体外衝撃波を用いた急性心筋梗塞に対する非侵襲性治療法の開発

文献情報

文献番号
200706005A
報告書区分
総括
研究課題名
体外衝撃波を用いた急性心筋梗塞に対する非侵襲性治療法の開発
課題番号
H17-再生-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
下川 宏明(東北大学大学院医学系研究科循環器病態学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
19,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、人口の高齢化や生活の欧米化などにより、虚血性心臓病・脳卒中・閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患が増加している。これらの動脈硬化性疾患は、国民の生命予後を悪化させ、日常生活のQOLを著しく低下させ、活力のある社会の実現に大きな障害となっている。我々は、低出力の衝撃波を体外から心臓に照射する非侵襲的な血管新生療法を開発し、ブタおよび狭心症患者において高度の心筋虚血を改善することを報告している。本研究では、急性心筋梗塞に対する非侵襲性の体外式血管新生療法の開発を目指す。
研究方法
1)基礎研究:低出力衝撃波による治療効果の機序や至適治療条件を検討するため、基礎研究を継続した。具体的には、より臨床に即したブタ急性心筋梗塞モデル(虚血再灌流モデル)における検討を追加でおこなった。また、動物実験と並行して、培養細胞を用いた検討もおこなった。
2)臨床研究:臨床試験を継続した。
結果と考察
低出力衝撃波を用いた血管新生療法については、我々のグループが、重症狭心症に対する体外衝撃波治療の有効性を示す世界初の基礎論文および臨床論文を発表している。狭心症に対する体外衝撃波治療は、世界中で既に250例以上おこなわれているが、急性心筋梗塞に対する体外衝撃波治療の報告は今までになく、我々の基礎論文が世界初であり、臨床試験も本研究が世界初である。
1)基礎研究:ブタ急性心筋梗塞モデル(虚血再灌流モデル)における検討により、再灌流3時間後から体外衝撃波治療を行うと、慢性期の心室リモデリングや心機能低下が抑制されることを確認した。また、培養細胞を用いた検討により、様々な増殖因子の関与が示唆された。今後さらに検討を重ねて、体外衝撃波治療の最適な治療開始時期を明らかにする。
2)臨床試験については、初期の症例では、より安全性に配慮するため、臨床試験の適応基準を倫理委員会から承認を得た基準よりも厳しくした。そのため、現時点では、症例数が2例と少ないが、今後症例数を増やしながら、適応基準の再検討をおこなう。
結論
体外衝撃波治療は急性心筋梗塞後の心室リモデリングに対する有効かつ安全性の高い治療法となる可能性がある。さらに基礎的検討を継続するとともに、臨床試験を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200706005B
報告書区分
総合
研究課題名
体外衝撃波を用いた急性心筋梗塞に対する非侵襲性治療法の開発
課題番号
H17-再生-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
下川 宏明(東北大学大学院医学系研究科循環器病態学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、人口の高齢化や生活の欧米化などにより、虚血性心臓病・脳卒中・閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患が増加している。これらの疾患は、国民の生命予後を悪化させ、QOLを著しく低下させ、活力のある社会の実現に大きな障害となっている。我々は、低出力の衝撃波を体外から心臓に照射する非侵襲的な血管新生療法を開発し、ブタおよび狭心症患者において心筋虚血を改善することを報告している。本研究では、急性心筋梗塞に対する非侵襲性の体外式血管新生療法の開発を目指す。
研究方法
1)基礎研究:ブタを用いて、2種類の急性心筋梗塞モデル(冠動脈摘出モデル、虚血再灌流モデル)で検討をおこなった。また、培養細胞を用いた検討もおこなった。
2)臨床研究:倫理委員会の承認を得て、カテーテルインターベンションが成功した急性心筋梗塞症例を対象に臨床試験を開始した。衝撃波治療は、急性心筋梗塞発症3日目から開始した。
結果と考察
1)基礎研究:急性心筋梗塞早期(冠動脈摘出モデルでは梗塞作成3日目、虚血再灌流モデルでは再灌流3時間後)から体外衝撃波治療を行うと、慢性期の心機能低下や心不全が抑制されることを確認した。また、培養細胞を用いた検討により、様々な増殖因子の関与が示唆された。
2)臨床試験:2例の急性心筋梗塞症例に対して衝撃波治療をおこなった。1例目は、既に治療後1年を経過しているが、心機能低下や心不全なく順調に経過している。
 低出力衝撃波を用いた血管新生療法については、我々のグループが、狭心症に対する有効性を示す世界初の基礎論文および臨床論文を発表している。狭心症に対する体外衝撃波治療は、世界中で既に250例以上おこなわれているが、急性心筋梗塞に対する体外衝撃波治療の報告は、我々の基礎論文が世界初であり、臨床試験も本研究が世界初である。
 本治療法の利点は、麻酔や外科的侵襲なしに体外から虚血部位に効率的に血管新生を惹起できること、痛みなどの苦痛や副作用がないこと、必要ならば繰り返し行えること、ランニングコストが安いこと、などである。
 本治療法は、我が国で増加中の急性心筋梗塞に、非侵襲性で安全かつ効果的な血管新生療法を提供することになり、国民の保健医療の向上や医療費の大幅な削減により国家の保健財政にも大きく貢献することが期待される。
結論
体外衝撃波治療は急性心筋梗塞後の心機能低下や心不全に対する有効かつ安全性の高い治療法となる可能性が高い。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我々は、低出力の体外衝撃波を用いた非侵襲的な血管新生療法を開発し、ブタおよび重症狭心症患者において心筋虚血を改善することを、世界で初めて論文報告した。本研究では、急性心筋梗塞に対する本治療法の有用性を世界で初めて明らかにした。
臨床的観点からの成果
本治療法は、麻酔や外科的侵襲なしに体外から虚血部位に効率的に血管新生を惹起できること、痛みなどの苦痛や副作用がないこと、必要ならば繰り返し行えること、ランニングコストが安いこと、など利点がある。本治療法は、我が国で増加中の急性心筋梗塞に、非侵襲性で安全かつ効果的な血管新生療法を提供できる可能性を示した。
ガイドライン等の開発
現在、我々は臨床試験をおこなっており、将来的には、ガイドラインに掲載される可能性も十分考えられる。
その他行政的観点からの成果
本治療法は、麻酔や外科的侵襲なしに体外から虚血部位に効率的に血管新生を惹起できること、痛みなどの苦痛や副作用がないこと、必要ならば繰り返し行えること、ランニングコストが安いこと、など利点がある。本治療法は、我が国で増加中の急性心筋梗塞に、非侵襲性で安全かつ効果的な血管新生療法を提供することになり、患者のQOLの改善や心不全発症の抑制を通して、国民の保健医療の向上や医療費の大幅な削減により国家の保健財政にも大きく貢献することが期待される。
その他のインパクト
2007年1月25日におこなった「急性心筋梗塞に対する非侵襲性体外衝撃波治療法の臨床試験開始」の記者会見が、同日のテレビニュース(NHK,仙台放送,宮城テレビ)で報道された。また、翌1月26日には、全国紙を含めた多くの新聞に記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
虚血性心疾患に対する衝撃波治療を解説した総説を論文発表した。
その他論文(和文)
7件
虚血性心疾患に対する衝撃波治療を解説した総説を論文発表した。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
27件
各種の学会で虚血性心疾患に対する衝撃波治療に関して発表をおこなった。
学会発表(国際学会等)
5件
各種の学会で虚血性心疾患に対する衝撃波治療に関して発表をおこなった。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
インターネット上にHomepageを公開。 (http://www.cardio.med.tohoku.ac.jp/shockwave/index.html)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimokawa H, Ito K, Fukumoto Y et al.
Extracorporeal cardiac shock wave therapy for ischemic heart disease
Shock Waves  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-