間葉系幹細胞を用いた心筋血管再生療法の基礎及び臨床研究

文献情報

文献番号
200706008A
報告書区分
総括
研究課題名
間葉系幹細胞を用いた心筋血管再生療法の基礎及び臨床研究
課題番号
H17-再生-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
北村 惣一郎(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 永谷 憲歳(国立循環器病センター研究所  再生医療部)
  • 大串 始(産業技術総合研究所 セルエンジニアリング研究部門)
  • 竹下 聡(国立循環器病センター 心臓血管内科 )
  • 清水 達也(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 再生医療)
  • 盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部 )
  • 宮武 邦夫(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター)
  • 中谷 武嗣(国立循環器病センター 臓器移植部 )
  • 八木原 俊克(国立循環器病センター 心臓血管外科 )
  • 山岸 正和(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 小林 順二郎(国立循環器病センター 心臓血管外科 )
  • 清水 渉(国立循環器病センター 心臓血管内科 )
  • 西川 雄大(国立循環器病センター研究所 先進医療機器開発室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
37,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動物実験より得られた間葉系幹細胞移植による心不全改善効果の結果をもとに、骨髄間葉系細胞を用いた難治性心不全治療を開発し臨床応用を行った。また次世代の細胞移植治療として間葉系幹細胞+細胞シートハイブリット再生治療による心筋再生療法の安全性と効果の前臨床試験を行った。最後に、新たな細胞移植治療として同種他家移植の可能性に関して、骨髄間葉系細胞を用いて検討した。
研究方法
以下の項目に関して研究を行った。
1.自己間葉系細胞を用いた難治性循環器疾患に対する心筋血管再生療法の臨床応用
2.間葉系細胞+細胞シート、成長因子によるハイブリット再生治療の開発
3.同種他家移植の有効性の検討
4.脂肪組織および骨髄由来間葉系細胞における遺伝子・分泌タンパク発現の比較検討
5.内側絨毛膜由来間葉系幹細胞による心血管保護作用の検討
結果と考察
骨髄間葉系細胞による心筋血管再生治療の安全性と有効性に関して、基礎および臨床研究を引き続き行った。臨床試験において拡張型心筋症などの難治性心不全に対する1年以上の長期にわたる安全性と有効性を確認した。また、新たな治療法として温度感応性細胞シートによるハイブリット再生治療による心筋再生療法を開発し、大動物を用いた前臨床試験で安全性と有効性を確認した。脂肪由来間葉系細胞やした。細胞移植のみでは効果が不十分な症例に対する治療として期待される。さらに、脂肪組織由来間葉系細胞や内側絨毛膜由来間葉系幹細胞が新たな再生医療ソースとして使用できることを証明し、間葉系幹細胞は他家移植にも使える可能性が示された。現段階では臨床に用いることができる最も魅力的な細胞であると思われた。
結論
慢性心不全患者を対象とした臨床試験で、骨髄間葉系細胞移植の長期安全性と有効性を確認した。基礎研究としては、次世代の細胞移植治療として間葉系幹細胞+細胞シートを開発し、また、脂肪組織由来間葉系細胞や内側絨毛膜由来間葉系幹細胞が新たな再生医療ソースとして使用できる可能性、間葉系幹細胞が他家移植にも使える可能性を示した。以上より間葉系細胞は現段階では臨床に用いることができる最も魅力的な細胞であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200706008B
報告書区分
総合
研究課題名
間葉系幹細胞を用いた心筋血管再生療法の基礎及び臨床研究
課題番号
H17-再生-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
北村 惣一郎(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 永谷 憲歳(国立循環器病センター研究所 再生医療部)
  • 大串 始(産業技術総合研究所 セルエンジニアリング研究部門)
  • 竹下 聡(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 清水 達也(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 再生医療)
  • 盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
  • 宮武 邦夫(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター)
  • 中谷 武嗣(国立循環器病センター 臓器移植部)
  • 八木原 俊克(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 山岸 正和(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 小林 順二郎(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 清水 渉(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 西川 雄大(国立循環器病センター研究所 先進医療機器開発室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、骨髄間葉系細胞の中には多分化能を有する幹細胞が存在することが明らかとなってきた。我々は心不全動物の心筋内へ間葉系幹細胞を移植すると心筋と血管が同時に再生され、心機能が改善されることを証明してきた。これらの基礎的検討をもとに、骨髄間葉系細胞を用いた臨床応用を行い、また次世代の細胞移植治療として間葉系幹細胞+細胞シートまたは成長因子によるハイブリット再生治療の開発を目的とした。
研究方法
次の3項目について研究を行った。
1. 自己間葉系細胞を用いた難治性循環器疾患に対する心筋血管再生療法の臨床応用
1)拡張型心筋症、虚血性心筋症による慢性心不全に対する経皮的細胞移植治療
2)虚血性心筋症に対する細胞移植および冠動脈バイパス手術併用療法
2. 間葉系細胞+細胞シート、成長因子によるハイブリット再生治療の開発
3. 脂肪組織および骨髄由来間葉系細胞における遺伝子・分泌タンパク発現の比較検討
結果と考察
骨髄間葉系細胞による心筋血管再生治療の臨床試験において難治性心不全に対する安全性と有効性を証明した。新たな治療法として温度感応性細胞シートによるハイブリット再生治療による心筋再生療法を開発し、大動物を用いた前臨床試験で安全性と有効性を確認した。一層の脂肪由来間葉系細胞を心筋梗塞部位に移植することで血管を豊富に含んだ厚みのある組織をつくることに成功し、心機能の改善や心筋リモデリングの抑制効果を確認した。脂肪組織由来間葉系細胞も再生医療ソースとして使用できることを確認し、骨髄由来間葉系細胞以上の組織修復効果が期待できる新たな移植細胞ソースとなる可能性が示唆された。また、細胞保存技術の開発と他人(同種)の間葉系幹細胞を用いる可能性につき探索し、長期に冷凍保存されたヒト間葉系細胞が良好な安定性、ならびに細胞増殖、分化能を有すること、また免疫抑制剤を用いることによって同種他家移植を実施できる可能性を示した。
結論
自己骨髄間葉系細胞の移植による心筋血管再生療法の基礎および臨床研究を行い、慢性心不全患者を対象とした臨床試験では骨髄間葉系細胞移植の安全性と有効性を確認した。また、次世代の細胞移植治療として間葉系幹細胞+細胞シートまたは成長因子によるハイブリット再生治療による心筋再生療法を開発した。間葉系細胞移植は新たな心血管再生治療法となる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
自己骨髄間葉系細胞の移植による心筋血管再生療法の基礎および臨床研究を行い、慢性心不全患者を対象とした臨床試験では骨髄間葉系細胞移植の安全性と有効性を確認した。また、次世代の細胞移植治療として間葉系幹細胞+細胞シートまたは成長因子によるハイブリット再生治療による心筋再生療法を開発した。間葉系細胞移植は新たな心血管再生治療法となる可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
臨床治験は心不全動物の結果を踏まえ、世界に先駆けて難治性心不全患者を対象に間葉系幹細胞を用いた心筋血管再生療法を行った。間葉系幹細胞移植により左室駆出率と血漿BNP濃度は有意に改善した。一方、間葉系幹細胞を細胞シート化する技術を開発し、内因性ペプチド(IGF-1ら)を併用するハイブリット再生治療の開発を行った。難治性心不全に対する心臓移植はドナーの不足により十分な移植医療が行われていないのが現状であるが、間葉系幹細胞移植の開発によりこれらの重症心不全患者が恩恵を受けられる可能性がある。
ガイドライン等の開発
重症心不全患者の中には、補助人工心臓を装着したまま長期間入院している患者が少なくない。本研究の成果により心機能が改善し、また生活の質及び生命予後が改善し、最終的には高額な医療費のかかる補助人工心臓から離脱や、心不全治療に要する医療費の削減につながる可能性がある。
その他行政的観点からの成果
重症心不全患者の中には、補助人工心臓を装着したまま長期間入院している患者が少なくない。本研究の成果により心機能が改善し、また生活の質及び生命予後が改善し、最終的には高額な医療費のかかる補助人工心臓から離脱や、心不全治療に要する医療費の削減につながる可能性がある。
その他のインパクト
2006年5月7日に産経新聞の1面に本研究の成果の一部が報道された。また、次世代の細胞移植治療として間葉系幹細胞+細胞シートまたは成長因子によるハイブリット再生治療による心筋再生療法に関しては2006年4月Nature Medicineに掲載され、同時にNHKのニュースで全国に放映された。

発表件数

原著論文(和文)
21件
原著論文(英文等)
107件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
38件
学会発表(国際学会等)
31件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計6件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
16件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyahara Y, Nagaya N, Mori H et al.
Monolayered Mesenchymal Stem Cells Repair Scarred Myocardium After Myocardium Infarction.
Nature Medicine , 12 , 459-465  (2006)
原著論文2
Iwase T, Nagaya N, Kangawa K et al.
Adrenomedullin enhances angiogenic potency of bone marrow transplantation in a rat model of hindlimb ischemia.
Circulation. , 11 , 356-362  (2005)
原著論文3
Nagaya N, Kangawa K, Kitamura S et al.
Transplantation of Mesenchymal Stem Cells Improves Cardiac Function in a Rat Model of Dilated Cardiomyopathy.
Circulation. , 112 , 1128-1135  (2005)
原著論文4
Shimizu T, Sekine H, Okano T et al.
Polysurgery of cell sheet grafts overcomes diffusion limits to produce thick, vascularized myocardial tissues
The FASEB Journal , 20 , 708-710  (2006)
原著論文5
Noda T, Shimizu W, Kamakura S et al.
Malignant entity of idiopathic ventricular fibrillation and polymorphic ventricular tachycardia initiated by premature extrasystoles originating from right ventricular outflow tract
J Am Coll Cardiol , 46 , 1288-1294  (2005)
原著論文6
Ohnishi S, Yasuda T, Nagaya N et al.
Effect of Hypoxia on Gene Expression of Bone Marrow-derived Mesenchymal Stem Cells and Mononuclear Cells.
Stem Cells. , 25 , 1166-1177  (2007)
原著論文7
Miyamoto K, Nishigami K, Takeshita et al.
Unblinded pilot study of autologous. transplantation of bone marrow mononuclear cells in patients with thromboangiitis obliterans
Circulation , 114 , 2679-2684  (2006)
原著論文8
Miyahara Y, Ohnishi S, et al.
Beraprost sodium enhances neovascularization in ischemic myocardium by mobilizing bone marrow cells in rats.
Biochem Biop Res Commun.hys , 349 , 1242-1249  (2006)
原著論文9
Nakajima H, Kobayashi J,Kitamura S et al.
Angiografic flow grading and graft arrangement of arterial conduits
The Journal of Thracic and Cardiovascular Surgery , 132 (5) , 1023-1029  (2006)
原著論文10
Ohnishi S, Ohgushi H, Nagaya N et al.
Mesenchymal stem cells for the treatment of heart failure.
Int J Hematol. , 86 , 17-21  (2007)
原著論文11
Ohnishi S, Yanagawa B, Nagaya N et al.
Transplantation of mesenchymal stem cells attenuates myocardial injury and dysfunction in a rat model of acute myocarditis.
J Mol Cell Cardiol. , 42 , 88-97  (2007)
原著論文12
Shimizu W, Matsuo K, Tomoike H et al.
Sex hormone and gender difference. - Role of testosterone on male predominance in Brugada syndrome.
J Cardiovasc Electrophysiol , 18 , 415-421  (2007)
原著論文13
Nakajima H, Kobayashi J, Kitamura S et al.
Graft design strategies with optimum antegrate bypass flow in total arterial off-pump coronary artery bypass
European Association for Cardio-Thoracic Surgery , 31 , 276-282  (2007)
原著論文14
Ohnishi S, Sumiyoshi H, Nagaya N
Mesenchymal stem cells attenuate cardiac fibroblast proliferation and collagen synthesis through paracrine actions.
FEBS Lett , 581 , 3961-3966  (2007)
原著論文15
Yanagawa B, Kataoka M, Nagaya N et al.
Infusion of adrenomedullin improves acute myocarditis via attenuation of myocardial inflammation and edema.
Cardiovasc Res. , 76 , 110-118  (2007)
原著論文16
Yamahara K, Nagaya N.
Mesenchymal stem cells for the treatment of heart disease.
Regen Med. , 2 , 107-109  (2007)
原著論文17
Ohnishi S, Nagaya N.
Prepare Cells to Repair the Heart: Mesenchymal Stem Cells for the Treatment of Heart Failure.
Am J Nephrol. , 27 , 301-307  (2007)
原著論文18
Iwase T, Nagaya N, Kitamura S et al.
Comparison of angiogenic potency between mesenchymal stem cells and mononuclear cells in a rat model of hindlimb ischemia.
Cardiovasc Res , 66 , 543-551  (2005)
原著論文19
Jo JI, Nagaya N, Tabata Y et al.
Transplantation of Genetically Engineered Mesenchymal Stem Cells Improves Cardiac Function in Rats With Myocardial Infarction: Benefit of a Novel Nonviral Vector, Cationized Dextran.
Tissue Eng. , 13 , 313-322  (2007)
原著論文20
Fujii T, Nagaya N, Mori H et al.
Adrenomedullin enhances therapeutic potency of bone marrow transplantation for myocardial infarction in rats.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. , 288 , 1444-1450  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-