ウイルス性食中毒の予防に関する研究

文献情報

文献番号
200636012A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス性食中毒の予防に関する研究
課題番号
H16-食品-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
武田 直和(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 春日 文子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所)
  • 小林 慎一(愛知県衛生研究所微生物部)
  • 恒光 裕(動物衛生研究所ウイルス病研究チーム)
  • 有川 二郎(北海道大学大学院医学研究科附属動物実験施設)
  • 米山 徹夫(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 李 天成(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子増幅による定量法を確立する。免疫学的手法を用いた濃縮法を導入し、食品由来ウイルスの検出効率の向上を目指す。食品や環境中のウイルス汚染実態調査を行う。感染実験モデルを構築する。リスクプロファイルを作成し、リスクアセスメントモデルを構築する。
研究方法
イノシシ、シカ、ブタの血清、便、肝臓を用いて、E型肝炎検査マニュアルにしたがって、抗体、抗原、HEV遺伝子を検出した。ノトバイオート豚でHEV感染実験を行なった。リアルタイムPCRを用いてNoVの汚染状況を調べた。NoVによる食中毒についての定量的リスクアセスメントのためのモデルを作成し、NoV集団食中毒の発生件数の推定を試みた。
結果と考察
RT-LAMP法によるA型肝炎ウイルス遺伝子迅速検出法を確立した。A型肝炎ウイルス感染のリスクアナリシスのためのリスクプロファイルを作成した。E型肝炎ウイルスのレザーバーと考えられるシカ、イノシシについて抗体を調査した。同時に、RT-PCRによりウイルス遺伝子を確認し、塩基配列の解読、分子系統解析系で遺伝子型を同定した。豚についても同様に行なった。ブタの感染実験から発症ウイルス量を推定した。E型肝炎ウイルス感染のリスクアナリシスのためのリスクプロファイルを作成した。ノロウイルスリアルタイムPCR法用い食品の汚染実態調査を行った。高力価抗血清でイムノ磁気ビーズを作製し、食品に含まれるノロウイルスの濃縮法を検討した。ノロウイルス感染のリスクアナリシスのためのリスクプロファイルを作成した。カキ摂食によるノロウイルス食中毒のリスクアセルメントモデルを作成した。

結論
LAMP法によるHAVの遺伝子迅速検出法を確立した。HEVは、56℃30分の熱処理では感染性は消失しない。豚は遺伝子型1のHEVに対する感受性が極めて低い。ニホンジカにおけるHEV抗体保有頻度は低く、ニホンジカがHEVの感染源となる危険性は低い。イノシシの抗体陽性率には地域間で違いがみられた。日本の一部の河川水はHEVに汚染されていることが示された。「カキの消費量×カキの汚染率×変数=ノロウイルス食中毒件数」という式を用い、国内産生食用カキの出荷時期である10月?3月に限ってシミュレーションを行うと実際の事件数とかなり近い値になった。ノロウイルス量に関係なく、発症率が一定であるというDose-Response曲線が数学的に最も符合した。

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200636012B
報告書区分
総合
研究課題名
ウイルス性食中毒の予防に関する研究
課題番号
H16-食品-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
武田 直和(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 春日 文子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所 所長)
  • 小林 慎一(愛知県衛生研究所 微生物部)
  • 恒光 裕(動物衛生研究所 ウイルス病研究チーム)
  • 有川 二郎(北海道大学大学院 医学研究科附属動物実験施設)
  • 米山 徹夫(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 李 天成(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 榮 賢司(愛知県衛生研究所 微生物部)
  • 宮村 達男(国立感染症研究所 所長)
  • 西尾 治(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 片山 和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子増幅による定量法を確立する。免疫学的手法を用いた濃縮法を導入し、食品由来ウイルスの検出効率の向上を目指す。食品や環境中のウイルス汚染実態調査を行う。感染実験モデルを構築する。リスクプロファイルを作成し、リスクアセスメントモデルを構築する。
研究方法
イノシシ、シカ、ブタ、その他野生動物の血清、便、肝臓を用いて、E型肝炎検査マニュアルにしたがって、抗体、抗原、HEV遺伝子を検出した。ノトバイオート豚でHEV感染実験を行なった。リアルタイムPCRを用いてNoVの汚染状況を調べた。NoVによる食中毒についての定量的リスクアセスメントのためのモデルを作成し、NoV集団食中毒の発生件数の推定を試みた。
結果と考察
RT-LAMP法によるA型肝炎ウイルス遺伝子迅速検出法を確立した。最近の日本における抗体保有率を調査した。A型肝炎ウイルス感染のリスクアナリシスのためのリスクプロファイルを作成した。E型肝炎ウイルスのレザーバーと考えられるシカ、イノシシについて抗体を調査した。同時に、RT-PCRによりウイルス遺伝子を確認し、塩基配列の解読、分子系統解析系で遺伝子型を同定した。豚についても同様に行なった。ブタの感染実験から発症ウイルス量を推定した。E型肝炎ウイルス感染のリスクアナリシスのためのリスクプロファイルを作成した。ノロウイルスリアルタイムPCR法用い食品の汚染実態調査を行った。高力価抗血清でイムノ磁気ビーズを作製し、食品に含まれるノロウイルスの濃縮法を検討した。ノロウイルス感染のリスクアナリシスのためのリスクプロファイルを作成した。カキ摂食によるノロウイルス食中毒のリスクアセルメントモデルを作成した。
結論
LAMP法によるHAVの遺伝子迅速検出法を確立した。HEVは、56℃30分の熱処理では感染性は消失しない。豚は遺伝子型1のHEVに対する感受性が極めて低い。ニホンジカにおけるHEV抗体保有頻度は低く、ニホンジカがHEVの感染源となる危険性は低い。日本の一部の河川水はHEVに汚染されていた。「カキの消費量×カキの汚染率×変数=ノロウイルス食中毒件数」という式を用い、国内産生食用カキの出荷時期である10月~3月に限ってシミュレーションを行うと実際の事件数とかなり近い値になった。ノロウイルス量に関係なく、発症率が一定であるというDose-Response曲線が数学的に最も符合した。

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200636012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国の健常人におけるA型肝炎ウイルス抗体保有状況を年齢別に測定し、抗体陰性率が毎年確実に増加側にシフトしていることを明らかにした。野生イノシシから初めてE型肝炎遺伝子を検出するとともに、野生イノシシからヒトへの直接伝播を証明し、リザーバーとしての野生イノシシの役割を明らかにした。23種、18遺伝子型のノロウイルスVLPを作出し、それらの高力価血清との交差血清反応から各々のVLPの抗原性を明らかにした。
臨床的観点からの成果
RT-LAMP法によるA型肝炎ウイルス遺伝子検出法を確立し、新たな迅速技術として応用を可能にした。ブタに加え野生イノシシがわが国におけるE型肝炎ウイルスの主要なリザーバーであることが明確にした。原因不明の非ABC型急性肝炎と診断された場合、ブタや野生イノシシの喫食の有無がE型肝炎診断の有力な手がかりとなりえる。食品からのノロウイルス検出にはVLPを抗原にして作成した高力価抗体を用いた免疫磁気ビーズが効果的な検出法であることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
研究班で作成したリスクプロファイルが、平成18年9月11日に開催された食品安全委員会、微生物(第18回)・ウイルス(第11回)合同専門調査会において、カキを主とする二枚貝中のノロウイルス、二枚貝中のA型肝炎ウイルス、豚肉中のE型肝炎ウイルスとして食品健康影響評価のためのリスクプロファイル中に掲載された。
その他行政的観点からの成果
本研究班での研究結果に基づき、「食肉を介するE型肝炎ウイルス感染事例について(E型肝炎Q&A)」(平成18年12月改定)、および「ノロウイルスに関するQ&A(最終改定:平成19年3月7日)」の改定において情報を提供した。
その他のインパクト
ノロウイルスGII/4がわが国における急性胃腸炎大流行の主要な遺伝子型である。ターゲットをGII/4に絞った迅速診断試薬の開発、およびワクチン開発が必須である。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsuura Y, Suzuki M, Yoshimatsu K et al.
Prevalence of antibody to hepatitis E virus among wild sika deer, Cervus nippon, in Japan.
Arch Virol  (2007)
原著論文2
Li TC, Miyamura T, Takeda N
Detection of hepatitis e virus RNA from the bivalve yamato-shijimi (corbicula japonica) in Japan.
Am J Trop Med Hyg , 76 , 170-172  (2007)
原著論文3
Hansman GS, Sano D, Ueki YTAKEDA et al.
Detection of Sapovirus in water.
Emerg Infect Dis , 13 , 133-135  (2007)
原著論文4
Hansman GS, Saito H, Shibata C et al.
An outbreak of gastroenteritis due to Sapovirus
J Clin Microbiol  (2007)
原著論文5
Hansman GS, Oka T, Okamoto R et al.
Detection of human sapovirus in clams from Japan.
Emerg Infect Dis  (2007)
原著論文6
Hansman GS, Ishida S, Yoshizumi S et al.
Recombinant sapovirus gastroenteritis, Japan.
Emerg Infect Dis  (2007)
原著論文7
Wu FT, Oka T, Katayama K et al.
Genetic diversity of noroviruses in Taiwan between November 2004 and March 2005
Arch Virol , 151 , 1319-1327  (2006)
原著論文8
Shirato-Horikoshi H, Ogawa S, Wakita T et al.
Binding activity of norovirus and sapovirus to histo-blood group antigens
Arch Virol  (2007)
原著論文9
Okada M, Tanaka T, Oseto M et al.
Genetic analysis of noroviruses associated with fatalities in healthcare facilities.
Arch Virol , 151 , 1635-1641  (2006)
原著論文10
Oka T, Yamamoto M, Katayama K et al.
Identification of the cleavage sites of sapovirus open reading frame 1 polyprotein.
J Gen Virol , 87 , 3329-3338  (2006)
原著論文11
Oka T, Katayama K, Hansman GS et al.
Detection of human sapovirus by real-time reverse transcription-polymerase chain reaction.
J Med Virol , 78 , 1347-1353  (2006)
原著論文12
Oka T, Hansman GS, Katayama K et al.
Expression of sapovirus virus-like particles in mammalian cells
Arch Virol , 151 , 339-404  (2006)
原著論文13
Li TC, Saito M, Ogura G et al.
Serologic evidence for hepatitis E virus infection in mongoose.
Am J Trop Med Hyg , 74 , 932-936  (2006)
原著論文14
Katayama K, Hansman GS, Oka T et al.
Investigation of norovirus replication in a human cell line.
Arch Virol , 151 , 1291-1308  (2006)
原著論文15
Hansman GS, Natori K, Shirato-Horikoshi H et al.
Genetic and antigenic diversity among noroviruses.
J Gen Virol , 87 , 909-919  (2006)
原著論文16
Oka T, Katayama K, Ogawa S et al.
Proteolytic processing of sapovirus ORF1 polyprotein.
J Virol , 79 , 7283-7290  (2005)
原著論文17
Maloney BJ, Takeda N, Suzaki Y et al.
Challenges in creating a vaccine to prevent hepatitis E.
Vaccine , 23 , 1870-1874  (2005)
原著論文18
Li TC, Takeda N, Miyamura T et al.
Essential elements of the capsid protein for self-assembly into empty virus-like particles of hepatitis E virus.
J Virol , 79 , 1299-3006  (2005)
原著論文19
Li TC, Chijiwa K, Sera N
Hepatitis E virus transmission from wild boar meat.
Emerg Infect Dis , 11 , 1958-1960  (2005)
原著論文20
Kamata K, Shinozaki K, Okada M et al.
Expression and antigenicity of virus-like particles of norovirus and their application for detection of noroviruses in stool samples.
J Med Virol , 76 , 129-136  (2005)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-