地域住民の口腔保健と全身的な健康状態の関係についての総合研究

文献情報

文献番号
200634017A
報告書区分
総括
研究課題名
地域住民の口腔保健と全身的な健康状態の関係についての総合研究
課題番号
H16-医療-一般-020
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小林 修平(人間総合科学大学 人間科学部健康栄養学科)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 修二(共立女子大学)
  • 才藤 栄一(藤田保健衛生大学)
  • 花田 信弘(国立保健医療科学院)
  • 宮崎 秀夫(新潟大学大学院)
  • 植松 宏(東京医科歯科大学大学院)
  • 今井 奨(国立保健医療科学院)
  • 泉福 英信(国立感染症研究所)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域住民の口腔保健に起因する各種の疾患や病態を検証し、口腔保健が全身の健康状態に影響を及ぼしている状況を科学的に評価する。
研究方法
口腔と全身の健康の関連を総合的に明らかにするため合計7課題の研究班を組織した。
結果と考察
「高齢者の追跡調査」では①歩数が多い者は,下肢筋力や日常生活動作遂行能力に優れていた。②咬合力は,加齢に伴う体力の低下よりも,咬合力を支える歯牙の有無のほうに大きな影響を受けていた。③唾液流量や口腔内乾燥感は精神健康度と関連していた。④パノラマエックス線を用いた「下顎下縁皮質骨形態分類」は,骨代謝マーカーと関連が認められた。⑤血清アルブミン値と根面う蝕との関連が示された。⑥血清カルシウムレベルと歯周病との関連が明らかになった⑦う蝕および歯周状態と精神健康状態との関連が示された。
「歯科治療による高齢障害者のQOLの改善」では暫定版尺度を作成した。
「歯周病と糖尿病-介入試験」では、歯周病治療による血糖コントロールへの影響を検討した。歯周病治療(歯科介入)群では、HbA1c及び高感度CRPが治療直後に低下し、その後の観察時には上昇する傾向を示した。また、糖尿病治療(内科介入)群では、HbA1cが有意に改善し、歯科的にはBOPの割合の有意な減少が認められた。
「口腔微生物と全身の健康についての研究」では、免疫力の指標として、活性化ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を特異抗体(抗CD69, CD16, CD56抗体)によるフローサイトメトリーにて解析した。その結果、高齢者の体力が免疫力に関与することが明らかとなった。
「歯科医師における歯と全身の健康、栄養との関連に関する縦断研究」では、歯科医師を対象としたコホート研究を実施している。今回の分析対象は21,075 名(平均年齢±標準偏差 52.3±12.3 歳、女性8.0%)である。歯牙喪失と死亡リスクとの関連の解析では、喪失歯数が5本以上の群で5本未満群よりも有意に高い、約1.6-1.8 の死亡率比が認められ、交絡要因の調整による死亡率比の変化は小さかった。
「唾液・口臭と全身の関係」では、口臭の原因物質の一つとされるVSC(揮発性硫化物)測定の有用性を検証することを目的に、37名を対象として唾液由来VSCを測定した。唾液VSC産生能を評価することは、歯周疾患リスク判定への活用の可能性、歯周疾患スクリーニングの一助として利用できる可能性が示唆された。
「摂食嚥下と咽頭清掃効果の検討」では、できるだけ省力化した口腔ケアの方法を考案した。
結論
口腔保健と全身的な健康状態の関係が具体的に明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200634017B
報告書区分
総合
研究課題名
地域住民の口腔保健と全身的な健康状態の関係についての総合研究
課題番号
H16-医療-一般-020
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小林 修平(人間総合科学大学 人間科学部健康栄養学科)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 修二(共立女子大学)
  • 才藤 栄一(藤田保健衛生大学)
  • 花田 信弘(国立保健医療科学院)
  • 宮崎 秀夫(新潟大学大学院)
  • 植松 宏(東京医科歯科大学大学院)
  • 今井 奨(国立保健医療科学院)
  • 泉福 英信(国立感染症研究所)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域住民の口腔保健に起因する各種の疾患や病態を検証し、口腔保健が全身の健康状態に影響を及ぼしている状況を科学的に評価する。
研究方法
平成16―18年度にかけて合計10課題の研究班を組織した。
結果と考察
「高齢者の追跡調査」では新潟市に在住する70歳,600名に対する調査から,横断および縦断分析を行った。その結果,口腔健康状態と全身健康状態として栄養,運動機能,体格,唾液の性状,精神健康状態,日常活動動作との間に有意な関連が認められた。
「高齢者の咀嚼能力に関する研究」臼歯部の支持が少ない場合ほど、義歯の装着により咀嚼回数は大きく減少し、食塊形成能力が改善することが示された。
「歯科治療による高齢障害者のQOLの改善」では、暫定版尺度を作成した。
「歯周病と糖尿病-介入試験」では、歯周病治療(歯科介入)群で、HbA1c及び高感度CRPが治療直後に低下し、その後の観察時には上昇する傾向を示した。また、糖尿病治療(内科介入)群で、HbA1cが有意に改善し、歯科的にはBOPの割合の有意な減少が認められた。
「口腔微生物と全身の健康についての研究」では、男性の脚伸展力および握力とNK細胞活性との間で有意に相関性が認められた。
「歯科医師における歯と全身の健康、栄養との関連に関する縦断研究」では、喪失歯数群別の推定栄養素摂取量平均値は、喪失歯数が多い群ほど、炭水化物を除く栄養素で少なかった。歯牙喪失と死亡リスクとの関連の解析では、喪失歯数が5 本以上の群で5 本未満群よりも有意に高い、約1.6-1.8 の死亡率比が認められ、交絡要因の調整による死亡率比の変化は小さかった。
「唾液・口臭と全身の関係」では、唾液VSC産生能の評価が歯周疾患リスク判定への活用の可能性、歯周疾患スクリーニングの一助として利用できることを示した。
「咀嚼と肥満の関連性に関する研究」では、ローレル指数が高い児童は、朝食、おやつ、夜食の摂取(いつ食べるか)よりも、早食い、よく噛む、一口の量などの「食べ方」との関連性が認められた。
「高齢者とにおい」では、電子嗅覚装置によって高齢者の口気のにおいと、におい発生源と考えられる唾液、舌苔、義歯のにおいを比較したところ、口気と唾液、口気と舌苔、口気と義歯のにおいの間には有意差が見られた。
「摂食嚥下と咽頭清掃効果の検討」では、できるだけ省力化した口腔ケアの方法を考案した。
結論
口腔と全身の健康には多くの関連があることが具体的に明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200634017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
口腔保健が健康づくりに欠かせないことを通常科学の手法で明らかにした。とりわけ高齢者の歯と栄養の密接な関係について科学的な解明を行い、口腔が「栄養器」としての役割を果たしていることを証明したことは今後の歯科学および栄養学の発展に大きな影響を及ぼすと考えられる。
臨床的観点からの成果
口腔が「栄養器」としての役割を果たしていることを証明し、高齢者の歯科治療によって栄養摂取が改善される道筋を開いた。
ガイドライン等の開発
唾液検査の基準値を設定し、歯周疾患のガイドライン作成に貢献した。
その他行政的観点からの成果
内閣官房・新健康フロンティア戦略賢人会議働き盛りと高齢者の健康安心分科会において花田信弘委員提出資料として本研究成果のデータが用いられた。
その他のインパクト
平成19年1月13日東京都千代田区一ツ橋「共立講堂」において本厚生労働科学研究の研究成果に関する公開シンポジウムを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
WHO:Report of a meeting convened at the WHO Centre for Health Development in Kobe,2005
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
内閣官房・新健康フロンティア戦略賢人会議・働き盛りと高齢者の健康安心分科会において花田信弘委員提出資料として討議に使用した。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
公開シンポジウム開催(2007年1月13日)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
H. Ogawa, A. Yoshihara, T. Hirotomi, et al.
Association between Serum Albumin and Periodontal Disease in Community-dwelling Elderly.
Journal of Clinical Periodontology. , 33 (5) , 312-316  (2006)
原著論文2
T. Hirotomi, A. Yoshihara, H. Ogawa, K. Ito, A. Igarashi, et al.
A preliminary study on the relationship between stimulated saliva and periodontal conditions in community-dwelling elderly people.
Journal of Dentistry. , 34 (9) , 692-698  (2006)
原著論文3
白根和明,小川祐司,廣冨敏伸ほか
高齢者集団におけるCPIとアタッチメントロス評価法(WHO)の有用性および歯周健康状態に関する5年間の縦断研究,
口腔衛生会誌 , 57 , 28-35  (2007)
原著論文4
A. Igarashi, N. Kato, M. Watanabe, et al.
An investigation of drug-intake and serum zinc level in 414 elderly people aged 75 years.
Japanese Journal of Gerodontology. , 21 (1) , 35-40  (2007)
原著論文5
藤井 航, 永田千里, 三串伸哉ほか
回復期リハビリテーション病棟を中心とした歯科診療の検討
障害者歯科 , 27 (2) , 182-186  (2006)
原著論文6
Naito M, Yuasa H, Nomura Y, et al.
Oral health status and health-related quality of life: A systematic review
J Oral Sci , 48 , 1-7  (2006)
原著論文7
Kamoda T, Imai T, Sato T, Imai S, et al.
Effect of disaccharide xylosylfructoside on sucrose cariogenicity in an artificial mouth system
J Dental Health , 56 , 281-288  (2006)
原著論文8
Y. Saotome, A. Tada, N. Hanada, et al.
Relationship of cariogenic bacteria levels with periodontal status and root surface caries in elderly Japanese.
Gerodontology , 23 (4) , 219-225  (2006)
原著論文9
Senpuku H, Tada A, Uehara S, et al.
Post-operative infection by pathogenic micro-organisms in the oral cavity of patients with prostatic carcinoma
J Int Med Res , 34 , 95-102  (2006)
原著論文10
Salam MA, Tada A, Yonezawa H, et al.
Human T-cell responses to oral streptococci in human PBMC-NOD/SCID mice.
Oral Microbiol Immunol , 21 , 169-176  (2006)

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-