看護基礎教育における看護技術の充実に関する研究

文献情報

文献番号
200634068A
報告書区分
総括
研究課題名
看護基礎教育における看護技術の充実に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-037
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小山 眞理子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科)
研究分担者(所属機関)
  • 水戸 優子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科)
  • 間瀬 由記(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科)
  • 及川 郁子(聖路加看護大学看護学部)
  • 鶴田 惠子(日本赤十字看護大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
看護基礎教育卒業時の看護技術の到達目標を達成させるための効果的な教育方法を開発することを目的とした。実践能力を育成する看護技術教育方法として、シナリオと模擬患者を用いた学習モデルを作成し、モデルの有効性を検証した。
研究方法
1.看護技術習得に焦点をあてた看護基礎教育のカリキュラム軸を作成し、軸に沿って看護技術を積み重ねていくための枠組みを作成した。
2.複数の看護技術を組み合わせて、知識と技術を統合させるための看護技術学習モデルを作成した。そのモデルの一部を1単元とし技術教育モデルを作成し、授業を実施し、効果を評価した。
1)学習モデルの特徴;①シナリオを用いて患者の状況を判断し知識と技術を統合して援助を実施・評価する、②模擬患者を対象として臨場感を出す、③学生が主体的に学習する。
2)方法;『右片麻痺患者の車椅子移乗動作の獲得にむけた移乗・移動介助』について①シナリオ提示②患者の状況をイメージ化するミニレクチャー③個人で援助計画を立案④グループで援助計画を立案・練習⑤グループ間で発表後、具体的な援助計画を立案し練習⑥模擬患者を対照とした学生個人の技術評価、を実施した。対象は2大学計22名の2年次の看護大学生。
3)評価;独自の質問紙用いて5段階評定で回答を得た。
4)分析方法;記述統計量を算出し、自由記述は内容分析の手法を用いた。
5)倫理的配慮;研究者所属教育機関の研究倫理審査委員会を経て実施した。
結果と考察
1.知識と技術の統合;「事例からの学習は役立つ」4.50点「既習の知識・技術を活用できた」4.45点と、シナリオを用いる有効性が示された。しかし全介助の援助技術を習ってきた学生にとって、シナリオから患者の自立度をイメージするには限界があった。
2.臨場感;「臨場感があった」4.68点「模擬患者は学習に役立つ」4.82点で、自由記述でも「模擬患者は緊張した」とする一方で「実際の患者を想定して援助を実施できる」「技術以外の会話や動作に気づくことができる」と述べ、模擬患者を対象にして援助をする経験は臨場感を高めていた。
3.主体的学習;「グループで協力できた」4.68点「興味深かった」4.59点「達成感があった」と主体的に取り組んだことで満足感が高まっていた。
結論
シナリオと模擬患者を用いた技術教育は、臨場感を持ちながら知識と技術を統合する教育方法として有効である。模擬患者の育成が今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200634068B
報告書区分
総合
研究課題名
看護基礎教育における看護技術の充実に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-037
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小山 眞理子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科)
研究分担者(所属機関)
  • 水戸 優子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科)
  • 間瀬 由記(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科)
  • 及川 郁子(聖路加看護大学看護学部)
  • 鶴田 惠子(日本赤十字看護大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
看護基礎教育卒業時の看護技術の到達目標についてはコンセンサスが得られていない。本研究では、すべての学生が習得する必要がある看護技術の種類と卒業時の到達目標を明らかにし、看護基礎教育と卒業後のギャップを埋めるための方略を探求する。さらに卒業時の到達目標を達成させるための効果的な教育方法を開発する。
研究方法
2年計画で実施し、平成17年度は看護基礎教育で必要とされる看護技術と到達度を、デルファイ調査および病院調査から明らかにした。さらに調査で明らかにされた技術が実習で実施可能かについて、学生対象に調査を行い、前者3種の調査結果を看護教育と実践の有識者により妥当性の検討を行ない、最終的な看護技術の種類と到達レベルを明らかにした。
平成18年度は、17年度の研究成果で明らかにされた看護技術について、技術習得の効果的な教授学習方法を吟味しモデルを作成した。そのモデルをもとに教材を作成し、模擬患者を用いて学生への演習を行ない、その結果を教育効果を面接法および観察法で明らかにした。
結果と考察
平成17年度;有識者による会議で総合的に調査結果の妥当性を検討した結果、142の技術の到達目標が明らかにされた。到達目標は、Ⅰ単独で実施できる、Ⅱ指導のもとで実施できる、Ⅲ学内演習で実施できる、Ⅳ知識がある、4レベルで示された。平成18年度;平成17年度に明確煮された看護技術の到達目標を達成させるための教育方法を検討し、より臨場感を持ちながら知識と技術を統合する教育モデルを開発した。教育モデルを活用し、模擬患者を用いて学生に演習を行った。結果、本教育モデルを用いての技術教育は、臨場感があり、学びが大きく、学生の満足度も大きいことが明らかになった。しかし、具体的な知識がない段階における主体的な学習は多少の負担があることや、学生の主体性と能力を育む教育には時間を要することが課題である。
結論
すべての看護学生が卒業時に習得する看護技術の種類と到達目標について、教育と臨床の合意を得たことは、卒業生の看護技術の到達度を最低限保証することに貢献できる一方、新人看護師の教育プログラム作成の指針となり、新人看護師が教育から実践の場への移行をより円滑にすることに貢献する。また、看護技術の教育モデルは、複数の技術を臨場感をもちながら学習することで学生は、知識、技術および態度を統合させながら技術習得ができる方法である。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200634068C

成果

専門的・学術的観点からの成果
看護基礎教育卒業時にすべての学生が習得すべき看護技術の種類と到達目標について、専門家によるデルファイ調査、卒業直前の学生調査、病院調査、等の3種の調査結果に基づき、看護教育と看護実践の有識者により妥当性を検証しながら明らかにした。デルファイ調査で3段階のステップを経て得られた結果だけでなく、今日の学生の技術の習得度、病院での技術の実施可能性等のデータに基づき、教育と臨床の両側面から妥当性を検討し、各々の技術の到達度を明確にしたことは信頼性のある研究成果として看護学の発展に寄与できる。
臨床的観点からの成果
教育と臨床の両者に卒業時の看護技術の到達度についてはコンセンサスを得られていない。そのために、長い間の課題であった新人看護師の問題、特に卒学後のギャップを軽減することに貢献できる。結果として、新人看護師のストレスを減少させること、新人看護師が教育から実践の場にスムーズに移行することに貢献する一方、教員や学生にとっては技術教育の目標が明確になるために、学習計画に活用できる。また、新卒看護師の卒後教育の技術教育内容を明確にすることができる。
ガイドライン等の開発
厚生労働省「看護基礎教育の充実に関する検討会」第4回検討会(H18年7月21日)において本研究の成果を報告した。同検討会のワーキンググループでも「看護技術の到達目標」を看護基礎教育卒業時の到達目標として使えるかが吟味され、利用することが合意された。(平成18年12月28日)
その他行政的観点からの成果
平成19年4月16日の「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書(厚生労働省看護課)」の資料3「看護師教育の技術項目と卒業時の到達度(案)」として掲載された。
その他のインパクト
「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書」は看護基礎教育のカリキュラムの改正について具体的に明文化されている。そこに用いられている「看護師教育の技術項目と卒業時の到達度(案)」は、日本全国の看護基礎教育機関で活用されることになり、結果として日本全国の看護基礎教育の技術教育の改善に貢献できる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
2006年8月日本看護学教育学会、および2006年12月日本看護科学学会にて、計6題の演題を発表した。内訳は、学生調査の結果、病院調査の結果、および看護技術の到達目標についての報告であった。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-