医療IT化による医療の安全性と質の改善の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200634077A
報告書区分
総括
研究課題名
医療IT化による医療の安全性と質の改善の評価に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-046
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学医学部社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 修平(全日本病院協会)
  • 柳川 達生(練馬総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在では医療の質は可視化可能で、積極的な管理、投資の対象と考えられている。IT技術は医療の質の向上に重要な役割を有する。本研究では、①IT技術の導入が、医療の質と安全についてどのような影響を及ぼすことが想定されるかについて概念を整理する、②医療へのIT技術の導入についての各国政府の対応を明らかにする、③国内外の代表的な医療分野におけるIT投資、IT技術の導入が、医療の質・安全・効率にもたらした影響について事例検討を実施する。
研究方法
文献調査および現地調査、専門家パネルによる検討を実施した。
結果と考察
①医療施設におけるIT技術導入は、患者情報の共有や医療の効率化に寄与する。医師会や関連施設間での患者情報共有の試みが行われているが、施設ごとに異なったシステムの利用、医療情報のコードの統一、電子認証の導入などが未解決の状況にある。米国ではHIPAAが、たとえ異なったシステムを用いていても、電子情報による複数の医療機関の情報共有の標準を定めることにより、情報共有が促進された。各地域で試験的に行われていた成果に基づいてRIHO(Regional Health Information Organizations:地域中心方医療情報組織)の連携システムを全国に展開することとなった。IT技術によって集積された診療情報による医療施設の質の評価が試みられており、医療の質に基づく報酬制度のメディケアへの導入(Pay for Performance:P4P)も予定されている。また、P4P導入により医療の質が向上することが報告されている。EUでは、政府主導による標準の確立、システムの統一により、情報共有が促進され、電子化のスピードが加速されている。最近では、EUでは共通したコンテンツの開発が進み、中南米各国での医療IT技術導入についても支援している。
結論
医療の質向上には、IT化と質に基づく支払方法の導入・開発は不可欠である。IT化の推進には、政府の役割が大きい。米国、EUでは政府の主導的な役割のもと関連組織も大規模なIT化計画を発表し、IT関連投資が増加した。また、韓国など一部の国では既にIT化によりデータウエアハウスの構築など、新たな社会的インフラの構築を試行し、それに対応したデータ利用のルールを整備しつつある。医療のIT化促進には政策目標としての位置づけを明確にすることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2007-08-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200634077B
報告書区分
総合
研究課題名
医療IT化による医療の安全性と質の改善の評価に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-046
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学医学部社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 修平(全日本病院協会)
  • 柳川 達生(練馬総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、①IT技術導入による医療の質と安全への影響についての概念整理、②医療へのIT技術導入についての各国政府の対応、③国内外の医療分野におけるIT投資やIT技術導入による医療の質・安全・効率への影響についての事例検討、を実施する。
研究方法
文献調査および現地調査、専門家パネルにより実施した。また、厚生統計調査による解析を行った。
結果と考察
①医療施設へのIT技術導入は、患者情報の共有や医療の効率化に寄与するが、現在、利用システムの施設差、医療情報コードの統一、電子認証の導入などが未解決の状況にある。②韓国では1996年から電子請求が導入され、2004年から支払データを政府管理の他データとリンクしての利用を可能にし、二次利用促進の試みを行っている。米国では、2004年のEHR(電子カルテ)構想の発表後、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)が医療情報の標準化を促進した。それにより異なったシステム間での情報共有が可能となり、RIHO(地域中心方医療情報組織)連携システムが全国展開された。IT技術で集積された診療情報による医療施設の質の評価が試みられており、2009年には医療の質に基づく報酬制度(P4P)のメディケアへの導入も予定されている。EUでは、標準の確立、システム統一により情報共有が政府により促進された。中南米各国への医療IT技術導入支援も行われている。日本では、2005年に5年以内のレセプトオンライン請求を原則とする政府方針が発表されたが、医療・歯科医療・薬剤で準備状況にばらつきがあり、a)オンライン請求導入のタイムスケジュール上の技術的な検討、b)電子的に蓄積されるデータの二次利用の方法、利用ルールの策定、c)データウエアハウス構築のための具体的な検討課題の明確化、が重要な検討課題である。③医療施設調査、患者調査を用いた検討では、オーダリングシステムを有する病院で主要疾患の在院日数が短く、IT化による効率化が示唆された。今後、電子カルテの導入に伴う影響を検証する必要がある。
結論
医療の質向上には、IT化と質に基づく支払方法の導入・開発は不可欠である。IT化の推進には政府の役割が大きい。米国、EUでは政府の主導的役割のもと関連組織も大規模なIT化計画を発表し、IT関連投資が増加した。既にIT化により新たな社会的インフラの構築を試行し、それに対応したデータ利用のルールを整備しつつある国もある。医療のIT化促進には政策目標としての位置づけを明確にすることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2007-08-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200634077C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、①IT技術の導入が医療の質と安全に及ぼすと想定される影響の概念整理、②医療へのIT技術導入に関する各国政府の対応の整理、③国内外の代表的な医療分野におけるIT投資、IT技術の導入が、医療の質・安全・効率にもたらした影響の事例検討、を実施した。先進各国の国家戦略における医療ITの位置づけ、規格標準化の状況、レセプトオンライン化などITの利用状況、データウエアハウスの構築の状況など、国家的な取り組みが定性的に明らかにされた。また、医療IT化による医療の質の評価の実施可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
米国ではIT技術によって集積された臨床情報による医療施設の質の評価が検討されており、それに伴った報酬制度の導入(Pay for Performance)によって、医療の質と安全が向上することが示唆された。また日本においては、医療IT化がいまだ不十分な平成14年データを用いた解析結果から、主要疾患について、病床規模が大きな(したがって複雑な組織体制の)病院では、オーダリングシステムの導入により、在院日数の短縮がもたらされることが明らかにされた。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
日本でも医療制度改革において医療分野におけるIT技術の導入が大きな政策目標となっており、具体的な検討組織としてIT戦略本部が設置されている。医療分野におけるITの導入は、単により高い要求水準への対応、効率化に留まるものではなく、電子化された情報の二次利用による、より高次のレベルでの疾病管理、医療サービス内容と消費者との間のマッチング、病院・支払者・その他組織のマネジメント構築に寄与する可能性がある。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-