ダイオキシン類による食品汚染実態の把握に関する研究

文献情報

文献番号
200636016A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシン類による食品汚染実態の把握に関する研究
課題番号
H16-食品-一般-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 久美子(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷 民雄(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
  • 天倉 吉章(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
  • 堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
  • 中川 礼子(福岡県保健環境研究所保健科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
61,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類(DXNs)、臭素系DXNsとその関連化合物の食事経由摂取量の把握、食品汚染実態の把握、食品中DXNs分析法の開発を目的とした。
研究方法
(1)全国9機関で調製したトータルダイエット(TDS)試料中のDXNsを分析し、一日摂取量を算出した。(2)市販魚介類及び鶏卵(42試料)についてDXNsを分析した。また、汚染浄化技術の基礎検討として、形質転換植物についてDXNs吸収能を検討した。(3)表面プラズモン共鳴装置を用いた市販魚中のDXNsに対するバイオアッセイを、抗PCBs抗体を使用して検討した。また、高速溶媒抽出法(ASE)についてTDS試料を対象に、大量注入装置と組み合わせた分析法を検討した。(4)臭素系DXNsと臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)の摂取量調査、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDs)の分析法の検討と摂取量調査を実施した。
結果と考察
(1)DXNsの平均一日摂取量は1.04 pgTEQ/kg/dayであった。(2)DXNs濃度が最も高かった試料は、あんこうの肝(14及び27 pgTEQ/g)であった。また、形質転換シロイヌナズナは、DXNs吸収量が多かった。(3)本バイオアッセイはコプラナーPCBsの毒性等量に対し、良好な相関性を示した。また、ASEにより抽出時間が大幅に短縮されたが、1,2,3,7,8-PeCDF等の分析の際、夾雑物の影響があった。(4)臭素系DXNs及びPBDEsの一日摂取量は、0.00071 pgTEQ/kg/day及び1.83 ng/kg/dayであった。また、HBCDsの一日摂取量は1.80 ng/kg/dayであった。
結論
(1)DXNsの平均一日摂取量はTDIを大きく下回っていた。(2)あんこうの肝で高濃度のDXNsが検出されたが、食品摂取量が限られるため大きな問題は生じないと考えられる。また、シロイヌナズナ形質転換株はDXNs除去植物としての可能性が示唆された。(3)本バイオアッセイは、市販魚中DXNsのスクリーニング法として有望であった。また、一部のDXNs定量に問題はあるが、ASEはTDS試料のDXNs分析の迅速化に役立つと考えられる。(4)臭素系DXNs、PBDEs及びHBCDs摂取量は人体に影響ないレベルと考えられる。しかし、汚染源と考えられる難燃剤製品の廃棄が今後、増加する恐れがあり、継続した調査が必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-07-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200636016B
報告書区分
総合
研究課題名
ダイオキシン類による食品汚染実態の把握に関する研究
課題番号
H16-食品-一般-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 久美子(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷 民雄(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
  • 天倉 吉章(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
  • 堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
  • 中川 礼子(福岡県保健環境研究所保健科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類(DXNs)及び臭素化DXNsとその関連化合物の食事経由摂取量の把握,食品汚染実態の把握,食品中DXNs分析法の開発を目的とした.
研究方法
(1)毎年度,全国の9機関においてトータルダイエット(TDS)試料を調製し,DXNsを分析した.(2)魚介類を中心にDXNsを分析した.また,汚染浄化技術として,形質転換植物についてDXNs吸収能を検討した.(3)魚中のDXNsスクリーニング法として,AhイムノアッセイとPCB ELISAを組み合わせたバイオアッセイ,及び表面プラズモン共鳴装置を用いたバイオアッセイを検討した.食品試料からの新しいDXNs抽出法として,高速加熱流下抽出法と高速溶媒抽出法を検討した.また,魚油を使用した健康食品の臭素化DXNs及び関連化合物の汚染調査を行った.(4)5地域で調製したTDS試料について,臭素化DXNs及び臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)を分析した.さらに,四臭素化ビスフェノールA(TBBPA)及びヘキサブロモシクロドデカン(HBCDs)について摂取量の予備調査を行った.
結果と考察
(1)3年間のDXNsの平均一日摂取量は,1.0-1.4 pgTEQ/kg/dayであった.(2)一部の鮮魚及び魚介類の内臓部では,DXNs濃度が高い傾向があった.形質転換シロイヌナズナはDXNs吸収量が多かった.(3)バイオアッセイは従来法に対し,良い相関を有していた.新しい抽出法は,短時間でDXNsを抽出できた.一部の健康食品は,高濃度の臭素化DXNs関連化合物に汚染されていた.(4)臭素化DXNs,PBDEs,TBBPA及びHBCDsの一日摂取量はそれぞれ,0.00056 pgTEQ/kg/day,2.09 ng/kg/day,0.6 ng/kg/day,1.8 ng/kg/dayであった.
結論
(1)DXNsの平均一日摂取量は耐容一日摂取量を下回っていた.(2)DXNs摂取量を減らすためには,一部の鮮魚や内臓部の多食を避けることが望ましい.形質転換株はDXNs除去植物としての可能性が示唆された.(3)バイオアッセイ及び新しい抽出法は,DXNs分析の迅速化に貢献すると考えられる.一部の健康食品の常用量には,耐容一日摂取量を超えるDXNsが含まれており注意が必要であった.(4)臭素化DXNs及びそれらの関連化合物の摂取量は人体に影響しないレベルと考えられた.

公開日・更新日

公開日
2007-09-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200636016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ダイオキシン類一日摂取量の全国平均値は,1.0-1.4 pgTEQ/kgbw/dayの間で推移しており,耐容一日摂取量を下回っていた.魚介類の内臓など脂肪含量が高い部位,及び魚油を使用した健康食品は,高濃度のダイオキシン類に汚染されている場合があった.バイオアッセイや新しい抽出法を評価した結果,食品中ダイオキシン類分析の迅速化に大きく貢献できることを明らかにした.臭素化ダイオキシン類等を対象にした摂取量調査では,予備的な結果も含まれているが,毒性学的に懸念を与える摂取量ではないと考えられた.
臨床的観点からの成果
臨床と関わりのない調査研究である.
ガイドライン等の開発
ガイドラインの開発に係わる基礎検討として,新しい抽出法である高速加熱流下抽出法,及び高速溶媒抽出法による食品試料からのダイオキシン類抽出の評価を行った.その結果,両抽出法とも良好なダイオキシン類抽出効率を有することが明らかになった.また,現在の食品中ダイオキシン類分析のガイドライン(厚生労働省)において汎用されている抽出法と比較し,抽出時間を十分の一程度に短縮できた.これらの基礎データは,将来,本ガイドラインが改正される際に,代替抽出法の利用について重要な知見を与えるものと考えられる.
その他行政的観点からの成果
ダイオキシン類の摂取量調査結果及び個別食品の汚染調査結果については薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において,報告事項として提示された(合計3回).また,摂取量調査結果は,環境省がまとめている「環境統計集」で引用されている.さらに,本研究に関連して行った健康食品の汚染調査結果により,イタチ鮫の肝油を使用した製品を摂取した場合,ダイオキシン類摂取量が耐容一日摂取量を超えることが明らかになったことから,該当製品の販売中止と回収作業が行われた(厚生労働省より平成18年8月25日にプレスリリース).
その他のインパクト
本研究成果の一部を含む食品中のダイオキシン分析技術が,平成18年2月22日に西日本新聞及び毎日新聞に記事として掲載された.また,「第306回福岡県保健環境研究所集談会」(平成17年6月)において,「食品中のダイオキシン類について」の題目で,本研究成果の一部を発表した.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hori, T., Tobiishi, K., Ashizuka, Y. et al.
Comparison of accelerated solvent extraction and standard shaking extraction for determination of dioxins in foods
Organohalogen Compounds  (2004)
原著論文2
Ashizuka, Y., Nakagawa, R., Hori, T. et al.
Levels of poly-brominated diphenyl-ethers and poly- brominated dioxins in fish, total diet study food groups and Japanese meals
Organohalogen Compounds  (2004)
原著論文3
Ashizuka, Y., Nakagawa, R., Hori, T. et al.
Determination of polybrominated diphenyl ethers(PBDEs) and polybrominated dibenzo-p-dioxins, dibenzofurans (PBDD/DFs) in marine products
J. Agri. Food Chem.  (2005)
原著論文4
Tsutsumi, T., Amakura, Y., Ashieda, K. et al.
Screening for dioxins in retail fish using a combination of a PCB ELISA and an aryl hydrocarbon receptor immunoassay (Ah-immunoassay)
Organohalogen Compounds  (2005)
原著論文5
Nakagawa, R., Ashizuka, Y., Hori, T. et al.
Determination of brominated retardants in fish and market basket food samples of Japan
Organohalogen Compounds  (2005)
原著論文6
Tsutsumi, T., Amakura, Y., Matsumoto, T. et al.
Removal of dioxins from retail fish by high-speed solvent extraction
Organohalogen Compounds  (2006)
原著論文7
Nakagawa, R., Ashizuka, Y., Hori, T. et al.
Determination of brominated flame retardants and brominated dioxins in fish collected from three regions of Japan
Organohalogen Compounds  (2006)
原著論文8
Tsutsumi, T., Amakura, Y., Okuyama, A. et al.
Application of an ELISA for PCB 118 to the screening of dioxin-like PCBs in retail fish
Chemosphere  (2006)
原著論文9
Tsutsumi, T., Amakura, Y., Sasaki, K. et al.
Dioxin concentrations in the edible parts of Japanese common squid and saury
J. Food Hyg. Soc. Japan  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-