少子化関連施策の効果と出生率の見通しに関する研究

文献情報

文献番号
200701007A
報告書区分
総括
研究課題名
少子化関連施策の効果と出生率の見通しに関する研究
課題番号
H17-政策-一般-017
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 重郷(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 安藏 伸治(明治大学 政治経済学部)
  • 中嶋 和夫(岡山県立大学 保健福祉学部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
7,757,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本事業は、人口学、社会学、経済学ならびに保健福祉学の見地から、結婚・出生行動へ影響を及ぼす社会経済要因を探り、それらの要因が少子化関連施策の効果を受けて出生率上昇にどのように影響するか調査研究することを目的として行った。結婚・出生行動に影響する諸要因は、それぞれが別個に出生率等へ直接効果を及ぼすという単純な関係ではないため、施策の効果をみるには多くの変数の相互関係を総合的に把握する必要がある。
研究方法
本研究では4つの切り口から課題に接近した。第一に、計量経済学的な時系列のマクロ・シミュレーションモデルを構築し、家族・労働政策変数の変動が出生率に及ぼす効果を検証した。第二に、マクロモデルの前提となる社会経済要因と結婚・出生行動の因果関係について、実証分析から政策含意を導いた。第三に、地域の少子化や施策実施の現状について調査・分析を行い、地域における特徴と施策上の含意を導いた。
結果と考察
マクロモデル研究では、経済成長率の上昇等の経済環境の改善には家計所得の上昇を通じた出生率を高める効果と、女性就業率上昇を通じた出生率を低める効果があり、前者の効果の方が大きいことが分かった。また、家族・労働政策変数を組合せて変化させると出生率上昇効果が高い。よって、経済環境の改善に加えて労働環境の改善と子育て支援を組合せることでより大きな出生率の上昇が期待でき、この点から少子化対策として家族・労働政策を強力に進める必要性が示唆された。地域研究では、小規模自治体ほど人口減少が深刻で、子育て支援策より地域経済の改善といった総合的対応に迫られていることが分かった。大規模自治体では人口は増加傾向だが少子化状況は深刻で、子育て支援策の展開が優先課題として挙げられていた。自治体では保育整備等の対応が主となっており、労働政策分野での対応は難しいため、国レベルでの労働環境整備の必要性が強く示唆される。
結論
家族政策における保育や児童手当等の子育て支援水準や雇用労働環境が現状のまま留まると、将来の出生率について高い上昇効果が期待できない。よって、家族政策・労働政策の両者とも強力に推進される必要がある。また、地方自治体では労働政策分野での対応は難しいことが示されたことから、特に労働環境の整備については、国レベルでの強力な取組が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200701007B
報告書区分
総合
研究課題名
少子化関連施策の効果と出生率の見通しに関する研究
課題番号
H17-政策-一般-017
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 重郷(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 安藏 伸治(明治大学 政治経済学部)
  • 中嶋 和夫(岡山県立大学 保健福祉学部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本事業は、人口学、社会学、経済学ならびに保健福祉学の見地から、結婚・出生行動へ影響を及ぼす社会経済要因を探り、それらの要因が少子化関連施策の効果を受けて出生率上昇にどのように影響するか調査研究することを目的として行った。結婚・出生行動に影響する諸要因は、それぞれが別個に出生率等へ直接効果を及ぼすという単純な関係ではないため、施策の効果をみるには多くの変数の相互関係を総合的に把握する必要がある。
研究方法
本研究では3ヵ年にわたり、次の通り課題に接近した。第一に、計量経済学的な時系列のマクロ・シミュレーションモデルを開発・改良し、家族・労働政策変数の変動が出生率に及ぼす効果を検証した。第二に、マクロモデルの前提となる社会経済要因と結婚・出生行動の因果関係について、実証分析から政策含意を導いた。第三に、地域の少子化や施策実施の現状、有識者の少子化見通しについて調査を行い、独自データでの分析を行った。
結果と考察
マクロモデル研究では、経済成長率の上昇など経済環境の改善だけでなく、家族・労働政策の展開により、政策変数も組合せて変化させたときに出生率が効果的に高まることが分かった。このとき、シミュレーションでは現状のTFR1.32から2030年に1.6程度となる。この結果を用いて人口推計を行ったところ、現状のままだと2055年の総人口は現在の66%に縮小するが、経済成長と複数の政策展開により出生率が高まれば現在の73%程度の縮小となり、将来の人口減少・少子高齢化は緩やかなものになる。また、家族・労働政策の展開は女性の就業を促進して結婚・出産の機会費用を軽減する効果も期待され、これにより税収・消費等の増加から国家財政上の便益ももたらされるものと試算された。地域調査・分析では、人口規模により子育て支援策の水準や直面する行政課題が異なることが分かった。
結論
家族政策における保育や児童手当等の子育て支援水準や雇用労働環境が現状のまま留まると、将来の出生率について高い上昇効果が期待できない。従って、家族政策・労働政策の両者とも強力に推進される必要がある。これは結婚・出産の機会費用を低減させる効果を持ち、女性就業の促進・増加が国家的規模からみた財政上の便益(税収・消費等の増加)をもたらすとともに、将来の労働力供給の減少に対しても有効な対応策となる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200701007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、家族政策や労働政策が出生率に対してどのような影響・効果をもたらすのかをシミュレーションするマクロ経済モデルを開発した。これにより、今後、政策変数を計量可能な要素に詳細化することで、複合作用の評価等にも応用発展できる。さらに、次世代育成支援対策にかかわる自治体行動計画の評価改善に際して必要となる計画の評価手法を研究した。
臨床的観点からの成果
本研究は、臨床的分野の研究には該当しない。
ガイドライン等の開発
厚生労働省の検討会「次世代育成支援対策推進法による後期行動計画策定支援に係わる調査研究ワーキンググループ」へ、本研究の成果である「次世代育成支援対策に関する自治体調査の結果」を検討会の基礎資料として提供し、平成22年から始まる後期行動計画の策定のための材料を提供した。また、調査結果は、調査協力を頂いた全国の市区町村の自治体へ還元した。
その他行政的観点からの成果
「少子化の見通しに関する有識者調査」の結果を、平成18年9月29日に開催された厚生労働省の社会保障審議会人口部会(第8回)において報告した。報告内容は、分野別にみた専門家が、日本の将来の出生率動向や未婚率、寿命動向という将来の人口を推計するための基本的見通しを分析したもので、同審議会における出生率仮定の見通しの議論に活用された。なお、内容は厚生労働省のホームページ(http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/txt/s0929-1.txt)に掲載されている。
その他のインパクト
少子化対策の効果に関しては、日本人口学会第60会大会(2008年6月8日、日本女子大学)において「人口・家族政策の評価-少子化対策の効果を問う」というテーマセッションを組織し、研究成果を学会で広く討議した。本研究の成果のうち、「出生率の将来シミュレーションに基づく少子化対策効果の分析」(増田幹人)、および「次世代育成支援対策に関する自治体調査」(安藏伸治・鎌田健司)を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
和田光平
21世紀日本の少子化と人口動向
大淵寛・兼清弘之編著『 少子化の社会経済学』原書房  (2005)
原著論文2
増田幹人
第2子以上を考慮に入れた出生のモデルシミュレーション
人口学研究 , 38 , 57-72  (2006)
原著論文3
髙橋重郷
未婚労働力需要の拡大と未婚化現象
経済学論纂 , 47 (3) , 163-174  (2007)
原著論文4
大石亜希子
不妊治療支援についての一考察―家族属性の視点から―
経済学論纂 , 47 (3) , 403-416  (2007)
原著論文5
和田光平
コーホート分析と識別問題
経済学論纂 , 47 (3) , 745-755  (2007)
原著論文6
守泉理恵
結婚・出産の機会費用とその経済的損失:マクロデータによる試算
経済学論纂 , 47 (3) , 417-430  (2007)
原著論文7
増田幹人
就業人口および出生率に対する政策効果の分析
経済学論纂 , 47 (3) , 431-450  (2007)
原著論文8
増田幹人
出生順位を考慮に入れた少子化対策効果に関するシミュレーション分析
経済政策ジャーナル , 4 (2) , 15-18  (2007)
原著論文9
Wada Kohei
Declining Fertility Rate: Demographic Factors
JAPAN SPOTLIGHT Bimonthly  (2007)
原著論文10
守泉理恵
次世代育成支援対策
『人口減少時代の社会保障』 , 119-151  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-