薬効及び副作用発現の人種差に関わる遺伝子多型に関する研究

文献情報

文献番号
200637028A
報告書区分
総括
研究課題名
薬効及び副作用発現の人種差に関わる遺伝子多型に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H17-医薬-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 寛(千葉大学大学院薬学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿庭なほ子(国立医薬品食品研究所医薬安全科学部)
  • 越前宏俊(明治薬科大学薬学部)
  • 家入一郎(九州大学大学院薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は日本人と白人種の肝組織パネル、薬物動態や薬効発現に関するフェノタイプが明らかな患者DNA試料等を用いて、薬効及び副作用発現の人種差に関わる遺伝要因を明らかにしていくことである。
研究方法
ワルファリン感受性の人種差については、アジア人、白人、黒人データを統合し多変量解析を行った。UGTについては、日本人より得たEpstein-Barr ウィルス形質転換リンパ芽球細胞より採取したDNA及び手術で切除されたヒト肝組織を用いた。トランスポーターについては、日本人及び白人健常成人及び3人種のゲノム試料を用いた。核酸トランスポーターに関しては、MDCK22細胞株にhENT1, hCNT2,hCNT3及びhENT2を安定発現させた系と日本人ヒト肝臓検体を用いた。
結果と考察
1)ワルファリン投与量の人種差に関しては、VKORC1の1173 C>T変異の頻度が日本人で極めて高く、ワルファリン感受性を高める原因となっていることが明らかとなった。一方、CYP2C9の活性低下に関係する変異アレル頻度は日本人では低いため、ワルファリン投与量の人種差を説明するものではないことが明らかとなった。2)血中総ビリルビン濃度との関連解析より、Block 1の#28及び#6をそれぞれ単独でホモ接合体として持つか、あるいは両遺伝子変異を同時に有している場合にはUGT1A1の活性は低下することが明らかとなった。3)オルメサルタンの体内動態とOATP1B1 521T>Cの強い関与が認められ、C allele保有者で有意なAUCの上昇が観察された。多型解析では多くの変異を同定したが、一部は黒人で多い傾向にあった。4)リバビリンの肝取り込みに大きく寄与する核酸トランスポーターはhENT1であり、日本人肝臓検体におけるmRNAおよびタンパク発現量にはそれぞれ約5.6倍および約2.9倍の個人差が存在することが明らかとなった。
結論
1)白人ではCYP2C9のジェノタイピングは投与量と副作用の予測に有用であるが、アジア人と黒人においては投与量の予測には有用性が低い。2)白人種及び黒人種と異なり、日本人においては、Block 1の#28及び#6を有している個体ではUGT1A1の活性が低下する。3)オルメサルタンの体内動態にOATP1B1 521T>Cが影響を与える。SLCO1B3及びSLCO2B1の変異遺伝子の発現頻度には人種差が存在する。4)リバビリンの肝取り込みに主に関与する核酸トランスポーターはhENT1であり、そのmRNAおよびタンパク発現量には比較的大きな個人差が存在する。

公開日・更新日

公開日
2007-06-22
更新日
-