細菌性食中毒の予防に関する研究

文献情報

文献番号
200636013A
報告書区分
総括
研究課題名
細菌性食中毒の予防に関する研究
課題番号
H16-食品-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高鳥 浩介(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 五十君 靜信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の食生活は海外とは大きく異なるため、日本独自の微生物学的リスクアセスメントモデルを策定してリスク管理措置を検討し食中毒発生防止を図る必要がある。
研究方法
ベロ毒素(VT)遺伝子検出のためのDNA抽出法を各種食品で検討した。LAMP法を使って輸入牛肉からのVT遺伝子検出を行った。RT・マルチプレックスPCR法を用いた8種類の下痢原性大腸菌検出系のプライマーとプローブを設計した。サルモネラをエビに接種し冷凍保存での消長を計測した。カンピロバクターについて、リスクプロファイルを行った。非加熱喫食食品の原材料から最終製品に至る工程でリステリア危害分析を行った。ナチュラルチーズからのリステリアの迅速検出法を検討し、さらに病原因子と環境抵抗因子に関して遺伝学的に解析を行った。食中毒事例における原因食品中の食中毒細菌の菌数測定を全国の地方自治体に依頼しデータを収集した。
結果と考察
VT遺伝子検出のためのDNA抽出法を各種食品から検出することができた。輸入牛肉での検出の結果、腸管出血性大腸菌が検出され、分離株はOUT、O128およびO8であった。RT・マルチプレックスPCR法を用いてDEC系のプライマーとプローブを設計できた。冷凍エビでサルモネラ汚染により、長期間生存すること明らかになった。カンピロバクターのリスクアセスメントで定量的食中毒データが不足していた。魚卵加工品製造施設の危害分析から、リステリアに関してもHACCPによる衛生管理が有効であることが確認された。ナチュラルチーズは、リステリアに関しハイリスク食品であり、リステリアの病原因子と環境抵抗性の検討から、新規の知見が得られた。腸管出血性大腸菌およびサルモネラにおいては患者一人当たり10未満および1,000未満の非常に少ない摂取量でも感染が成立することが推定された。
結論
輸入牛肉からのVT遺伝子検出により腸管出血性大腸菌の汚染を確認した。
冷凍エビでサルモネラ汚染により、長期間生存することから、エビの衛生的取り扱いが必要とされる。カンピロバクターのリスクアセスメントで定量的食中毒データが不足していた。
魚卵加工品製造施設の危害分析から、衛生管理事項の再点検と衛生管理方法のあり方、定期的な検査実施の重要性を示した。腸管出血性大腸菌およびサルモネラにおいて少量摂取でも感染が成立することから食品中での細菌の増殖が抑えられる取り扱い条件が重要である。

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200636013B
報告書区分
総合
研究課題名
細菌性食中毒の予防に関する研究
課題番号
H16-食品-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高鳥 浩介(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 五十君 靜信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の食生活は海外とは大きく異なるため、日本独自の微生物学的リスクアセスメントモデルを策定してリスク管理措置を検討し食中毒発生防止を図る必要がある。
研究方法
ベロ毒素(VT)遺伝子検出のためのPCR法およびDNA抽出法を食品で検討した。LAMP法により輸入牛肉からのVT遺伝子検出を行い、併せて下痢原性大腸菌検出系を検討した。サルモネラの野菜・香辛料および魚介類汚染を検討した。カンピロバクターのリスクプロファイルを行い、汚染実態調査によりデータ収集した。非加熱喫食食品の製造工程に従ってリステリアの危害分析を行い制御の方向性を検討し、魚卵加工製品中での本菌の消長を調べた。ヒトリステリア症の疫学的情報収集等を行い、分離株の病原性および環境抵抗性を検討した。食中毒事例における原因食品中の食中毒細菌の菌数測定を地方自治体に依頼した。
結果と考察
O157以外の血清型を含む腸管出血性大腸菌の食品からの検出法にVT遺伝子検査法が有効であった。輸入牛肉から本菌が検出され、分離株はOUT、O128およびO8であった。RT・マルチプレックスPCR法を用いた下痢原性大腸菌検出系が確率できた。香辛料や冷凍エビでサルモネラ汚染が明らかになり食中毒予防に資する情報が得られた。日本でのカンピロバクターの定量的リスクアセスメントモデル構築を試み、管理ポイントを指摘した。非加熱喫食食品の製造工程に従ってリステリアの危害分析を行った。HACCPによる衛生管理が有効であり、衛生管理事項の再点検と洗浄・殺菌および定期的な細菌検査によって衛生状態を確認することが重要であった。リステリア菌株の病原性および環境抵抗性に新規な知見を得た。食中毒細菌は、菌種によっては100未満の少ない摂取量でも感染が成立することが推定された。
結論
牛肉での腸管出血性大腸菌の汚染が認められ、今後日本での流通牛肉全体の汚染率や菌株解析等の汚染調査により食中毒防止に役立てられる。香辛料やエビのサルモネラ汚染を考慮して食品の取り扱いを行う必要がある。日本での定量的リスクアセスメントモデル構築を試み、管理ポイントを指摘した。魚卵加工品製造施設の衛生管理事項の再点検と衛生管理方法のあり方、定期的な検査実施の重要性を示した。分離株の病原性等の情報からリステリア症に係わる成果が得られた。食中毒細菌の非常に少ない摂取量でも感染が成立することがわかった。

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200636013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ベロ毒素遺伝子検出のためのPCR法およびDNA抽出法を食品で検討した。LAMP法により輸入牛肉からのVT遺伝子検出を行い、下痢原性大腸菌検出系を検討した。カンピロバクターのリスクプロファイルを行い、汚染実態調査によりデータ収集した。非加熱喫食食品の製造工程に従ってリステリアの危害分析を行い制御の方向性を検討した。魚卵加工製品のリステリア汚染による菌の消長を調べた。ヒトのリステリア症の情報収集や疫学的情報を行い、分離株の病原性および環境抵抗性を検討しそれぞれの成果が得られた。
臨床的観点からの成果
食中毒事例における原因食品中の食中毒細菌の菌数測定を地方自治体に依頼した。食中毒細菌は、菌種によっては100未満の少ない摂取量でも感染が成立することが推定され食中毒細菌の非常に少ない摂取量でも感染が成立することがわかった。ヒトのリステリア症の情報収集や疫学的情報を行い、分離株の病原性および環境抵抗性に関して検討した。その結果、リステリア菌株の病原性および環境抵抗性に関して新規な知見を得た。
ガイドライン等の開発
腸管出血性大腸菌の検査法として厚労省監視安全課から通知を出した。
その他行政的観点からの成果
食中毒事例における原因食品中の汚染菌数に関する研究については、全国の地方自治体に原因食品中の食中毒細菌数測定について調査依頼を行った。17事例での報告があり、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、毒素原性大腸菌、カンピロバクターおよび腸炎ビブリオについて少数での菌数の汚染食品でも感染の危険性があることが示された。
その他のインパクト
2005年11月に第89回日本食品衛生学会学術講演会において、シンポジウム“Listeria monocytogenesの研究動向”を開催した。
2005年11月に第89回日本食品衛生学会学術講演会において、シンポジウム“Campylobacter食中毒の制御”を開催した。
2006年9月に第27回日本食品微生物学会において、シンポジウム“日本を震撼させたO157による集団食中毒―その後の10年”を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
細菌性食中毒の予防に関する研究を報告した。
原著論文(英文等)
20件
細菌性食中毒の予防に関する研究を報告した。
その他論文(和文)
14件
細菌性食中毒の予防に関する研究を報告した。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
62件
細菌性食中毒の予防に関する研究を報告した。
学会発表(国際学会等)
5件
細菌性食中毒の予防に関する研究を報告した。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「腸管出血性大腸菌O157及びO26の検査法について」平成18年11月2日通知
その他成果(普及・啓発活動)
3件
“Listeria monocytogenesの研究動向” “Campylobacter食中毒の制御” “日本を震撼させたO157による集団食中毒―その後の10年”

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Y. Hara-Kudo, H. Watanabe, H. Konuma
Differences in survival of Escherichia coli O157:H7 under various conditions that reenacts the cooking of lunches implicated in an outbreak of hemorrhagic diarrhea.
Epidemiology and Infection , 133 , 1043-1048  (2005)
原著論文2
工藤由起子、三輪憲永、山﨑省吾、他
魚介類からのVibrio vulnificusの定量検出方法の検討
感染症学会誌 , 79 , 931-936  (2005)
原著論文3
工藤由起子、尾上洋一、中川弘、他
小規模液卵製造工程のモニタリングによる微生物学的問題点とその改善について
日本食品衛生学会誌 , 47 , 119-126  (2006)
原著論文4
Y. Hara-Kudo, K. Ohtsuka, Y. Onoue, et al.
Salmonella prevalence, total microbial and spore populations in imported spices to Japan.
J. Food Prot. , 69 , 2519-2523  (2006)
原著論文5
Y. Hara-Kudo, J. Nemoto, K. Ohtsuka, et al.
Sensitive and rapid detection of Vero toxin-producing Escherichia coli using Loop-mediated isothermal amplification.
J. Med. Microbiol. , 56 , 398-406  (2007)
原著論文6
H. Takahashi, Y. Hara-Kudo, J. Miyasaka, et al.
Development of a quantitative real-time polymerase chain reaction targeted to the toxR for detection of Vibrio vulnificus.
J. Microbiol. Method , 61 , 77-85  (2005)
原著論文7
S.I. Makino, K. Kawamoto, S. Igimi, et al.
An outbreak of food-borne listeriosis due to cheese in Japan, during 2001.
Int. J. Food Microbiol , 104 , 189-196  (2005)
原著論文8
Y. Okada, S. Yamamoto, S. Igimi, et al.
The sigma factor, RpoN (sigma54) is involved in osmotolerance in Listeria monocytogenes.
FEMS Microbiol. Lett. , 263 , 54-60  (2006)
原著論文9
H. Takahashi, Y. Iwade, Y. Hara-Kudo, et al.
Development of a Quantitative Real-Time PCR Method for Estimation of the Total Number of Vibrio parahaemolyticus in Contaminated Foods.
J. Food Prot. , 68 , 1083-1088  (2005)
原著論文10
H. Hayashidani, Y. Hara-Kudo, S. Kinoshita, et al.
Differences in heat resistance among pathogenic Yersinia enterocolitica depended on growth temperature and serotype.
J. Food Prot. , 68 , 1081-1082  (2005)
原著論文11
K. Ohtsuka, K. Yanagawa, K. Takatori, et al.
Loop-mediated isothermal amplification for rapid detection of Salmonella in unpasteurized liquid egg and typing of the isolates.
Appl. Environ. Microbiol. , 71 , 6730-6735  (2005)
原著論文12
J. Miyasaka, S. Yahiro, Y. Hara-Kudo, et al.
Isolation of Vibrio parahaemolyticus and Vibrio vulnificus from wild aquatic bird in Japan.
Epidemiol. Infect. , 134 , 780-785  (2006)
原著論文13
E. Koujitani, T. Horisaka, Y. Hara-Kudo, et al.
Immuno-magnetic separation and agar layer methods for the Isolation of freeze-injured Yersinia enterocolitica O:8 from water.
J. Vet. Med. Sci. , 68 , 195-199  (2006)
原著論文14
Y. Otomo, K. Abe, K. Takatori, et al.
Detection of Salmonella in spent hens and eggs associated with food-borne infections. Avian Diseases.
Avian Diseases  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-