医療の質・安全を確保する新しい医療システムを実現するための戦略に関する研究

文献情報

文献番号
200634084A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質・安全を確保する新しい医療システムを実現するための戦略に関する研究
課題番号
H18-医療-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
上原 鳴夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 嶋森 好子(慶應義塾大学看護医療学部)
  • 永井 良三(東京大学医学部附属病院)
  • 飯塚 悦功(東京大学大学院工学系研究科)
  • 米本 昌平(東京大学先端科学技術研究センター)
  • 土屋 文人(東京医科歯科大学歯学部附属病院)
  • 児玉 安司(三宅坂総合法律事務所)
  • 小泉 俊三(佐賀大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療の質・安全の取組みについて、7つの課題領域(*)を中心に、およそ10年を展望してこれまでの到達点と問題点をレビューし、どこまで来て何が遅れているかを検討し、喫緊の研究課題を整理する。
(*)1) 質保証とプロフェッションの役割、2)医療の業務体制と業務環境、3)質・安全の観点から見た医療施設間の機能分担と連携、4)医薬品、医療機器等医療技術の安全管理指針と体制、5)医療機関の質管理システムと安全設計、6)質・安全における患者、市民、地域社会の役割と医療参加、7)質・安全にかかる法と制度。
研究方法
1. 資料・文献調査: 欧米英語圏諸国において過去4年間に制定された医療安全関連法令とプロフェッションの質保証に関する諸制度の現状を比較調査した。 
2. 専門家パネル会議とワークショップで課題ごとの検討を行った。 1,2,4,6については医療の質・安全学会ワークショップを開催し討議を深めた。 
3. 医師と看護師の労働環境に関するレビュー調査と質問票調査を実施した。
結果と考察
1.医療機関に対する規制、医療者に対する規制と質管理、労働条件に関する規制、医療に関連する死亡事故調査、医療事故に対する補償制度、患者の権利・苦情処理、事故報告制度、について、欧米諸国の現状を比較した。国ごとに強弱はあるものの、患者と医療者の両方を守るしくみと重層的および包括的なシステム構築に向けて法・制度の整備が進められている。日本はとくに、専門職の質管理、組織責任と透明性の確保、インシデント報告の免責条項、質・安全を重視したシステム改革への資源動員に関して政策と法・制度の整備が遅れている。
2.勤務医の週労働時間は60から65時間で診療所勤務よりも長く収入は低い、外科・産婦人科・小児科は他診療科より勤務時間が長く臨時呼び出し回数・当直回数が多い。 外科医169名に対する質問票調査では、過労による医療ミスを経験した医師は46%で、うち9%が死亡を含む重大な結果に至ったと回答した。
3.課題別ワークショップの討議記録集を作成し、喫緊の研究課題を整理、提言した。
結論
日本の医療安全の取り組みはこれまで事故後対応やリスクマネジメントが中心になっており、医療事故をもたらしている医療システムの抜本的改革に向けた取り組みが遅れている。 医療の質・安全確保に関する政治的コミットメントとビジョンに裏付けられた法・制度の整備が必要である。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
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