木材防腐剤として使用される化学物質のリスク評価に関する研究

文献情報

文献番号
200638005A
報告書区分
総括
研究課題名
木材防腐剤として使用される化学物質のリスク評価に関する研究
課題番号
H16-化学-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
原田 孝則(財団法人残留農薬研究所 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂忠司(財団法人残留農薬研究所 毒性部)
  • 松元郷六(財団法人残留農薬研究所 毒性部)
  • 首藤康文(財団法人残留農薬研究所 毒性部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年度では、木材防腐剤として現在の使用量が多いアルキルアンモニウム化合物(AAC)及び銅・アルキルアンモニウム化合物(ACQ)を対象に種々の毒性試験を実施した。加えて、クロム・銅・ヒ素化合物(CCA)について低用量での追加試験を行った。
研究方法
AAC:急性経口・経皮毒性(ラット)、皮膚腐食性(ヒト皮膚三次元モデル)、皮膚感作性(マウス)、遺伝毒性(in vitro Comet Assay/マウス小核試験)及び4週間反復経口・経皮毒性(ラット)試験を実施した。ACQ:急性経口・経皮毒性(ラット)、皮膚感作性(マウス)及び4週間反復経皮毒性(ラット)試験を実施した。CCA:4週間反復経皮毒性(ラット)追加試験を実施した。
結果と考察
AACの毒性:急性経口・経皮毒性では、GSHカテゴリー4(LD50:経口300-2000 mg/kg)及び5(LD50:経皮2000 mg/kg以上)にそれぞれ分類された。皮膚腐食性は陽性・擬陽性を、皮膚感作性は陽性を示した。遺伝毒性は、陰性であった。反復経口試験では、高用量群(40 mg/kg)の約半数例が死亡し、生存動物では体重増加抑制、B及びT細胞数の減少、胸腺・脾臓の萎縮及び前胃のびらん・潰瘍が認められた。中用量群(8 mg/kg)では、雌に死亡例が1例観察された。反復経皮試験では、雌雄とも高用量群(100 mg/kg)で適用部位の出血、重度のびらん・潰瘍が観察され、中用量群(10 mg/kg)においても軽度ながら同様の変化がみられた。以上の結果から、反復経口・経皮試験ともに無毒性量(NOAEL)は1 mg/kgと判定された。
ACQの毒性:急性経口・経皮毒性では、カテゴリー4(LD50:経口300-2000 mg/kg)及び3(LD50:経皮200-1000 mg/kg)にそれぞれ分類された。皮膚感作性は陽性を示した。反復経皮試験では、高用量群(30 mg/kg)及び中用量群(10 mg/kg)で雌雄に適用部位に痂皮・表皮過形成が観察され、無毒性量は1 mg/kgと判定された。
CCAの毒性:反復経皮試験では、10 mg/kg投与群で適用部皮膚のびらん/潰瘍が観察され、無毒性量は1 mg/kgと判定された。
結論
代表的木材防腐剤について種々の毒性試験を実施し、各剤の毒性情報を集積するとともに反復投与試験における無毒性量を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200638005B
報告書区分
総合
研究課題名
木材防腐剤として使用される化学物質のリスク評価に関する研究
課題番号
H16-化学-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
原田 孝則(財団法人残留農薬研究所 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂忠司(財団法人残留農薬研究所 毒性部)
  • 松元郷六(財団法人残留農薬研究所 毒性部)
  • 首藤康文(財団法人残留農薬研究所 毒性部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、代表的木材防腐剤であるクロム・銅・ヒ素化合物(CCA)、銅・アルキルアンモニウム化合物(ACQ)及びアルキルアンモニウム化合物(AAC)を対象に種々の毒性試験を実施した。
研究方法
上記の3剤について、急性経口・経皮毒性(ラット)、皮膚腐食性(ヒト皮膚三次元モデル)、皮膚感作性(マウスLLNA法)、遺伝毒性(Ames test、in vitro Comet Assay、マウス小核)及び4週間反復経口・経皮毒性(ラット)試験を実施した。また、CCAについては中期皮膚発がんマウスモデルを用い催腫瘍性を検索した。
結果と考察
急性毒性ではLD50値からCCA(経口)とACQ(経皮)が劇物に分類され、その他の条件下ではいずれも普通物であった。皮膚感作性及び皮膚腐食性についてはCCA、ACQ、AACともに陽性を示した。遺伝毒性では、CCAの突然変異誘発性は陽性、染色体異常誘発性は疑陽性であった。ACQとAACのComet Assay及び小核試験はともに陰性であった。反復投与試験では、CCAは経口・経皮の両経路ともに成熟あるいは幼若動物に対し血液、肝臓、腎臓、消化管あるいは神経・免疫系に影響を及ぼすことが判明した。また、肝臓のメタロチオネインの発現には経路差(経口では抑制、経皮で亢進)が認められた。マウスの皮膚発がんモデルでは、紫外線照射による皮膚発がんに対するCCAのプロモーション効果が確認された。ACQ及びAACの反復投与試験では、経口経路においてACQは肝臓、消化管、免疫系に影響を及ぼし、酸化ストレスの関与が示唆された。AACでは消化管・免疫系に影響が認められた。一方、経皮経路では、両剤ともに適用部位に糜爛・潰瘍あるいは痂皮・表皮過形成が観察された。なお、ラットの反復投与試験におけるCCA、ACQ及びAACの無毒性量(NOAEL)は、経口経路ではそれぞれ1、8及び1mg/kg/dayであり、経皮経路ではすべて1 mg/kg/dayであった。
結論
代表的木材防腐剤であるCCA、ACQ及びAACの3剤について種々の毒性試験を実施し、各剤の毒性情報を集積するとともに反復投与試験における無毒性量を明らかにした。また、CCAについてはマウス中期皮膚発がんモデルを用い紫外線照射による皮膚発がんに対する促進効果が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200638005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
木材防腐剤CCA、ACQ、AACの毒性評価では、いずれの薬剤も皮膚感作性及び腐食性を示し、反復経口・経皮曝露では両経路ともに血液、肝臓、腎臓、消化管あるいは神経・免疫系に影響を及ぼすことが判明した。また、CCAは変異原性陽性(クロム・ヒ素の複合作用)で、皮膚発がんに対し促進効果を示した。CCA曝露による肝臓メタロチオネイン発現の経路差(経口で抑制、経皮で亢進)に関しては、メタロチオネインのDNAプロモーター領域のHistone H3K4のメチル化が関与している可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
CCA、ACQ、AACは、いずれも皮膚感作性及び腐食性を示し、反復曝露では貧血の誘発あるいは免疫系に影響を及ぼすことが示唆された。これらの毒性データは、アレルギー疾患や貧血予防の観点から、特に薬剤を直接取り扱う作業者安全を図る上で重要な情報と考えられる。また、ACQとAACの有効成分である四級アンモニウム化合物は粘膜刺激性があり、吸引した場合には気道系の炎症を誘発し、大量曝露では死に至ることから取り扱いには注意を要する。ただし、環境中での分解は早く環境汚染による危険性は低いものと考えられる。
ガイドライン等の開発
CCA、ACQ、AACなど皮膚腐食性のある化合物の反復経皮投与毒性試験を実施する際には、適切な投与量、適用時間、適用期間等を設定するため事前に被験物質の腐食性を確認する必要がある。その観点から、本研究で用いたin vitro ヒト皮膚三次元モデルは検出力も高く、動物愛護の精神に合致した有効なモデルである。また、遺伝毒性の解析において、ACQやAACなど有効成分に殺菌作用を有する物質を含む場合、細菌を用いるエームステストは無効のため、代替法としてのコメットアッセイが有効な試験法である。
その他行政的観点からの成果
国内で使用されている代表的木材防腐剤(CCA、ACQ、AAC)の毒性学的特性を明らかににするとともに、各剤の反復投与毒性試験における経口・経皮の両曝露経路での無毒性量(NOAEL)を判定した(経口:ACQ 8 mg/kg、他は1 mg/kg; 経皮:3剤とも全て1 mg/kg)。これらのデータは我が国の木材防腐剤の包括的リスク評価、環境基準値の設定あるいは家庭用品規正法に基づく法規制に役立つものと考えられる。
その他のインパクト
2005年3月3日に東京都内でCCAの毒性に関する公開セミナー(第5回IETセミナー)を実施し、我々の研究成果を発表するとともに、併せて、米国カルフォルニア大学デービス校の環境毒性学教授である松村文夫氏を招聘し、米国での木材防腐剤(特にCCA)のリスク評価の現状について講演を受けた。米国ではCCA処理木材のおが屑・チップを子供の遊技場に使用するため経口曝露の影響も懸念されている情報を得て、本研究において経口投与試験にも重点をおいた。また、国内外の種々の学術集会で成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
第22回日本毒性病理学会(4件)、 第33回日本トキシコロジー学会(1件)、 第13回日本免疫毒性学会(1件)、 第23回日本毒性病理学会(1件)
学会発表(国際学会等)
1件
第25回米国毒性病理学会、バンクーバー、2006年6月(演題数:1件)
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
2005年3月3日、東京、CCAの毒性に関する公開セミナー(第5回IETセミナー)実施

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2013-04-02
更新日
-