乳癌患者における抗体療法の効果・副作用規定因子の探索

文献情報

文献番号
200707016A
報告書区分
総括
研究課題名
乳癌患者における抗体療法の効果・副作用規定因子の探索
課題番号
H17-ファーマコ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 康弘(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 史明(国立がんセンター研究所 腫瘍ゲノム解析・情報研究部)
  • 西尾 和人(近畿大学医学部 ゲノム生物学教室)
  • 田村 研治(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部 通院治療センター)
  • 関島 勝(株式会社三菱化学安全科学研究所 鹿島研究所先端技術研究部)
  • 青儀 健二郎(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター)
  • 木下 貴之(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
  • 清水 千佳子(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
35,558,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳癌治療におけるキードラッグであるトラスツズマブ(抗HER2モノクローナル抗体)の効果予測因子を同定する。
研究方法
HER2過剰発現乳癌患者を対象とした前向き臨床試験から得られた腫瘍検体又は末梢血液検体を用いて解析を行う。マイクロアレイを用いた約54,000個の遺伝子発現解析、トラスツズマブの糖鎖修飾に関連する酵素の血清内活性の定量化、血漿中タンパクのN型糖鎖の解析、抗体受容体(FcR)や糖鎖修飾関連酵素の遺伝子多型解析、HER2遺伝子変異解析などを行う。これらの結果と、病理学的完全寛解率(pCR)、奏効率、無再発生存期間、無増悪生存期間、全生存期間などの臨床情報との相関性を検討する。
結果と考察
FcγRIIIa-158 valine (V)/phenylalanine (F)の多型において、V/VのHome型がHetero型およびWild型と比較して、トラスツズマブを含む術前化学療法(N)症例におけるpCRや、進行・再発乳癌(M)症例におけるトラスツズマブの奏効が高い傾向にあった。M症例において、血清中フコシダーゼ活性値が高い群は低い群と比較し有意な無増悪期間の延長が得られた。又、血漿中タンパクのN型糖鎖解析では35種類の糖鎖が得られ、2534糖鎖が高い群では有意にトラスツズマブの奏効が高く、又、有意な無増悪期間の延長を認めた。さらに、マイクロアレイによる遺伝子発現解析により、N症例においてpCRと相関する遺伝子候補プロファイルを、M症例において奏効と相関する遺伝子候補プロファイルをそれぞれ同定した。糖鎖修飾酵素や血漿中タンパクのN型糖鎖の定量化の確立は、他の抗体薬のバイオマーカー研究にも貢献する。臨床検体を用いたマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイル解析は、国内の乳がん領域での報告は希少であり、特に末梢血液を用いた再現性のある方法の確立は貴重な研究成果と言える。抗体受容体部分(FcγRIIIa-158)の多型は、セツキシマブなどでも報告のある部位であり信憑性が高い。2534糖鎖は、奏効および無増悪生存期間に差を認めpredictive markerとして期待される。
結論
トラスツズマブの臨床効果を予測するバイオマーカー候補をいくつかのアッセイ系より同定した。得られたバイオマーカーについては、新たな前向き臨床試験において検証する予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200707016B
報告書区分
総合
研究課題名
乳癌患者における抗体療法の効果・副作用規定因子の探索
課題番号
H17-ファーマコ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 康弘(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 史明(国立がんセンター研究所 腫瘍ゲノム解析・情報研究部)
  • 西尾 和人(近畿大学医学部 ゲノム生物学教室)
  • 田村 研治(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部 通院治療センター)
  • 関島 勝(株式会社三菱化学安全科学研究所 鹿島研究所先端技術研究部)
  • 青儀 健二郎(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター)
  • 木下 貴之(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
  • 清水 千佳子(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳癌治療におけるキードラッグであるトラスツズマブ(抗HER2モノクローナル抗体)の効果予測因子を同定する。
研究方法
HER2過剰発現乳癌患者を対象とした前向き臨床試験から得られた腫瘍検体又は末梢血液検体を用いて解析を行う。マイクロアレイを用いた約54,000個の遺伝子発現解析、トラスツズマブの糖鎖修飾に関連する酵素の血清内活性の定量化、血漿中タンパクのN型糖鎖の解析、抗体受容体(FcR)や糖鎖修飾関連酵素の遺伝子多型解析、HER2遺伝子変異解析などを行う。これらの結果と、病理学的完全寛解率(pCR)、奏効率、無再発生存期間、無増悪生存期間、全生存期間などの臨床情報との相関性を検討する。
結果と考察
FcγRIIIa-158 valine (V)/phenylalanine (F)の多型において、V/VのHome型がHetero型およびWild型と比較して、トラスツズマブを含む術前化学療法(N)症例におけるpCRや、進行・再発乳癌(M)症例におけるトラスツズマブの奏効が高い傾向にあった。M症例において、血清中フコシダーゼ活性値が高い群は低い群と比較し有意な無増悪期間の延長が得られた。又、血漿中タンパクのN型糖鎖解析では35種類の糖鎖が得られ、2534糖鎖が高い群では有意にトラスツズマブの奏効が高く、又、有意な無増悪期間の延長を認めた。さらに、マイクロアレイによる遺伝子発現解析により、N症例においてpCRと相関する遺伝子候補プロファイルを、M症例において奏効と相関する遺伝子候補プロファイルをそれぞれ同定した。糖鎖修飾酵素や血漿中タンパクのN型糖鎖の定量化のアッセイ系の確立は、他の抗体薬のバイオマーカー研究にも貢献する。臨床検体を用いたマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイル解析は、国内の乳がん領域での報告は希少であり、末梢血液を用いた方法の確立は貴重な研究成果と言える。抗体受容体部分(FcγRIIIa-158)の多型は、セツキシマブなどでも報告のある部位であり信憑性が高い。2534糖鎖は、奏効および無増悪生存期間に差を認めpredictive markerとして期待される。
結論
トラスツズマブの臨床効果を予測するバイオマーカー候補をいくつかのアッセイ系より同定した。得られたバイオマーカーについては、新たな前向き臨床試験において検証する予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200707016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HER2強発現乳がんに対するトラスツズマブの臨床効果には差異がある。本薬は抗体医薬であり、ADCC活性がその抗腫瘍効果に影響を与える可能性が示唆されている。本研究の成果の内、ADCC活性に関連すると思われる、1)血清内フコシダーゼ活性 2) 血漿中タンパクのN型糖鎖(2534糖鎖)3) 抗体受容体の遺伝子多型などがトラスツズマブの臨床効果と相関するというデータはこの仮説を支持し新規性がある。又、末梢血液を用いたマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイル研究は希少であり、臨床応用が期待される。
臨床的観点からの成果
トラスツズマブは進行・再発乳がんのみならず、術後補助療法に対しても昨今適応拡大された。又、術前化学療法においても有望な成績を示している。近い将来承認されるHER2を標的とした薬剤には、チロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブがある。現時点では、トラスツズマブ不応のHER2陽性乳がんに対して用いるが、今後、トラスツズマブとどちらを先行的に用いるかの指標が必要となる。本研究のトラスツズマブの臨床効果を予測するバイオマーカーの同定は、他治療との中でトラスツズマブを優先的に選択するための指標になりうる。
ガイドライン等の開発
米国における乳がん治療のガイドライン(NCCNなど)には、術後補助療法の部分に、アレイベースによる遺伝子発現解析(Oncotype DXなど)が項目として組み込まれている。本邦のガイドラインには、未だそのようなバイオマーカーが項目として用いられることはない。トラスツズマブ治療に限定されたものに関しては、欧米、本邦ともない。分子標的薬剤が多く導入され、バイオマーカーのエビデンスが蓄積されていくと、将来的にはガイドラインに組み入れられていく可能性がある。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果にみられるようなトラスツズマブの臨床効果の予測因子の確立は、治療成績の向上のみならず、個別化治療の発展を進め、高額抗悪性腫瘍薬により医療費の節減につながると考えられる。
その他のインパクト
第15回日本乳癌学会(横浜)2007年6月29日において、清水らが「薬物療法における乳癌の個性診断」のシンポジウムで発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
83件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
57件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文2
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文3
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文4
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文5
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文6
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文7
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文8
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文9
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文10
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文11
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文12
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文13
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文14
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文15
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文16
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文17
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文18
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文19
該当なし
該当なし
該当なし
原著論文20
該当なし
該当なし
該当なし

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-