食品中のカビ毒の毒性および暴露評価に関する研究

文献情報

文献番号
200636005A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中のカビ毒の毒性および暴露評価に関する研究
課題番号
H16-食品-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 熊谷 進(東京大学大学院 獣医公衆衛生学)
  • 広瀬 雅雄(国立医薬品食品衛生研究所 毒性病理学)
  • 佐藤 敏彦(北里大学医学部衛生学公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カビ毒の規制への取組みは、近年国際的関心の高まりをうけ、国際機関や諸外国で毒性評価および基準値設定が行われている。特にトータルアフラトキシン(AFLs:AFB1,B2, G1, G2)およびオクラトキシンA(OTA)は、コーデックスでの議論が最終段階に入っており、来年度にも基準値が設定される予定である。また、フモニシンのヒトでの健康被害も報告されていることから、トータルフモニシン(FBs, FB1, FB2,FB3)への関心も高まっている。本研究ではこれらのかび毒を対象に、我が国における基準値設定の根拠となる科学的基礎デ-タ-を得ることを目的としている。
研究方法
1)我が国に流通している食品中のAFLs、OTA、FBsの汚染実態調査 2)ニバレノール(NIV)の90日間反復投与試験 3)AFLsの曝露評価を食品の汚染量データと各食品の摂取量データを用いてモンテカルロシミュレーションを、規制の有無について幾つかのシナリオを設定し行った。4)FBsの毒性評価に関する文献調査を行った。
結果と考察
今年度の汚染実態は AFLsは235品目を、OTAは280品目をFBsは180品目を対象に行った。AFLsは、ピーナッツバター、ピーナッツ、アーモンド、コーングリッツ、チョコレート、はと麦、香辛料から検出された。特にピーナッツ、ピーナッツバターの汚染においてはAFB1よりAFG1の汚染量が高いものがあった。OTAは、多くの食品で検出され、インスタントコーヒー、ココアでは汚染濃度が高かった。FBsは、コーンスープ、スイートコーン、ポップコーン、コーングリッツ、大豆、コーンフレークに汚染が認められた。NIVの雌雄のラットを用いた90日間反復投与試験の結果、最低影響用量(LOEL)は0.4mg/kg/dayであった。曝露評価では、年齢構成比で重み付けした日本人全体のAFB1の曝露量1ng/kg/day/を超える割合はいずれのシナリオにおいても0.2%程度となった。今回の推定では規制の有無において顕著な差異は認められなかった。今回の結果を、JECFAの方法で評価すると、日本人のアフラトキシン曝露による肝がん発生のリスクは十分小さいものと考えられる。
結論
本年度は我が国における主要かび毒の汚染実態およびトータルアフラトキシンの暴露評価およびリスク評価を行った。これらの成果は、科学的根拠としてカビ毒の基準値設定に資するものである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200636005B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中のカビ毒の毒性および暴露評価に関する研究
課題番号
H16-食品-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 熊谷 進(東京大学大学院 獣医公衆衛生学)
  • 広瀬 雅雄(国立医薬品食品衛生研究所 毒性病理学)
  • 佐藤 敏彦(北里大学医学部公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品汚染物質のうちカビの代謝産物であるカビ毒は、いろいろな健康被害がおこすことで知られており、諸外国で基準値策定が進んでいる。本研究では、国際的にも早急な対応が迫られているカビ毒(ト-タルアフラトキシン(AFs)、オクラトキシンA(OTA), トータルフモニシン(FBs)に関して、我が国での汚染実態および暴露評価を行う。なお、国内汚染が問題となっているニバレノール(NIV)の毒性評価も行う。我が国の実情を考慮した基準値策定に資する科学的根拠を得ることが目的である。
研究方法
我が国で市販されている食品を対象にカビ毒を検出感度の高い方法で測定した。NIV毒性試験は、雌雄F344ラットを用い90日間反復投与試験を実施した。わが国におけるカビ毒の暴露評価は、国民栄養調査と本研究での汚染実態調査結果を用いて、モンテカルロ法により行なった。
結果と考察
実態調査は、AFs 719検体 26品目、OTA 848検体 21品目, FBs 550検体14品目を対象とした。AFsは、ピーナッツバター、ソバおよびチョコレートから通年にわたって検出、OTA は、小麦粉、ライ麦粉、インスタントコーヒー、パスタ、スイートコーン、オートミール、ビール、ワイン、レーズン、チョコレート等から検出された。FBsは、ポップコーン、コーングリッツ、大豆から検出された。いずれもすぐに健康被害の出る値ではなかったが、OTAおよびFBsは、今後も実態調査が必要である。小麦のデオキシニバレノール,流通食品中のAFsを対象にして暴露評価を行った。小麦のデオキシニバレノールは、95パーセンタイル値では一日耐容摂取量を超える値は認められなかった。流通食品中のAFsを対象とした暴露評価においてもAFB1の発ガンリスクは、我が国では極めて低いレベルにあった。NIVの毒性試験:最低用量(0.4 mg/kg 体重/日)から雌において白血球の減少が見られたため、これを最低影響用量(NOEL)と定め,一日耐容摂取量の推定を行なった。なお、100ppmでは雌において、今まで報告されていない新規の毒性であるエストロゲン作用が認められた。主要なカビ毒の毒性評価および文献調査を行った。
結論
我が国に流通する食品中の主要なカビ毒の汚染実態調査を3年間通年で行い、その結果を基にAFsの曝露評価を行った。国内汚染が問題となっているNIVに対して毒性試験を実施し、一日耐容摂取量の推定を行なった。これらの成果はわが国におけるカビ毒のリスク評価において重要な知見となるものであり、厚生行政施策に資するものである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200636005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我が国に流通する食品中の主要カビ毒を3年間通年で調査することは今までに例がなく、専門的に価値のあるものである。純品ニバレノールの90日間毒性試験も国内国外ともに初めての知見であり、学術的観点から価値の高い成果である。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
これらの経過は近い将来、トータルアフラトキシンおよびデオキシニバレノール、ニバレノール、オクラトキシンAの基準値策定等の厚生行政施策に反映していく予定である。
その他のインパクト
国際機関等にこれらの成果を報告することによって、我が国のリスク評価の手法が高水準であることがアピールでできる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugita-Konishi, Y., Tanaka, T., Nakajima, M., Fujita, K., et al.,
The Comparison of two clean-up procedures, multifunctional column and immunoaffinity column, for HPLC determination of ochratoxin A in cereals, raisins and green coffee beans.
TALANTA , 69 , 651-655  (2006)
原著論文2
Suigta-Konishi,Y. and Kumagai, S.,
Toxicity of mycotoxins related with head blight diseases in wheat and establishment of provisional standard for tolerable level of DON in wheat.
Mycotoxins , 55 , 49-53  (2005)
原著論文3
Sugita-Konishi, Y., Park, B. J., Kobayashi-Hattori, K
., Yoshikawa, K., and Kumagai, S.,: Effect of cooking process on the deoxynivalenol content and its subsequent cytotoxicity in wheat products.
Biosci. Biotech. Biochem , 70 , 1764-1768  (2006)
原著論文4
Sugita-Konishi, Y., Nakajima, M., et al.,
Occurrence of Aflatoxins, Ochratoxin A and Fumonisins in Retailed Foods in Japan.
J. Food Protect. , 69 , 1365-1370  (2006)
原著論文5
Maragos, C. M., Busman, M., and Sugita-Konishi, Y.,
Mycotoxins Nivalenol and 4-Deoxynivalenol.
Food Additives Contamin., , 23 , 816-825  (2006)
原著論文6
Park,B.J., Takatori, K.,. Sugita-Konishi, Y., Kim, I.K., et al.,
Degradation of mycotoxins using microwave-induced argon plasma at atmospheric pressure、
Surface and Coating Technology , 201 , 5733-5737  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-