ITを活用した医療事故防止対策の効果に関する研究

文献情報

文献番号
200634112A
報告書区分
総括
研究課題名
ITを活用した医療事故防止対策の効果に関する研究
課題番号
H18-医療-一般-033
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
前原 直樹(財団法人労働科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木司(財団法人労働科学研究所)
  • 内藤堅志(財団法人労働科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ITシステム(電子カルテの機能を有し、ベッドサイドにて医師の指示、検査や服薬情報等の確認、処置の実施入力が可能なシステム)導入前後のヒューマンファクター上のエラー誘発要因の変化を分析することで、ITシステムが事故防止にいかに有効に寄与しているのかの評価を行う。今後、医療のIT化が進んだもとでの医療の安全確保・事故防止の方策及び患者の権利保障等のサービス向上に向けての基礎資料を得ることを狙いとした。今回は、ITシステム導入前の病院での看護業務を観察・分析し、ヒューマンファクター上のエラー誘発要因を具体的に把握し、ITシステム導入後のプレデータとした。
研究方法
ITシステム導入前の成人病棟においてリーダー看護師1名、メンバー看護師1名を対象に業務観察を行い、業務の遂行過程を分析すると共に各種記録情報を収集し、情報管理・伝達システムの運用実態を把握した。さらに、エラー誘発要因の背景調査として、全職員を対象にCFSI(蓄積的疲労徴候インデックス)とSCAT(安全文化評価支援ツール)の調査を実施すると共に、対象病棟の退院患者を対象に患者満足度調査も行なった。
結果と考察
対象病院では、「管理Box」と称する情報の管理・伝達システムが特徴で、処置の進行が一目でわかると共に「医師-看護師」間の情報伝達ツールの役割も果していた。また、業務観察と看護記録2号用紙、各種医療記録の照合によって、処置実施印の連続押印や加筆などの記録の実態が明らかになった。一方、CFSIでは、成人病棟、ICU、小児病棟に勤務する女性看護師の訴え率が高い結果となった。また、男性看護師は、仕事のやりにくさ等を抱いている可能性が示唆され、女性看護師は、慢性的な疲労徴候が高めであった。SCATでは、病院管理者、医師・実務管理者、実務者の間の情報伝達ルートやミーティングの場の設定を行い、コミュニケーションの機会を多く作り、お互いの行動や考え方を理解させることにより、組織としてまとまりが深まっていく可能性があることが示唆された。患者満足度は、90%以上の患者が病院職員の説明に納得し、療養生活の快適性も約60%の患者が納得をしていた。
結論
今回はITシステム導入前の成人病棟の様相を主として把握した。ITシステム導入後の平成19年度研究では、看護の質を含めた看護業務の把握を可能とする新たな観察・記録方法も開発しながら調査を実施していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-06-27
更新日
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