食品中化学物質の複合毒性に関する実験的研究

文献情報

文献番号
200636008A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中化学物質の複合毒性に関する実験的研究
課題番号
H16-食品-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 雅雄(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 松元 郷六(残留農薬研究所 毒性部)
  • 中澤 裕之(星薬科大学)
  • 川西 正祐(鈴鹿医療科学大学、保健衛生学部)
  • 中江 大(東京都健康安全研究センター)
  • 山添 康(東北大学大学院薬学研究科)
  • 白井 智之(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 原田 孝則(残留農薬研究所 毒性部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中化学物質の複合毒性の実態を総合的に明らかにし、ヒト健康への影響を評価するための資料とする。
研究方法
1.NaNO2と茶カテキンあるいはアスコルビン酸の複合遺伝毒性を検討した。2. DNA中NO2Gua並びにタンパク質中NO2Trpの分析法を構築した。3. NaNO2とアスコルビン酸(AsA)複合の、ラット逆流性食道炎モデルにおける発がんプロモーション作用及び前胃発がんイニシエーション作用を検討した。4.in vitroで銅と抗酸化物質の複合反応による酸化的DNA傷害について検討した。5.グルコン酸銅と茶カテキンの複合影響について、ラット中期肝発がん試験法を用い検討した。6. in vitroレポーターアッセイとマウス個体を用いたin vivoレポーターアッセイを組み合わせることで、ヒトCYP3A4誘導性を示す農薬を同定した。7. 酵素誘導と肝前がん病変発生の領域特異性に着目し、MeIQx, ANF, BNFの単独およびそれぞれの複合投与した際のCYP1A1/2の発現強度の領域特異性を検索した。8. 幼若あるいは若齢期にDDTを14日間反復経口投与したラットに、成熟期にリン剤を単回経口投与し、その複合曝露影響について検討した。
結果と考察
NaNO2とEGCで強い複合遺伝毒性が認められ、AsAとの複合では酸性条件下で、より強い遺伝毒性が認められた。アセトアミノフェン投与マウスの肝臓におけるNO2Trpの検出を行った結果、4-及び6-NO2Trpが検出され、in vivoにでその存在を確認した。ラット逆流性食道炎モデルでNaNO2とAsAの複合投与は食道発がんを促進した。カプサイシンはCYP1A2による代謝物が銅存在下で酸化的にDNAを損傷した。また、クロロゲン酸は、マンガン共存在下でのみDNAの8-OH-dG生成量が増加した。グルコンサン銅単独でGST-P陽性細胞巣が増加したが、カテキンの複合による増強作用はなかった。農薬のCYP3A4レポーター遺伝子の転写活性化能を測定した結果、pyributicarbによる活性の上昇は、ヒトPXRをアデノウイルスにより発現させた場合でのみ認められ、ヒトCYP3A4誘導性を示す農薬の同定に成功した。肝前がん病変ではCYP1A1/2の発現は高度に減少し、前癌病変では酵素誘導による発がん物質の活性化は、起きにくいことが明らかとなった。幼若期にDDTに曝露されたラットでは、若齢期に曝露された動物に比べ、リン剤投与の影響がより顕著に認められた。
結論
食品中化学物質同士の反応等、種々の複合作用の一端を明らかにした

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200636008B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中化学物質の複合毒性に関する実験的研究
課題番号
H16-食品-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 雅雄(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 松元 郷六(残留農薬研究所 毒性部)
  • 中澤 裕之(星薬科大学)
  • 川西 正祐(鈴鹿医療科学大学 保健衛生学部)
  • 中江 大(東京都健康安全研究センター)
  • 山添 康(東北大学大学院 薬学研究科)
  • 白井 智之(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
  • 原田 孝則(残留農薬研究所 毒性部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中化学物質の複合毒性の実態を総合的に明らかにし、ヒト健康への影響を評価するための資料とする。
研究方法
1.NaNO2と抗酸化物質の複合遺伝毒性をAmes test、コメットアッセイで検討した。2. NaNO2と抗酸化物質のラット前胃発がん促進機構を検討し、DNA中NO2Guaとタンパク質中NO2Trpの分析法を構築した。3. NaNO2と抗酸化物質の複合による発がんについて検討した。4.in vitroで銅と抗酸化物質の複合反応による酸化的DNA傷害について検討した。5.グルコン酸銅と茶カテキンの複合影響について、ラット中期発がん試験法を用い検討した。6. in vitroレポーターアッセイとマウスin vivoレポーターアッセイを組み合わせ、ヒトCYP3A4を誘導する農薬を同定した。7. MeIQxを代謝活性化するCYP1A1/2誘導剤とMeIQxの複合によるラット肝発がんの修飾ついて検討した。8. リン剤とカーバメート系あるいは塩素系農薬の短期複合神経毒性について、成熟と幼若ラットで比較検討した。
結果と考察
NaNO2とカテコール、EGCG、EGCで強い複合遺伝毒性が認められ、アスコルビン酸(AsA)との複合では酸性条件下で強い遺伝毒性を示した。アセトアミノフェン投与のマウス肝でNO2Gua 、NO2Trpが検出されin vivoにおける有用性を確認した。NaNO2と抗酸化物質の複合は活性酸素・窒素種などの酸化的ストレスを介して前胃発がんを促進し、NaNO2とAsAの複合は逆流性食道炎モデルで食道発がんを促進したが、前胃発がんイニシエーション作用はなかった。プロシアニジン 、カテキン類、カプサイシンなどが銅存在下で酸化的にDNAを損傷し、クロロゲン酸はMn共存在下でのみDNAの8-OHdG量が増加した。グルコンサン銅単独でGST-P陽性細胞巣が増加したが、カテキンの複合での増強作用はなかった。多くの農薬がCYP3A4レポーター遺伝子転写活性化能を示し、特にpyributicarbではヒトPXRを発現させた場合でのみ活性化が認められた。MeIQxを代謝活性化するCYPの誘導能や解毒酵素の誘導・阻害は、MeIQxの肝発がん修飾の指標とはならず、実際に複合実験で確認する必要がある。リン剤とカーバメート系農薬は、相加的神経毒性を示し、幼若ラットで、その傾向が強かった。また、幼若期にDDTに曝露されたラットでは、若齢期に曝露された動物に比べ、リン剤投与の影響がより顕著に認められた。
結論
食品中化学物質同士の反応等、種々の複合作用の一端を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200636008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
複合毒性は、農薬、食品添加物、医薬品、化学物質の毒性や安全性を評価する上で、常に問題になってくるが、実際の評価は困難である。本研究では、複合毒性の実態(化学物質同士の反応、代謝活性化や解毒を介した複合並びに加算・相加・相乗毒性)や、そのメカニズムの一端を明らかにし、今後複合暴露のリスクアセスメントに応用する場合の基礎的データを提供した。
臨床的観点からの成果
該当せず
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
12件
内3報は印刷中
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishii Y, Iijima M, Umemura T, et al.
Determination of nitrotyrosine and tyrosine by high-performance liquid chromatography with tandem mass spectrometry and immunohistochemical analysis in livers of mice administered acetaminophen.
J Pharm Biomed Anal. , 41 (4) , 1325-1331  (2006)
原著論文2
Ishii Y, Umemura T, Kanki K, et al.
Possible involvement of NO-mediated oxidative stress in induction of rat forestomach damage and cell proliferation by combined treatment with catechol and sodium nitrite.
Arch Biochem Biophys. , 447 (2) , 127-135  (2006)
原著論文3
Okazaki K, Ishii Y, Kitamura Y, et al.
Dose-dependent promotion of rat forestomach carcinogenesis by combined treatment with sodium nitrite and ascorbic acid after initiation with N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine: possible contribution of nitric oxide-associated oxidative DNA damage.
Cancer Sci. , 97 (3) , 175-182  (2006)
原著論文4
Kitamura Y, Umemura T, Okazaki K, et al.
Enhancing effects of simultaneous treatment with sodium nitrite on 2-amino-3-methylimidazo[4,5-f]quinoline-induced rat liver, colon and Zymbal's gland carcinogenesis after initiation with diethylnitrosamine and 1,2-dimethylhydrazine.
Int J Cancer , 118 (10) , 2399-2404  (2006)
原著論文5
Kitamura Y, Yamagishi M, Okazaki K, et al.
Lack of enhancing effects of sodium nitrite on 2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine (PhIP)-induced mammary carcinogenesis in female Sprague-Dawley rats.
Cancer Lett. , 235 (1) , 69-74  (2006)
原著論文6
Oikawa S, Nagao E, Sakano K, et al.
Mechanism of oxidative DNA damage induced by capsaicin, a principal ingredient of hot cili pepper.
Free Radic Res. , 40 (9) , 966-973  (2006)
原著論文7
Abe M, Suzuki N, Yoshida M, et al.
Preliminary evaluation of toxicologic and carcinogenic risks of copper gluconate in rats given multiple carcinogens.
J Toxicol Pathol. , 19 , 129-135  (2006)
原著論文8
Oikawa S, Ito T, Iwayama M, et al.
Radical production and DNA damage induced by carcinogenic 4-hydrazinobenzoic acid, an ingredient of mushroom Agaricus bisporus.
Free Radic Res. , 40 (1) , 31-39  (2006)
原著論文9
Kitamura Y, Umemura T, Kanki K, et al.
Increased susceptibility to hepatocarcinogenicity of Nrf2-deficient mice exposed to 2-amino-3-methylimidazo[4,5-f]quinoline.
Cancer Sci. , 98 (1) , 19-24  (2007)
原著論文10
Ishii Y, Ogara A, Okamura T, et al.
Development of quantitative analysis of 8-nitroguanine concomitant with 8-hydroxydeoxyguanosine formation by liquid chromatography with mass spectrometry and glyoxal derivatization.
J Pharm Biomed Anal.  (2007)
原著論文11
Kuroiwa Y, Ishii Y, Umemura T, et al.
Combined treatment with green tea catechins and sodium nitrate selectively promotes rat forestomach carcinogenesis after initiation with N-methly-N-nitro-N-nitrosoguanadine
Cancer Sci.  (2007)
原著論文12
Ishii Y, Ogara A, Katsumata T, et al.
Quantification of nitrated tryptophan in proteins and tissues by high-performance liquid chromatography with electrospray ionization tandem mass spectrometry.
J Pharm Biomed Anal.  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-