HIV感染症における免疫応答の解析とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200704008A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症における免疫応答の解析とその臨床応用に関する研究
課題番号
H19-国医-指定-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山本 直樹(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 俣野 哲朗(東京大学医科学研究所)
  • 高橋 秀実(日本医科大学)
  • 武部 豊(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 満屋 裕明(熊本大学医学薬学研究部)
  • 岩本 愛吉(東京大学医科学研究所)
  • 田中 勇悦(琉球大学大学院医学研究科)
  • 岡 慎一(国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター)
  • 杉浦 亙(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 清野 宏(東京大学医科学研究所)
  • 塩田 達雄(大阪大学微生物病研究所)
  • 岡本 尚(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 馬場 昌範(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 服部 俊夫(東北大学大学院医学系研究科)
  • 山田 紀男(財団法人結核予防会結核研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,827,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジアのエイズ問題に効果的に立ち向かうため、本邦のエイズ研究の専門家が、基礎、臨床、疫学、社会医学の立場から研究を行い、その克服の方策について共同して検討することを目的とする。とくに、エイズ/HIVの感染、予防を中心とした観点から、ワクチン、粘膜免疫、薬剤耐性、宿主因子、母子感染、流行疫学、動物モデルの開発を中心課題とする。これらの活動を通じ、アジアにおけるエイズ対策研究事業の総合的発展をめざした。
研究方法
DNAワクチンあるいはセンダイウイルス(SeV)ベクターワクチンを接種した実験動物の血漿中ウイルス量、ウイルス特異的CTLレベル、中和抗体レベル、プロウイルスゲノム塩基配列などのエイズにかかわる諸問題を包括的に検討した。またHIVの多様性に対応可能な免疫原の設計のため、マルチエピトープBCG/rDIsの構築を行った。その他、分子疫学、遺伝子多型、転写制御とウイルス活性化などについて、定法に従い研究を行った。
結果と考察
センダイベクターないしはクロスクレイドHIVワクチンの研究、ワクチンによるSHIV複製制御の長期解析、粘膜組織におけるHIVの感染拡大および制御機構の解明、アジアにおける分子疫学研究、新規の CCR5阻害剤 AK602(AVC)の作用機解明と構造学的解析、HIV-CTLエピトープがCTL認識を回避する分子機構、樹状細胞を用いた抗HIV-1感染防御免疫応答の誘導、免疫賦活療法により誘導されたCTLからのHIVの逃避、薬剤耐性HIVの進化・選択におけるgag-polの相互干渉、HIV感染症の社会疫学的研究、病原性を決定するHIV/SIV遺伝子、ヒトゲノム多型性とHIV感染、HIV感染と転写制御などの研究を行った。以上の研究から、現在難渋を極めている、エイズの制御、とくにワクチン開発に資する多くの貴重な情報が得られた。
結論
細胞性免疫主導型ワクチンによりウイルス増殖の制御が達成された実験動物での免疫パラメーターの解析を行うとともに、液性免疫主導ワクチンの開発を試み、将来につながる結果が得られた。さらに新しい標的としての、コレセプター阻害薬の研究、粘膜面での感染メカニズムや拡大とその阻止、樹状細胞を用いた免疫療法の試み、アジアのエイズ流行の分子疫学的な研究、ウイルスの増殖と転写制御の関連、ヒトゲノム多型とHIV感染などに関する多彩な研究が行われ多くの重要な知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200704008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アジアのエイズを中心とした問題に効果的に対処するため基礎的、臨床的、疫学的立場から、細胞性免疫主導型ワクチンによりウイルス増殖の制御が達成されたサルでの免疫パラメーターの解析を行うとともに、液性免疫主導ワクチンの開発を試み、将来につながる結果が得られた。さらに新しい標的としての、コレセプター阻害薬の研究、粘膜面での感染メカニズムや拡大とその阻止、樹状細胞を用いた免疫療法の試み、分子疫学的な研究、ヒトゲノム多型とHIV感染などに関する多彩な研究が行われ多くの重要な知見が得られた。
臨床的観点からの成果
HIV感染者にとって結核感染の予知は極めて重要である。炎症マーカーと抗TBGL抗体価が相関することを見出し、エイズを発症した結核患者のCRP値とTBGL抗体値の相関を検討した結果、TBGL値は1例を除き低値であったが、これらの症例のTBGL抗体値は、CRP値と相関を示すことがわかった。また新たに見出された CCR5阻害剤 AK602 (AVC)がPR二量体形成阻害というユニークな機序を有することとその前臨床研究が進んだ。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究班では日米医学協力計画・合同小委員会への参加もサポートした。そこではエイズ部会のレビューが行われ、今後の計画の検討とともに、アジアの研究者に対し研究費の助成を行うアジア地域奨励研究事業の計画について紹介がなされた。また、米国NIHでの共同研究も援助した。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
105件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
65件
学会発表(国際学会等)
24件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimizu S, Urano E, Futahashi Y et al.
Inhibiting lentiviral replication by HEXIM1, a cellular negative regulator of the CDK9/cyclin T complex.
AIDS , 21 , 575-582  (2007)
原著論文2
Kawada M, Tsukamoto T, Yamamoto H et al.
Long-term control of simian immunodeficiency virus replication with central memory CD4+ T-cell preservation after non-sterile protection by a cytotoxic T lymphocyte-based vaccine.
J Virol , 81 , 5202-5211  (2007)
原著論文3
Tsukamoto T, Yuasa M, Yamamoto H et al.
Induction of CD8+ cells able to suppress CCR5-tropic simian immunodeficiency virus SIVmac239 replication by controlled infection of CXCR4-tropic simian-human immunodeficiency virus in vaccinated rhesus macaques.
J Virol , 81 , 11640-11649  (2007)
原著論文4
Takahashi M, Watari E, Shinya E et al.
Suppression of virus replication via down-modulation of mitochondrial short chain enoyl-CoA hydratase in human glioblastoma cells.
Antiviral Res , 75 , 152-158  (2007)
原著論文5
Wakabayashi A, Nakagawa Y, Shimizu M et al.
Suppression of Already Established Tumor Growing through Activated Mucosal CTLs Induced by Oral Administration of Tumor Antigen with Cholera Toxin.
J Immunol  (2007)
原著論文6
Takebe Y, Uenishi R, and Li X-J.
Global molecular epidemiology of HIV: Understanding the genesis of AIDS pandemic.
Adv Pharmacol , 56 , 1-25  (2008)
原著論文7
Tee KK, Pybus OG, Liao H et al.
Chronology of the HIV-1 CRF07_BC expansion in East-Asia.
AIDS , 22 , 156-158  (2007)
原著論文8
Utsumi T, Nagakawa H, Uenishi R et al.
An HIV-2-infected Japanese man who was a long-term nonprogressor for 36 years.
AIDS , 21 (13) , 1834-1835  (2007)
原著論文9
Naito Y, Nohtomi K, Onogi T et al.
Optimal design and validation of antiviral siRNA for targeting HIV-1.
Retrovirology , 4 (1) , 80-80  (2007)
原著論文10
Koh Y, Matsumi S, Das D et al.
Potent Inhibition of HIV-1 Replication by Novel Non-peptidyl Small Molecule Inhibitors of Protease Dimerization.
J Biol Chem , 282 , 28709-28720  (2007)
原著論文11
Nakata H, Amano M, Koh Y et al.
Activity against human immunodeficiency virus type 1, intracellular metabolism, and effects on human DNA polymerases of 4'-ethynyl-2-fluoro-2'-deoxyadenosine.
Antimicrob Agents Chemother , 51 , 2701-2708  (2007)
原著論文12
Hoshino S, Sun B, Konishi M et al.
Vpr in plasma of HIV-1-positive patients is correlated with the HIV-1 RNA titers.
AIDS Res Hum Retroviruses , 23 , 391-397  (2007)
原著論文13
Okuma K, Tanaka R,Ogura T et al.
IL-4-transgenic hu-PBL-SCID mice: a model for screening of anti-viral drugs and immunotherapeutic agents against X4 HIV-1 viruses.
J Infec Dis , 197 (1) , 134-141  (2008)
原著論文14
Kondo K, Okuma K, Tanaka R et al.
Requirements for the functional expression of OX40 ligand on human activated CD4+ and CD8+ T cells.
Hum Immunol , 68 (7) , 563-571  (2007)
原著論文15
Yamanaka H, Gatanaga H, Kosalaraksa P et al.
Novel mutation of human polymerase gamma associated with mitochondrial toxicity induced by anti-human immunodeficiency virus treatment.
J Infect Dis , 195 , 1419-1425  (2007)
原著論文16
Kunisawa J, Kurashima Y, Higuchi M et al.
Sphingosine 1-phosphate dependence in the regulation of lymphocyte trafficking to the gut epithelium.
J Exp Med , 204 , 2335-2348  (2007)
原著論文17
Kunisawa J, Kurashima Y, Gohda M et al.
Sphingosine 1-phosphate regulates peritoneal B cell trafficking for subsequent intestinal IgA production.
Blood , 109 , 3749-3756  (2007)
原著論文18
Song H, Nakayama EE, Likanonsakul S et al.
A three-base-deletion polymorphism in the upstream non-coding region of human interleukin 7 (IL-7) gene could enhance levels of IL-7 expression.
Int J Immunogenet , 34 , 107-113  (2007)
原著論文19
Nan G, Asamitsu K, Hibi Y et al.
AKIP1 Enhances NF-kappaB-dependent Gene Expression by Promoting the Nuclear Retention and Phosphorylation of p65.
J Biol Chem  (2008)
原著論文20
Inoue Y, Tanaka N, Tanaka Y et al.
Clathrin-dependent entry of severe acute respiratory syndrome coronavirus into target cells expressing ACE2 with the cytoplasmic tail deleted.
J Virol , 81 (16) , 8722-8729  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-