輸血用血液製剤中のエンドトキシンに関する研究

文献情報

文献番号
200637045A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液製剤中のエンドトキシンに関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H17-医薬-一般-055
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 重厚(岩手医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 信博(岩手医科大学 医学部)
  • 諏訪部 章(岩手医科大学 医学部)
  • 浅井 康文(札幌医科大学 医学部)
  • 池田 寿昭(東京医科大学 医学部)
  • 真弓 俊彦(名古屋大学 医学部)
  • 坂本 照夫(久留米大学 医学部)
  • 徳永 章二(九州大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 無菌的手術時に輸血を施行した患者の血中エンドトキシン値が上昇する症例を散見し、輸血に用いた濃厚赤血球、凍結人血漿、血小板のエンドトキシン値を測定すると陽性である検体がみられた。血液製剤中にエンドトキシンが検出されることは、エンドトキシンの生物活性を考えると非常に憂慮される問題である。我々は、多くの血液製剤中のエンドトキシンについて検討し、エンドトキシン陽性率について、また、エンドトキシン陽性の血液製剤の生物活性を検討する。さらに、感染症マーカーとして有用なプロカルチトニンと可溶性CD14サブタイプ、あるいは炎症性サイトカインを測定することにより、検出されるエンドトキシンが献血由来であるのか、献血後の処理過程における汚染であるのかを検討する。また、エンドトキシン陽性の血液製剤が生体に及ぼす影響について検討する。
研究方法
1)エンドトキシン値が陽性の血液製剤とエンドトキシン値が陰性の血液製剤が投与された患者の投与後の臨床症状について比較検討する。
2)エンドトキシン値が陽性の血液製剤とエンドトキシン値が陰性の血液製剤が投与された患者のCRP,IL-6等の炎症マーカーについて比較検討する。
3)エンドトキシン値が陽性の血液製剤とエンドトキシン値が陰性の血液製剤のサイトカイン産生能などについて比較検討する。
結果と考察
我々の研究結果では、輸血製剤中のエンドトキシン値陽性率は5.4%であった。この陽性率を確固たるものとするには、エンドトキシン値を測定する方法に言及しなければならない。今回我々が使用した高感度エンドトキシン測定法(比濁法)は、エンドトキシン特異的方法であることを確認した。FDAがエンドトキシン測定法として認可しているendotoxin activity assay(EAA)とEndosafe-PTSは特異的測定法ではないことが判明した。
結論
我々が用いた輸血用血液製剤中のエンドトキシン値陽性率は、高感度エンドトキシン測定法では約5.4%であることを改めて確認し、輸血用血液製剤の汚染原因を追跡調査する必要があることが判明した。しかしながら、現在、我々が使用している特異的測定法は結果を得るために2時間を要するため、集めた検体すべてを迅速に測定することに問題を抱えている。輸血用製剤の安全性を確立するためには、まず測定法の確立を第一に考えなければならない。FDAがエンドトキシン測定法として認可している機種が特異的適法ではないこと、これを血液製剤の測定あるいは薬剤等の測定手段として用いることの危険性を認識すること、そして高感度エンドトキシン測定法の迅速性を高めることの重要性を認識した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200637045B
報告書区分
総合
研究課題名
輸血用血液製剤中のエンドトキシンに関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H17-医薬-一般-055
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 重厚(岩手医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 信博(岩手医科大学 医学部)
  • 諏訪部 章(岩手医科大学 医学部)
  • 浅井 康文(札幌医科大学 医学部)
  • 池田 寿昭(東京医科大学 医学部)
  • 真弓 俊彦(名古屋大学 医学部)
  • 坂本 照夫(久留米大学 医学部)
  • 徳永 章二(九州大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我々は、無菌的手術時に輸血を施行した患者の血中エンドトキシン値が上昇する症例を散見し、輸血に用いた患者用の濃厚赤血球、凍結人血漿、血小板中のエンドトキシン値を測定した。濃厚赤血球5.3%、凍結人血漿20%、血小板7.4%の割合でエンドトキシン値が陽性であった。血液製剤中においてエンドトキシンが検出されることは、エンドトキシンの有する生物活性を考えると非常に憂慮される問題である。血液製剤中のエンドトキシンについて検討し、エンドトキシン陽性率について、またエンドトキシン陽性の血液製剤の生物活性を検討する必要がある。
研究方法
・大量に輸血を行う機会の多い全国の救命救急センターを中心に、輸血用に供給される赤血球、凍結人血漿、血小板中のエンドトキシン値を測定する。
・血液製剤中の可溶性CD14サブタイプ、プロカルチトニン、IL-6等の炎症反応のマーカーとなる因子について測定する。
・エンドトキシン値が陽性の血液製剤と、エンドトキシン値が陰性の血液製剤が投与された患者の、投与後の臨床症状について、CRP,IL-6等の炎症反応のマーカー、サイトカイン産生能などについて比較検討する。
結果と考察
 臨床に用いられている赤血球、血小板、凍結人血漿などの輸血用血液製剤中のエンドトキシン値陽性率は約5.4%であることが改めて確認された。この陽性率は、高感度エンドトキシン測定法(比濁法)で得られた結果であるが、FDAがエンドトキシン測定法として認可しているendotoxin activity assay(EAA)がエンドトキシン値を測定する特異的方法ではないことも判明した。
結論
 現在、我々が研究した中での輸血用血液製剤中のエンドトキシン値陽性率は約5.4%である。この汚染の原因を追跡調査することが今後も必要と考えられるが、それにはまず測定法を確立しなければならないことも判明した。
 今回我々が使用した高感度エンドトキシン測定法は、FDAが認可している機種での測定法と違ってエンドトキシン特異的方法であることが判明したが、現在の測定法では2時間を要するため、集めた検体すべてを迅速に測定できるよう改良することがまず第一と考えられる。それにより検体測定数も増し、更に陽性率を確固たるものにできると考える。また、現在、FDAの認可機種を用いて血液製剤の測定、あるいは薬剤等の測定をしている施設が存在するが、その危険性を認識させるべきと考える。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200637045C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 一般に臨床に用いられている赤血球、血小板、及び凍結人血漿などの輸血用血液製剤は本来無菌的であらねばならないが、今回の検討でエンドトキシン特異的測定法により赤血球、血小板、及び凍結人血漿中のエンドトキシン値を測定したところ、エンドトキシン陽性率は約5.4%であることが判った。今後、エンドトキシンが混入した原因を解明しなければならないことを示唆する成果が得られた。
臨床的観点からの成果
 エンドトキシンは多彩な病態を惹起する可能性のある毒素であり、血液製剤にエンドトキシンが含有されていることは、エンドトキシンに汚染された血液製剤を輸血することにより、これまで原因が不明であった輸血後の発熱、発疹などの一般的な症状の他に、あるいはまだ原因の分からない輸血関連急性肺障害(TRALI:Transfusion-Related Acute Lung Injury)などとの関連についても究明することの重要性を示唆した。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
 清潔な血液製剤を供給しなければならないという観点から、献血された血液を精製する過程において、どの時点でエンドトキシンに汚染したのかを調査する必要があることについて示唆した。測定にサイしては、特異的エンドトキシン測定法を用いる必要性について報告した。
その他のインパクト
 今回、我々が使用した高感度エンドトキシン測定法(比濁法)は、エンドトキシン特異的方法であることを確認し、現時点では世界でこれに優るものがないこと、またエンドトキシン値を正確に測定できる唯一のものであることを確認した。FDAがエンドトキシン測定法として認可し、日本にも輸入され、使用されているいくつかのエンドトキシン測定法は疑陽性反応を示し、エンドトキシン特異的測定法でなく、それらを用いてデータを解析する危険性について指摘した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
高感度エンドトキシン測定法について特許出願 中。
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
遠藤重厚、八重樫泰法、佐藤信博 他
新しい敗血症の診断マーカーである可溶性CD14サブタイプの有用性について
エンドトキシン血症救命治療研究会誌 , 9 (1) , 46-50  (2005)
原著論文2
遠藤重厚、八重樫泰法、佐藤信博 他
敗血症における可溶性CD14と可溶性CD14サブタイプの比較検討
Medical Postgraduates , 44 (4) , 51-55  (2006)
原著論文3
遠藤重厚、佐藤信博、鈴木泰 他
プロカルチトニン値はエンドトキシン吸着療法時の治療効果をよく反映する:症例報告
Medical Postgraduates , 45 (1) , 27-31  (2007)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-