのHEV-LPの結晶構造を解析した。3) 遺伝子型IのHEV ORF2蛋白のN末端から111アミノ酸を欠失させ、外来性蛋白領域を担う遺伝子を同じ向きに連結したクローンを作製した。
結果と考察
1) HCVのプロテアーゼによって特異的に認識される最適配列を決定した。IFN調節遺伝子を搭載した組換えバキュロウイルスをHCVゲノムが自立複製しているレプリコン細胞に感染させると、容量依存的にHCV RNAの複製抑制が観察された。2) HEV-LPの結晶化に成功し、その構造を解析した。我が国での感染が問題となっている遺伝子型III型HEV-LPの三次元構造が解けたことは、この粒子を用いた遺伝子デリバーシステムやワクチンベクターの開発における波及効果は計り知れない物がある。3) 1型HEV ORF2のN末端から111あるいは124アミノ酸を種々の長さのORF3、あるいは2型ブタサーコウイルス(PCV2)構造蛋白に置き換えたコンストラクトを組換えバキュロウイルスで発現した。今後、同様な手法で外来蛋白挿入できる最適な条件を見いだし、キメラHEV-LPを作製するとともに、構造解析を進めていきたい。4) ORF2の全長を発現したところ、直径35-38nmのネイティブなウイルス粒子とほぼ同じ直径を有する粒子が多数観察された。この粒子内部にはHEV特異的な配列を持つ核酸が取り込まれていた。
結論
1) HCV感染細胞でのみ効率よく活性化されるように設計した組換えバキュロウイルスを構築した。2) HEV-LPの結晶構造の解析に成功した。3) HEV-LP形成に必須なアミノ酸領域を同定した。N末端に連結した外来性構造蛋白を組換えバキュロウイルスで発現することによって、キメラHEV粒子を作製することができた。
公開日・更新日
公開日
2008-03-12
更新日
-