胎児期・新生児期化学物質暴露による新たな毒性評価手法の確立とその高度化に関する研究

文献情報

文献番号
200638013A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児期・新生児期化学物質暴露による新たな毒性評価手法の確立とその高度化に関する研究
課題番号
H17-化学-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 勉(星薬科大学 薬品毒性学教室)
  • 手島玲子(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
  • 黒川昌彦(九州保健福祉大学 薬学部)
  • 今井俊夫(国立医薬品食品衛生研究所 病理部 )
  • 広瀬明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
26,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難分解・高蓄積性化学物質に対応できる、げっ歯類での発達期暴露影響評価系の確立と、国際的調和に基づいた化学物質リスク評価法の確立を目的として、以下の研究を行った。
研究方法
甲状腺機能低下による発達期毒性が示唆される臭素化難燃剤を例とした影響評価系の確立を、抗甲状腺剤を比較対照として行った。難燃剤はデカブロモディフェニルエーテル(DBDE)を終了し、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、或いは更にテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)を評価した。神経発達かく乱影響評価では、母ラットに妊娠中期から離乳時まで投与し、児動物のニューロン、白質について、成熟後の形態計測と投与終了時のマイクロアレイ解析を行った。同様のモデルを用い、神経機能・行動影響評価では中枢性薬物に対する反応性、異常行動関連脳部位でのモノアミン解析を行い、免疫機能影響評価ではリンパ球サブポピュレーションの割合等を解析した。感染影響評価ではRSウイルス・マウス感染モデルで肺の感染価やサイトカイン量を測定した。発がん性評価ではラットに幼若期暴露後発がん物質処置して、多臓器発がん性の検出を図った。また17年度に引き続き、過去の評価事例について不確実係数の決定やTDI算定の出発根拠を調査した。
結果と考察
神経発達かく乱影響評価では、抗甲状腺剤でニューロンの発達過程での移動への影響の定量評価法を確立したが、DBDEでは影響を認めなかった。白質形成はDBDEと同様HBCDの高用量で低下したが、TBBPAでは認めなかった。抗甲状腺剤とDBDEでの海馬CA1と白質特異的な発現変動遺伝子を同定した。神経機能・行動影響評価ではHBCDによる影響は認めなかった。免疫機能影響評価ではHBCDの高用量に離乳時のリンパ球サブポピュレーションの変動や、投与終了後の抗体産生能の抑制を認めた。感染影響評価ではDBDEとHBCDを評価し、前者では暴露量に依存した感染病態の悪化が見出されたが、HBCDで影響は認めなかった。発がん性評価では、DBDEで雌の甲状腺濾胞上皮細胞腺腫/癌と雌雄の腎間葉性腫瘍の発生が抑制された。評価方針の策定に関する研究では、調査情報を追加し、多くの例で付加的な不確実係数の適用を認め、その殆どがLOAELや短期試験結果の採択、評価試験データ不足によるものであった。
結論
発達期暴露評価に関しては、多くは抗甲状腺剤を対照とした評価系を確立し、DBDEと同様にHBCDでも中枢神経や免疫機能への影響とその用量反応性を確認した。また評価事例の動向を更に調査した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
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