小児薬物療法におけるデータネットワークの実用性と応用可能性に関する研究

文献情報

文献番号
200637002A
報告書区分
総括
研究課題名
小児薬物療法におけるデータネットワークの実用性と応用可能性に関する研究
課題番号
H16-医薬-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石川 洋一(国立成育医療センター 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 櫛田 賢次( 国立成育医療センター 薬剤部)
  • 中村 秀文( 国立成育医療センター 治験管理室 )
  • 寺門 浩之(国立がんセンター中央病院 薬剤部)
  • 北園 芳文(日本製薬工業協会 医薬品評価委員会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児科領域における医薬品適応外使用の改善および治験・臨床試験の推進を目的として構築した「小児薬物療法データネットワーク」(全国32医療施設協力による)を運用して、1)全国規模の小児科領域処方実態調査(全例調査)、2)小児治験の実施・基盤整備の進捗・改善状況の調査と評価、その他の研究を実施し、本ネットワークの実用性と応用可能性を検証する。また、蓄積された情報の有効利用の方策を考案し行政・学会・製薬企業等に働きかけていく。
研究方法
1)小児科領域で汎用される医薬品の用法・用量の処方実態調査等を実施し、適応外使用医薬品等の薬用量設定根拠と問題点を明らかにする。2)平成14年度・17年度の全国小児治験アンケート調査結果を比較し小児治験の実施・基盤整備の進捗・改善状況を評価する。3)製造販売後特別調査においてその施設選定、症例登録作業の一部をネットワークおよび本研究班による小児臨床試験候補施設選定案を利用して実施し、従来の調査方法と比較して有用性を評価する。4)添付文書における「小児等への投与」の項の記載状況と、製薬企業が有している製造販売後調査等による小児での使用情報の有無について調査する。
結果と考察
1)薬用量設定根拠については個別の医薬品のエビデンスよりもAugsbergerの式による換算値を基にした情報が広く利用されていた。また添付文書が小児の臨床現場では用量設定に有効でない現状が示唆された。2)治験支援体制は整備されつつあるが小児専門病院での体制整備は治験専門職員配置などでいまだ不十分であると推測された。今後小児施設に更なる支援が必要と考えられた。3)製造販売後特別調査では、本選定案・ネットワーク使用は有効であるが、専門性の高い医薬品では効果が十分明らかにならず、幅広い診療科で用いられる医薬品でより有効であると考えられた。4)添付文書調査では、記載が安全性の注意喚起に関するものが殆どであり、製薬企業が収集している小児の調査情報が臨床に有効な記載に結びついていないことが明らかになった。
結論
ネットワークによる調査で、適応外使用医薬品の薬用量設定根拠の実態および治験・臨床試験の基盤整備状況など多くの情報を明らかにできた。調査結果をもとに今後も製薬企業等に働きかけていく。なお本ネットワークは研究結果の実績を評価され、厚生労働省「小児薬物療法根拠情報収集事業」の国内実態調査にも実用されるものとなった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200637002B
報告書区分
総合
研究課題名
小児薬物療法におけるデータネットワークの実用性と応用可能性に関する研究
課題番号
H16-医薬-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石川 洋一(国立成育医療センター 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 櫛田 賢次(国立成育医療センター 薬剤部)
  • 中村 秀文(国立成育医療センター 治験管理室)
  • 加藤 裕久(国立がんセンター中央病院 薬剤部)
  • 寺門 浩之(国立がんセンター中央病院 薬剤部)
  • 山口 正和(国立病院機構 東京医療センター 薬剤部)
  • 岩崎 利信(日本製薬工業協会 医薬品評価委員会)
  • 北園 芳文(日本製薬工業協会 医薬品評価委員会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児科領域における医薬品適応外使用の改善および治験・臨床試験の推進を目的として構築した「小児薬物療法データネットワーク」(全国32医療施設協力)を運用して、1)全国規模の小児科領域処方実態全例調査、2)小児治験の実施・基盤整備の進捗・改善状況調査と評価・結果の応用、等の研究を実施し、その実用性と応用可能性を検証する。また、医療施設・製薬会社に蓄積された小児薬物療法の情報を有効利用する方策を考案し医薬品の適正使用推進に向けて行政・学会・製薬企業に働きかける。
研究方法
1.小児科領域の適応外使用医薬品処方実態調査を行い、1)適応外使用医薬品の実態、2)剤形変更状況の実態、3)汎用医薬品の用法・用量の実態を調査した。
2.平成14年度・17年度にアンケート調査を実施し、全国小児治験の実施・基盤整備の進捗・改善状況を比較して評価を行った。また小児臨床試験候補施設選定案を作成して製造販売後調査をモデル実施し評価を行った。
3.製造販売後調査等で収集された小児等への使用に関する情報を添付文書の適正化に活用できないか、記載のルール化ができないかを含め検討した。

結果と考察
1.小児科領域の適応外使用医薬品処方実態調査では以下を明らかにした。1)ジアゼパム適応外使用1746件の実態、2)ワーファリンを含む369医薬品1666件の投与剤形変更の実態、3)汎用医薬品の用法・用量の実態とその設定根拠等。これらは実数として明らかにされたことは殆ど無く、医薬品適正使用に向けた情報として本調査結果は貴重である。
2.小児治験体制整備は進展をみるも、施設の設備、治験専門職員の配置などが今だ不十分で小児施設に更なる支援が必要と考えられた。製造販売後調査をモデル実施し、本研究の施設選定案は医薬品の種類によって有効であると考えられた。
3.製造販売後調査等で収集した小児の調査結果や、薬物動態データについて、現状では添付文書の改善には活かされていなかった。改善・ルール化は困難で様々な取り組みが必要だが、今後も働きかけたい。

結論
本ネットワークには十分な実用性があり、今後の応用可能性についても期待されることが確認され、研究では今までにない多くの貴重なデータが得られた。実績を評価され厚生労働省「小児薬物療法根拠情報収集事業」の国内実態調査に参画し、すでにメトトレキサートカプセルの調査を行った。投与剤形変更問題は継続して調査を進める必要がある。全国小児治験の実施・基盤整備状況も継続して調査し、行政・学会に対して臨床施設の現状を発信すべきである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200637002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小児科領域における1)適応外使用医薬品の実態、2)剤形変更状況の実態、を限定された品目ではあるが明らかにし、適応外使用医薬品問題の実態を指摘することが出来た。これらは問題として認識されながらも実数として明らかにされたことは殆ど無く、本調査結果は貴重であり、行政・学会・製薬企業に有効な情報提供を行うことが出来た。医師主導治験実施ではフェンタニル注のデータが治験薬選定に活用された。
臨床的観点からの成果
本研究の適応外医薬品の実態調査報告により、小児用剤形のない医薬品について、製薬企業が数社、開発を検討するに至った。医薬品が発売に進めば、今まで適切な剤形が無く負担を負っていた小児患者に対する貢献は大きなものである。特にミダゾラム注射剤の内服薬での使用、各施設で大量に行われるワルファリン錠剤粉砕等は、行政・学会・製薬企業共に大きな問題となった。
ガイドライン等の開発
小児治験推進のために全国調査の結果を用いて小児臨床試験候補施設選定案を作成した。本選定案を用いて製薬企業の治験、医師主導治験、製造販売後調査を実施すれば、施設選定を迅速化することができる。17年度には、製薬企業の抗生物質点眼薬治験で有用性が実証された。
その他行政的観点からの成果
本研究は実績を評価され「小児薬物療法根拠情報収集事業」の国内使用実態調査に参画し、メトトレキサートカプセルの若年性特発性関節炎の効能・効果ですでに調査を開始した。今後は小児薬物療法検討会議の選定方針にしたがって調査を進める。医薬品医療機器総合機構の安全性調査では小児薬物療法に関する医療機関ネットワーク試行調査において「小児科領域での輸液、維持液投与後の低ナトリウム血症に関する調査」などを実施している。
その他のインパクト
平成18年7月30日午後7時のNHKニュース他で本研究班の小児薬物療法における剤形変更問題について報道され、小児科領域において小児に使用しやすい剤形が必要であること、施設の薬剤師が安全確保に務めながら対応している状況が国民に伝わり反響を呼んだ。
薬事日報やJapan Medicineなどで小児薬物療法の適応外使用問題が取り上げられ改善の必要性を訴えることが出来た。

発表件数

原著論文(和文)
2件
日本小児臨床薬理学会雑誌,日本病院薬剤師会雑誌
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
日本小児科学会,日本小児臨床薬理学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
小児薬物療法根拠情報収集事業
その他成果(普及・啓発活動)
1件
大西班普及啓発事業「適応外使用からの脱却の道 その3:本格的解決の開始にむけて」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
石川洋一,櫛田賢次,中村秀文,他
小児薬物療法における適応外使用医薬品に関する実態調査
日本小児臨床薬理学会雑誌 , 18 (1) , 103-107  (2005)
原著論文2
石川洋一
小児薬物療法におけるデータネットワーク研究の取り組み
日本病院薬剤師会雑誌 , 41 (10) , 1213-1218  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-