重度熱傷、皮膚潰瘍等に対する新規超微細多孔質薄膜を活用した培養皮膚再生技術の開発

文献情報

文献番号
200706010A
報告書区分
総括
研究課題名
重度熱傷、皮膚潰瘍等に対する新規超微細多孔質薄膜を活用した培養皮膚再生技術の開発
課題番号
H17-再生-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
McMillan James R(北海道大学創成科学共同研究機構)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
11,833,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

文献情報

文献番号
200706010B
報告書区分
総合
研究課題名
重度熱傷、皮膚潰瘍等に対する新規超微細多孔質薄膜を活用した培養皮膚再生技術の開発
課題番号
H17-再生-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
McMillan James R(北海道大学創成科学共同研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 田畑 泰彦(京都大学・再生医科学研究所)
  • 下村 政嗣(東北大学・多元物質科学研究所)
  • 芝木 晃彦(北海道大学・医学部)
  • 阿部 理一郎(北海道大学・医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、新しい発想に基づく皮膚再生の開発を行い、同時に創傷治療に応用することである。本研究において、全く新しい人工膜(多孔質薄膜)を用いる。ハニカム構造を呈する多孔質薄膜は細胞接着時に、細胞と接する面積が小さいため、細胞へのダメージも小さい。かつ、その構造ゆえに膜内の小孔に徐放剤をはじめとする様々な極小物質を蓄えることができる。この膜は細胞を、特に3次元的に培養できることを明らかにしており、今回の検討においても最適なものと考える。また再生医学の両極的に重要な領域、すなわち幹細胞、前駆細胞を対象とする細胞の研究領域と、バイオエンジニアリングと呼ばれる人工生体物質を対象とする領域、それぞれを融合することでより革新的でかつ速やかな臨床応用ができる実用性の高い結果が得られる点である.

研究方法
培養モデル、動物モデルを用いた生体における人工皮膚の効果の検討を行う。創傷治癒促進作用の最も効果が発現できる、薄膜の種類、細胞(表皮細胞、線維芽細胞)の種類、徐放剤の種類、徐放剤に含有、放出させるサイトカイン・成長因子の種類を同定する。平成17年度の研究において、培養モデルを用いた生体における人工皮膚の効果の検討を行い、種々の皮膚構成細胞を用いてより生体皮膚に機能・構造的に近い人工皮膚を作製しえた。
結果と考察
本年度の研究で、人工皮膚の創傷治癒過程に対する詳細な影響を検討するため経時的に同部位を組織的学的に検討した。病理学的に人工皮膚移植により、特に血管新生促進がみられた。また移植した人工皮膚の構成細胞も比較的長期に移植部で生存することが明らかになった。また多孔質薄膜作製の最適条件を検討し、多孔質膜を用いた人工皮膚を作製した。人工皮膚組織再生に必要とされる上皮細胞と真皮細胞からなる3次元組織形成には、孔の貫通した膜の孔径、膜厚の最適化が必要である。加えて徐放剤に関しては、ゼラチンハイドロゲルから生理活性をもつbFGFとTGF-β1の徐放を実験的に確認していた。本年度の研究によって、それらの成長因子がハイドロゲルの作製条件によって、異なる時間パターンで徐放化されることがわかった。また、人工膜との組み合わせを考えて、フィルム、粒子状などの異なる形状をもつハイドロゲルの作製条件も確立した。
結論
本研究において,皮膚構成細胞、および多孔質薄膜、さらに成長因子などを含有した徐放剤
からなる、人工皮膚を作成することが出来た。この皮膚は創傷治癒を有意に促進させること
ができた。今後,この人工皮膚をさらに臨床応用できるよう発展させることが必要であると
思われた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
当初の目標であった新規人工皮膚の作成は、最適な多孔質薄膜の作成に成功し、かつ最適な播種皮膚構成細胞の同定にも成功した。
さらにマウスに加え、免役不全マウスを用いたヒト細胞播種人工皮膚は有意に創傷治癒を促進させることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
今回の研究課題において全く新しい人工膜(多孔質薄膜)を用いた。ハニカム構造を呈する多孔質薄膜は細胞接着時に、細胞と接する面積が小さいため、細胞へのダメージも小さい。かつ、その構造ゆえに膜内の小孔に徐放剤をはじめとする様々な極小物質を蓄えることができる。この膜は細胞を、特に3次元的に培養できることを明らかにした。加えてこの人工皮膚に播種した皮膚構成細胞からより豊富な創傷治癒促進液性因子が産生放出され、有意に創傷治癒が促進することも明らかにした。
ガイドライン等の開発
本研究課題においてガイドライン等の開発は行われなかった。
その他行政的観点からの成果
本研究課題において、審議会等で参考にされることや、行政施策に反映されることはなかった。
その他のインパクト
本研究課題において新聞などのマスコミに取り上げられたことはなく、公開シンポジウム等も開催しなかった。

発表件数

原著論文(和文)
25件
原著論文(英文等)
154件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
McMillan JR, Akiyama M, Tanaka M, Yamamoto S, etal.
Small-diameter porous poly (epsilon-caprolactone) films enhance adhesion and growth of human cultured epidermal keratinocyte and dermal fibroblast cells.
Tissue Eng , 13 , 789-798  (2007)
原著論文2
Y. Takahashi, M. Yamamoto, K. Yamada, etal.
Skull bone regeneration in nonhuman primates by controlled release of bone morphogenetic protein-2 from a biodegradable hydrogel.
Tissue Eng , 13 , 293-300  (2007)
原著論文3
Y. Kimura, Y. Tabata.
Experimental tissue regeneration by DDS technology of bio-signaling molecules.
J Dermatol Sci. , 47 (3) , 188-199  (2007)
原著論文4
Tsubota A, Akiyama M, Sakai K, etal.
Congenital ichthyosiform erythroderma mimicking ichthyosis bullosa of Siemens
Br J Dermatol , 158 , 191-194  (2008)
原著論文5
Yamanaka Y, Akiyama M, Sugiyama-Nakagiri Y, etal.
Expression of the keratinocyte lipid transporter ABCA12 in developing and reconstituted human epidermis.
Am J Pathol , 171 , 43-52  (2007)
原著論文6
Sawamura D, Goto M, Sakai K,etal.
Possible involvement of exon 31 alternative splicing in phenotype and severity of epidermolysis bullosa caused by mutations in PLEC1
J Invest Dermatol , 127 , 1537-1540  (2007)
原著論文7
Sakai K, Akiyama M, Sugiyama-Nakagiri Y,etal.
Localization of ABCA12 from Golgi apparatus to lamellar granules in human upper epidermal keratinocytes.
Exp Dermatol , 16 , 920-926  (2007)
原著論文8
Qiao H, McMillan JR
Gelsolin segment 5 inhibits HIV-induced T-cell apoptosis via Vpr-binding to VDAC.
FEBS Lett , 581 , 535-540  (2007)
原著論文9
Nishie W, Sawamura D, Goto M, etal.
Humanization of autoantigen.
Nat Med , 13 , 378-383  (2007)
原著論文10
McMillan JR, Akiyama M, Rouan F,etal.
Plectin defects in epidermolysis bullosa simplex with muscular dystrophy.
Muscle Nerve , 35 , 24-35  (2007)
原著論文11
Ito H, Akiyama M, Nakagawa H, etal.
N-Linked neutral oligosaccharides in the stratum corneum of normal and ichthyotic skin.
Arch Dermatol Res , 298 , 403-407  (2007)
原著論文12
Akiyama M, Titeux M, Sakai K, etal.
DNA-based prenatal diagnosis of harlequin ichthyosis and characterization of ABCA12 mutation consequences.
J Invest Dermatol , 127 , 568-573  (2007)
原著論文13
Akiyama M, Sakai K, Sato T, etal.
Compound heterozygous ABCA12 mutations including a novel nonsense mutation underlie harlequin ichthyosis.
Dermatology , 215 , 155-159  (2007)
原著論文14
Akiyama M, Sakai K, Ogawa M, etal.
Novel duplication mutation in the patatin domain of adipose triglyceride lipase (PNPLA2) in neutral lipid storage disease with severe myopathy.
Muscle Nerve , 36 , 856-859  (2007)
原著論文15
Akiyama M, Sakai K, Arita K, etal.
A novel GJB2 mutation p.Asn54His in a patient with palmoplantar keratoderma, sensorineural hearing loss and knuckle pads.
J Invest Dermatol , 127 , 1540-1543  (2007)
原著論文16
Sasaki M, Abe R, Fujita Y, etal.
Mesenchymal stem cells are recruited into wounded skin and contribute to wound repair by transdifferentiation into multiple skin cell type.
J Immunol , 180 , 2581-2587  (2008)
原著論文17
Aoyagi S, Akiyama M, Mashiko M, etal.
Extensive proliferative nodules in a case of giant congenital naevus.
Clin Exp Dermatol , 33 , 125-127  (2008)
原著論文18
Natsuga K, Abe R, Ujiie H, etal.
Non-Hodgkin lymphoma preceded by recalcitrant eczema.
Eur J Haematol , 79 , 369-370  (2007)
原著論文19
Moriuchi R, Shibaki A, Yasukawa K,
Neonatal vesiculopustular eruption of the face: a sign of trisomy 21-associated transient myeloproliferative disorder.
Br J Dermatol , 156 , 1373-1374  (2007)
原著論文20
Hoshina D, Shibaki A, Aoyagi S,
Giant dermatofibroma: a rare variant of dermatofibroma preferentially developing on the lower limbs.
Clin Exp Dermatol , 32 , 132-134  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-