電子カルテシステム導入が診療記録の質に与えた影響と、その結果としての医療の質の改善の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200634069A
報告書区分
総括
研究課題名
電子カルテシステム導入が診療記録の質に与えた影響と、その結果としての医療の質の改善の評価に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-038
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
阿曽沼 元博(国際医療福祉大学国際医療福祉総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 梅里 良正(日本大学 医学部)
  • 中村 清吾(聖路加国際病院 ブレストセンター)
  • 小出 大介(東京大学大学院 医学系研究科クリニカルバイオインフォマティックスユニット)
  • 内藤 恵子((医)高邦会 高木病院 予防医学センター)
  • 鳥羽 克子(国際医療福祉大学 医療経営管理学科)
  • 開原 成允(国際医療福祉大学 副学長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
紙ベースの診療録と、電子カルテベースの診療録を比較し、情報の質や量及び記載内容の質的変化を明らかにし、その変化が医療の質的向上や医療安全の向上にどの様に影響したかを併せて明らかにするものである。また、電子カルテシステム導入の効果・影響の評価手法開発を行う。

研究方法
診療録CI調査を更に2病院で行った。また第1年度実施したアンケートデータを基に、機能等に関する詳細な分析を行った。更に調査アンケート項目を基に、主成分分析(PCA)を用いて、影響や効果を与える要素(測定値)を「システムの質」「情報の質」「エンドユーザへのサービス質」「利活用状況」「ユーザ満足度」5つとして分析を試み、導入効果測定の手法開発を試みる。また「医療安全の質」に関しても同様に主成分分析(PCA)を用いて、上記分析との関係性も確認する。具体的には、①収集した診療録の量的チェックデータの分析、②診療録(CI)調査を通した医療の質評価、③利活用状況調査及びアンケート項目をベースとした複合指標算出プロセス検討及び数値化、評価である。
結果と考察
現在稼動中の電子カルテシステムはデータ収集の基本部分においてはほぼ十分な機能を具備しているが、医療安全確保への対応は不十分で、データの後利活用に関しても、統計処理・研究・教育で軒並み機能装備率が低く、この分野の機能強化が望まれる。「電子カルテシステムの有効性」の評価指標を開発し、その指標の有用性を示す点に関しては、提示した複合指(CompositeIndex) は、電子カルテシステムの有効性を評価する上で活用可能との結果を得た。またJAHISの電子カルテシステムの段階的レベルとの相関や、「ユーザ視点による電子カルテシステム機能」調査との強い相関も確認できた。
結論
JAHISの情報化レベルが高ければ高いほど電子カルテシステムの有効性が高まることは複合指標の開発による算出により明らかとなった。しかし、現地での診療録調査においては、システム化が不十分であるとかえって質低下を招く危険性を認識した。また医療安全管理上の寄与の面ではまだ不十分であることも明確となった。また、有用性のある評価の為の複合指標と評価手法の提示が行えたと考えている。これら研究の成果が多くの病院で適応され、病院のシステム化レベルの自己評価や他病院とのベンチマーク手法として発展することを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2007-08-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200634069B
報告書区分
総合
研究課題名
電子カルテシステム導入が診療記録の質に与えた影響と、その結果としての医療の質の改善の評価に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-038
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
阿曽沼 元博(国際医療福祉大学国際医療福祉総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 梅里 良正(日本大学 医学部)
  • 中村 清吾(聖路加国際病院 ブレストセンター)
  • 小出 大介(東京大学大学院 医学系研究科クリニカルバイオインフォマティックスユニット)
  • 内藤 恵子((医)高邦会 高木病院 予防医学センター)
  • 鳥羽 克子(国際医療福祉大学 医療経営管理学科)
  • 開原 成允(国際医療福祉大学 副学長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は電子カルテシステムの導入によって、診療記録の質がどう変化し、その結果として医療の質向上にどのように寄与したかを明らかにするものである。それと併せて、有効性を評価する指標や評価手法のモデル提示を行うものである。
研究方法
電子カルテシステム導入病院の協力の下、アンケート調査と調査員派遣による現地(診療録)調査を行いデータを収集した。アンケート調査では、有効性の評価に資するデータ収集に資するために、設問そのものに工夫を凝らし「診療部長(CMO)」「医師(Dr)」「看護部長(CNO)」「看護師(Nr)」「システム部門責任者(CIO)」各々に設問を用意し、サンプル数とし常勤者の10%以上の回答を得る努力をした。また設問を「システムの機能」「情報の質」「エンドユーザへのサービスの質」「利活用状況」「利用者満足度」の5つの要素に同定し、各項目を因子分析し複合指標値(Composite Index)を導き出すプロセス(統計手法等)を検討し、指標値の高さが電子化レベル(JAHISの5段階レベル)の高さと相関をするかどうかを確認した。分析対象は20病院とした
結果と考察
診療録の量的チェックにおいて、全ての項目で明らかに電子化された診療録が紙ベースのそれを上回っていることが確認できた。「質的(CI)チェック」では、複合指標値の高位2病院での調査では、明らかに電子化された診療録が多くの点(CIの検証、確認時間や探索の簡便性等)で優位性を発揮した。しかし、一部紙ベースの診療録を併用している病院においては、かえって煩雑性が増し、むしろ紙ベースの診療録のほうに優位性が見られた。アンケートの分析では、医療安全確保支援機能が多くの場合不十分であることも確認できた。複合指標の算出プロセス開発やその検証で、手法としての有用性が確認できた。
結論
現状の電子カルテシステムは、病院運営効率化に力点を置き、データ入力も診療会計や運営中心の項目選択であり、診療録の質を担保したり向上させるための項目は考慮されていない。またクリニカルインディケータに関してはほとんど考慮されていないと言ってよい。アンケート項目ベースに因子分析等を行い算出し、研究家庭で有用性を検証した複合指標値のモデルは、電子カルテシステム導入病院の有効性自己評価や、病院間ベンチマークの手法として大いに活用可能と考えられる。今後、調査に参加協力して頂いた病院を始め、希望する病院への手法開示を通じて、広く活用を促したい。それにより、手法の整備・改善をはかり、より普遍的な手法へと昇華させたい。

公開日・更新日

公開日
2007-08-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200634069C