アルツハイマー病発症の危険因子であるコレステロール代謝関連遺伝子の機能解析

文献情報

文献番号
200707004A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病発症の危険因子であるコレステロール代謝関連遺伝子の機能解析
課題番号
H17-ゲノム-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
道川 誠(国立長寿医療センター研究所 アルツハイマー病研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤野貴広(愛媛大学総合科学研究支援センター)
  • 赤津裕康(福祉村病院 長寿医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳内コレステロール代謝に関連するApoE, ABCA1, CYP46などの遺伝子多型とアルツハイマー病(AD) 発症との関連が指摘されている。本研究班は、上記遺伝子産物の機能をAD病態との関連で解明し、脳内コレステロール代謝調節によるADの予防・治療法の確立を目指す。
研究方法
(道川)ApoE4はシステインを持たないために二量体を形成できない点に着目し、ApoE3の二量体を作製し、単体ならびに二量体によるHDL産生作用を検討した。(赤津)AD脳・髄液・血液サンプルを用いてコレステロール値およびその関連因子の測定、大脳皮質、脈絡叢を用いてプロテオーム解析を行った。(藤野)NSEプロモーター及びSV40イントロン配列下流にCYP46A1・myc cDNAとSV40ポリA付加配列を連結したミニジーンをC57BL/6J・マウス受精卵の前核にマイクロインジェクションすることでTgマウスを作製した。
結果と考察
道川らは、ApoEによるHDL新生によって担われる脳内コレステロール輸送系の解明をほぼ完了した。すなわち、ApoEによるコレステロール搬出はN末端断片のみですでにアイソフォーム依存的であり、その理由はApoE3 N末端断片が持つシステイン間によるdisulfide結合による2量体形成にあること、C末端断片はそれ自体ではコレステロール搬出能が弱いが、N末端断片の作用を相加的に修飾する作用を持つが、ApoE4では、ドメイン相互作用のためC末端断片が相加的に働かないことである。HDLにはAβを結合して除去する能力も持つことから、脳内HDL産生を高めることが、アルツハイマー病を治療・予防する方法になると考え(HDL療法)、脳内HDL産生を高める薬剤探索を開始した。
藤野らは、CYP46 (24-水酸化コレステロールを生成する酵素)による脳内コレステロール排出機構の解明を行うために、CYP46A1・mycを脳神経系で発現するTgマウスを作製した。
赤津らは、脳のプロテオーム解析の結果AD脳で特異的に上昇あるいは減少する蛋白質を複数同定した。
結論
ApoEによるHDL新生によって担われる脳内コレステロール輸送系の解明をほぼ完了し、ApoE4はその能力が弱いためAD発症の危険因子である可能性を指摘した。従って脳内HDL産生を高めることが、ADの治療・予防になるとの仮説を立て(HDL療法)、脳内HDL産生を高める薬剤探索を開始した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200707004B
報告書区分
総合
研究課題名
アルツハイマー病発症の危険因子であるコレステロール代謝関連遺伝子の機能解析
課題番号
H17-ゲノム-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
道川 誠(国立長寿医療センター研究所 アルツハイマー病研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤野貴広(愛媛大学総合科学研究支援センター)
  • 赤津裕康(福祉村病院 長寿医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳内コレステロール代謝に関連するApoE, ABCA1, CYP46などの遺伝子多型とアルツハイマー病(AD) 発症との関連が指摘されている。本研究班は、上記遺伝子産物の機能をAD病態との関連で解明し、脳内コレステロール代謝調節によるADの予防・治療法の確立を目指す。
研究方法
リコンビナントApoE3, ApoE4およびそれぞれの断片化したApoEを使用した。ApoE4はシステインを持たないために二量体を形成できない点に着目し、ApoE3の二量体を作製し、単体ならびに二量体によるHDL産生作用を検討した。(赤津)AD脳・髄液・血液サンプルを用いてプロテオーム解析を行った。Cyp46のTgマウス作成では、NSEプロモーター及びSV40イントロン配列下流にCYP46A1・myc cDNAとSV40ポリA付加配列を連結したミニジーンをC57BL/6J・マウス受精卵の前核にマイクロインジェクションすることで作製した。
結果と考察
この3年間にわたる研究から、道川らはApoEによるHDL新生によって担われる脳内コレステロール輸送系の解明をほぼ完了した。すなわち、ApoEによるHDL産性作用はApoE3>>ApoE4であること、ApoEによるコレステロール搬出はN末端断片のみですでにアイソフォーム依存的であり、その理由はApoE3 N末端断片が持つシステイン間によるdisulfide結合による2量体形成にあること、C末端断片はそれ自体ではコレステロール搬出能が弱いが、N末端断片の作用を相加的に修飾する作用を持つが、ApoE4では、ドメイン相互作用のためC末端断片が相加的に働かないことである。HDLにはAβを結合して除去する能力も持つことから、脳内HDL産生を高めることが、アルツハイマー病を治療・予防する方法になると考え(HDL療法)、脳内HDL産生を高める薬剤探索を開始した。藤野らは、CYP46 (24-水酸化コレステロールを生成する酵素)による脳内コレステロール排出機構の解明を行うために、CYP46A1・mycを脳神経系で発現するTgマウスを作製した。赤津らは、脳のプロテオーム解析の結果AD脳で特異的に上昇あるいは減少する蛋白質を複数同定した。
結論
ApoEによるHDL新生によって担われる脳内コレステロール輸送系の解明をほぼ完了し、ApoE4はその能力が弱いためAD発症の危険因子である可能性を指摘した。従って脳内HDL産生を高めることが、ADの治療・予防になるとの仮説を立て(HDL療法)、脳内HDL産生を高める薬剤探索を開始した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200707004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ApoE3,ApoE4で異なるHDL産生作用の分子機構の解明をほぼ完了した。ApoEによるHDL産生はApoE3>>ApoE4であり、その理由はApoE3 が持つシステイン間のdisulfide結合による2量体形成にあること、ApoE4ではドメイン相互作用のため相加的に働かないためであるためであることによる。HDLはAβと結合して除去する能力も持つことから、脳内HDL産生を高めることが、アルツハイマー病を治療・予防法開発になると考え(HDL療法)、脳内HDL産生を高める薬剤探索を開始した。
臨床的観点からの成果
ApoE4は脳内HDL産生能力が弱いためAD発症の危険因子であると考えられた。従って脳内HDL産生を高めることが、ADの治療・予防になるとの仮説を立て(HDL療法)、脳内HDL産生を高める薬剤探索を開始した。脳内HDL産生増強のAD病変軽減作用は動物実験で確認されており、HDL産生を増強する薬剤は臨床応用が可能である。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
該当なし。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
42件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Zou K, Hosono T, NakamuraT, et al
Novel role of presenilins in maturation and transport of integrin β1.
Biochemistry  (2008)
原著論文2
Zou K, Yamaguchi H, Akatsu H, et al
Angiotensin-converting enzyme converts amyloid β-protein1-42 (Aβ(1-42)) to Aβ(1-40), and its inhibition enhances brain Aβ deposition.
J Neurosci , 27 , 8628-8635  (2007)
原著論文3
Gong JS, Morita SY, Kobayashi M,et al
Novel action of apolipoprotein E (ApoE): ApoE isoform specifically inhibits lipid-particle-mediated cholesterol release from neurons.
Mol Neurodegeneration , 2 (9) , 1-9  (2007)
原著論文4
Yamamoto N, Matsubara E, Maeda S et al
A ganglioside-induced toxic soluble Aβ assembly. Its enhanced formation from Aβ bearing the Arctic mutation.
J Biol Chem , 282 , 2646-2655  (2007)
原著論文5
Byun K, Kim J, Cho SY et al
Proteomics, 6(4):1230-1236 Alteration of the glutamate and GABA transporters in the hippocampus of the Niemann-Pick disease, type C mouse using proteomic analysis”.
Proteomics , 6 , 1230-1236  (2006)
原著論文6
Ko M, Zou K, Minagawa H, et al
Cholesterol-mediated neurite outgrowth is differently regulated between cortical and hippocampal neurons.
J Biol Chem , 280 , 42759-42765  (2005)
原著論文7
Yu W, Gong J-S, Ko M et al
Altered cholesterol metabolism in Niemann-Pick Type C1 mouse brain affects mitochondria function”
J Biol Chem , 280 , 11731-11739  (2005)
原著論文8
Yu W, Ko M, Yanagisawa K, et al
Neurodegeneration in heterozygous Niemann-Pick type C1 (NPC1) mouse: Implication of heterozygous NPC1 mutations being a risk for tauopathy.
J Biol Chem , 280 , 27296-27302  (2005)
原著論文9
Yu W, Zou K, Gong JS et al
Oligomerization of amyloid β-protein occurs during the isolation of lipid rafts
J Neurosci Res , 80 , 114-119  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-