再生医療の実用化の安全性・効率性に関する基盤技術の整備

文献情報

文献番号
200706021A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療の実用化の安全性・効率性に関する基盤技術の整備
課題番号
H17-再生-一般-023
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
上田 実(名古屋大学大学院医学系研究科細胞情報医学専攻頭頸部・感覚器外科学講座顎顔面外科学)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
26,059,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

文献情報

文献番号
200706021B
報告書区分
総合
研究課題名
再生医療の実用化の安全性・効率性に関する基盤技術の整備
課題番号
H17-再生-一般-023
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
上田 実(名古屋大学大学院医学系研究科細胞情報医学専攻頭頸部・感覚器外科学講座顎顔面外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 各務 秀明(東京大学医科学研究所・幹細胞組織医工学)
  • 紀ノ岡 正博(大阪大学大学院基礎工学研究科・化学工学領域)
  • 本多 裕之(名古屋大学大学院工学研究科・バイオテクノロジー講座・生物プロセス工学グループ)
  • 木全 弘治(愛知医科大学・分子医科学研究所)
  • 鈴木 力(株式会社日立メディコ・応用機器開発室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,再生医療に必要とされる培養細胞の安全性,品質の確保と培養過程の効率性に関する基盤技術を確立することである。
研究方法
初めに、培養細胞の安全性に関する検討として無血清培養および自己血清を用いた培養システムの開発を行う.動的細胞診断技術の開発として、画像処理技術を用いた細胞モニタリング法を利用する。一方、培養細胞の品質確保のために、分化のメカニズムに関する基礎的研究を行う。自動培養装置に動的評価システムや情報処理理論と組み合わせることにより、安全で効率的な細胞培養システムの構築を行う。
結果と考察
培養によって得られる骨髄由来間質細胞(BMSCs)のpopulationはほぼ一定であるものの、分化についてはさまざまな細胞が混在することが示された。現在の幹細胞用無血清培地では、必要な細胞数を得るためには、培養条件や添加因子についての検討が必要と思われた。本研究にて開発された立体組織片の定量評価法は、立体的不均一構造を有する口腔粘膜などのシートに対し、増殖能、幹細胞存在率、分化マーカー分布など位置的かつ定量的評価が可能であることが示唆された。Fuzzy Neural Networkを用いた情報解析では、細胞の画像情報を元にした細胞品質の予測において、他の手法に比べても優位性が高いことが示唆された。骨分化に関してはBMP-2の有用性について検討を行なった。一方、軟骨を対象として、分化へのマトリックス成分の影響についても検討を行なってきた。本研究から、HSの硫酸残基パターンの違いは細胞増殖因子の時空間的なパターンやシグナリングを調整し、肢芽の伸長やパターン形成に関与している可能性が強いと考えられた。我々の開発した自動培養装置は、ヒト線維芽細胞を用いた場合でも、分化能を維持した幹細胞を培養する場合であっても、安定に長期間自動培養が行えることが確認された。
結論
これまでの研究から、BMSCsを用いた骨再生治療については、その有効性や安全性を示してきたが、同時に安定した骨再生を実現するための課題も明らかとなってきた。一方、細胞の形態から機能や品質を評価するための方法については、従来にない先進的な試みを行なってきた。細胞の品質の確保には全数評価の可能な非侵襲評価が必須と思われ、今後の安全性評価法に一定の方向性をもたらすことが出来たと考えている。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
骨再生治療については、これまでの研究を通じて、その有効性や安全性を示すことができたと考えている。臨床研究におけるヒト細胞に関する基礎研究データは、学術的にも重要と考えられる。分化誘導に関する基礎研究では、マトリックス分子による分化制御の可能性を示した。また、細胞の形態から機能や品質を評価するための方法については、本研究を通じてその可能性を示すことができた。これは従来にない先進的な試みであり、今後の安全性評価法に一定の方向性をもたらすことが出来たと考えている。
臨床的観点からの成果
安全性については、特に血清の影響と無血清培地に関する検討を行なった。これは、今後の新たな臨床研究のために必須のデータと考えられる。さらに、これまでの臨床研究を通じて、安全性と有効性に関する情報を収集した。また、効率化については、閉鎖系ですべての工程を自動化可能な自動培養装置の開発と、培養過程を効率化するための培養工程制御ソフトウエアの開発を企業と共同で行い、それぞれ市場投入される段階に到達した。
ガイドライン等の開発
本研究を通じて、自己細胞を用いた再生医療の効果のみでなく、問題点も明らかとなった。その一つは培養された細胞の不均一性であり、これは自己細胞を用いた再生医療には避けられない問題と考えられる。これらの知見からは、自己の培養細胞を用いた場合に、製薬に対するのと同様の基準が達成困難な課題であることは明らかであり、将来自己細胞を用いた新たなガイドラインへ生かされることを期待したい。
その他行政的観点からの成果
培養細胞を治療に用いる場合にもっとも問題とされるのは安全性と考えられる。本研究を含めて、臨床研究の経過からは重篤な副作用を含む有害事象の報告はなく、自己培養細胞を用いた再生医療に対して一定の安全性が示されたと考えられる。今後はより長期間の経過観察が必要であり、公的な再生医療データベース等の整備により、広く安全性情報が共有されることが望まれる。また、培養方法についても、本研究の結果からは自己血清を用いた培養法の問題点が示されており、無血清培地の医療目的での使用の承認など、行政上の対応が望まれる。
その他のインパクト
申請者らのグループにおける骨再生の臨床研究が、朝日新聞などのメディアにて報道されている。本研究の成果は国内外のさまざまなシンポジウムで取り上げられ、発表されていることから、学術的なインパクトについても一定の成果があったものと考える。そのほか社会への影響として、特許の取得や研究成果の実用化が進められている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
68件
その他論文(和文)
48件
その他論文(英文等)
9件
学会発表(国内学会)
105件
日本炎症再生学会、東京テクノフォーラム21、日本再生医療学会シンポジウム、日本口腔外科学会シンポジウム、日本医学会総会シンポジウム 、日本成人矯正歯科学会 、国際歯科麻酔学会、他
学会発表(国際学会等)
34件
Tissue Engineering and Anti-aging Therapy 国際シンポジウムBMMP ,Tissue Engineering and Anti-aging Therapy ,他
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計22件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
D.Mizuno, H.Hideaki,H.Mizuno,et al.
Bone regeneration of dental implant dehiscence defects using cultured periosteum membrane.
Clinical Oral Implants Research (Accepted)  (2007)
原著論文2
M.-H. Kim, M. Kino-oka, M. Kawase, K,et al.
“Response of Human Epithelial Cells on Culture Surfaces with Varied Roughnesses Prepared by Immobilizing Dendrimers with/without D-Glucose Display”
J. Biosci. Bioeng., , 103 (2) , 192-199  (2007)
原著論文3
M.-H. Kim, M. Kino-oka, M. Kawase, K,et al.
“Glucose Transporter Mediation Responsible for Morphological Change of Human Epithelial Cells on Glucose-Displayed Surface”,
J. Biosci. Bioeng., (in press)  (2008)
原著論文4
Akira Ito, Masatake Fujioka, Tatsuro Yoshida,et al.
4-S-Cysteaminylphenol-loaded magnetite cationic liposomes for combination therapy of hyperthermia with chemotherapy against malignant melanoma.
Cancer Science , 98 (3) , 424-430  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-